第146話 馬揃えのために
帰国した俺に上杉景虎から直江景綱が使者としてやって来る。
「景綱殿、遠路ご苦労様です。本日はなにようで参られたのですか?」
「ヒロユキ様は織田殿が馬揃えを行うことを聞き及んでおりますか?」
「ええ、聞いてます。全国の大名にも書状を出していると。」
「はい、その事なのですが、我が主、景虎様は上洛を決意なされた。
その際にヒロユキ様の領地を通らせてもらいたいと願っております。」
「かまいませんよ、何なら一緒に上洛いたしますか?」
「こちらとしては願ってもいない事ですが、よろしいのですか?」
「こちらとしては構いません。それに一緒に行動するほうが互いに安心出来るでしょ。」
「かたじけない。」
俺は合意する。
景綱は丁寧に感謝して報告の為に帰っていった。
上杉景虎、戦国時代の雄だ。
そんな方と一緒に旅が出来るなんて・・・
俺は少し浮かれていた。
「上杉が領内を通過するですと!」
「うん、今度の馬揃えの見学をするみたい。」
「それで、一緒に行くと・・・」
「そうだよ。」
「殿はバカですか!上杉といえば長年の敵では無いですか、それに領内を見せるとは・・・」
俺は馬場信春に怒られていた。
「いや、今は同盟相手・・・です、一応?」
「今は同盟相手ですが、いつどうなるかわかったものじゃないのに、領内を見せて侵攻経路を見つけられたらどうするのですか!」
「信春の言うこともわかる、でも、見られた所で何とかするし、それに防備を見られたぐらいでどうとかされることはない。
あと、この国とは戦いたくないと言うところを見せつければいい。」
「しかし・・・」
信玄の時代から戦ってきた武田旧臣には上杉を迎えるのに抵抗があるようだが。
「いいか、これは形を変えた戦である。
俺達が上杉を遥かにまさると見せつけ、今後の戦を無くすのだ。
まさか、上杉より劣るなどそんな筈はないよな?」
「当たり前です!我らの精強さは上杉より遥かに上にあります!」
「ならば、見せつけてやれ。
いいか、街道をあらためて整備、宿を整えよ。
時間は無いぞ。
各自、己の矜恃を見せつけるのだ。」
上杉の移動経路に当たる者達はもとより国をあげての準備に取り掛かる。
住民も含めても総動員で上杉を迎える準備に精を出すのだった。
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