第158話 金ヶ崎は起こさせない
祝宴も終え、諸国の使者たちも帰路につく中、俺は信長と話していた。
「ヒロユキ、お主に相談があるんだが。」
「何でしょう?」
「朝倉についてどう思う?」
信長は比較的近くでありながら、馬揃えに使者すら出さなかった朝倉家についてよく思っていなかった。
「それは朝倉を滅ぼすという話でしょうか?」
「そうとも言うのぅ。」
「それなら長政殿にも相談なされるべきかと、浅井は長年朝倉と同盟をしてきました、信長殿が争えば板挟みになり、どちらにつくかわからぬ物があります。」
俺は信長の話に史実であった金ヶ崎の退き口を思い出していた。
史実では朝倉を攻めた信長の後ろから浅井が裏切り、九死に一生を得るピンチを迎えていたはずだ、この世界ではだいぶ情勢が違うとはいえ、浅井と朝倉の同盟は存在しているために裏切る可能性も有り得た。
「だがの、長政の気持ちを考えれば知らぬ方が良いこともあろう。」
信長は自分を慕う長政を少なからず気にかけており、同盟の板挟みに合う長政を気にしていたのだ。
「だからこそ、相談すべきかと、自分の知らぬ所で話が進めば気に入らないと思われます。
ここは長政殿に相談して朝倉に降伏を促すのはいかがでしょうか?」
「朝倉が降るとは思えんが。」
「ええ、ですが長政殿の顔を立てる事になると思います、さすれば同じ滅ぼすにして長政殿の心証を損なう事なく話が進めれるかと。」
「うむ、ヒロユキがそこまで言うなら長政に話してみよう。」
信長は俺の言葉を聞き入れ、長政を呼び、朝倉攻めについて話す。
「信長殿、この長政今一度朝倉義景殿を説得したいと思います、今少し時間をくださいませ。」
「良かろう、だが降らぬ時は攻める事も心得て置いてくれ。」
「はっ、天下安寧の為にその時は私も信長殿と共に軍を起こしましょう。」
「うむ、よくぞ言ってくれた、苦渋の選択であろうがこの信長感謝するぞ。」
信長は長政の手を取り感謝を伝えると長政は涙を流して喜んでいた。
浅井長政はすぐさま使者を朝倉に送るがその答えは否だった。
名門と自負する朝倉からすれば織田家など成り上がりにすぎない。
それに降る事は有り得ない、逆に長政に協力して織田家打倒を申し出て来るぐらいだった。
「義景殿は時流が見えていないのか、信長殿の下で纏まるのが天下泰平への近道と何故わからんのだ。」
長政は憤慨すれど答えが変わるはずがない。
こうして、織田と浅井は連合軍を起こして朝倉に攻め込む事になるのだった。
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