第145話 天下に挑む
摂津を落とした信長は堺に圧力をかけ、降伏を促す。
商人の自治都市とはいえ、大軍を率いてきた信長の前では独立を維持出来ず、大量の金銭と共に降伏する。
これにより、日本一の貿易都市を手にした事により信長が力を増して行くのは明白だった。
「ヒロユキ、比叡山の対応と京の守り、ご苦労であった。」
摂津を手中に収めた信長とあったのは戦後一ヶ月もたってからだった。
「信長殿、お疲れさまです。」
「こたびの援軍、何が欲しい?」
信長は率直に聞いてくる。
「そうですね、出来れば食料の提供を願いたい。」
「余裕がないのか?」
「正直一気に国が広がりすぎて、米の生産が追いついていませんね、金銭で購入しても良いのですが、折角貰える機会が出来たのですから、分けてもらおうかと。」
「正直でよいのぅ、わかった、活躍に似合った分だけ送ってやろう。」
「ありがとうございます。」
「いや、ワシの方こそ助かった。比叡山が片付いたとなると今後どれだけ助かるかわからん。」
「信長殿ならいずれは片付けたと思いますが。」
「時間をかければのぅ、それに家中に亀裂を入れかねん、ヒロユキは大丈夫なのか?」
「事前に説明はしております、ただ、この後は領地を確認しないと何とも言えませんね。」
「うむ、人の心は難しいからのぅ。」
その後、別室に入り、色々と戦略を話し合う。
その中で、信長は馬揃えを京で開催する事を決める。
諸国の大名に声をかけ、織田家の力を見せるつもりだった。
「ヒロユキも参加せぬか?」
「見学ですか?」
「違う、共に馬を並べるのだ。」
「面白そうですね。ただ、一度家臣達と話し合って参加者を決めねばなりませぬな。」
「うむ、ワシは全国の大名に書状を送ろう。」
信長は自らの武威を天下に示し、それを持って降る者が出れば良いと考えていた。
「信長殿が馬揃えか・・・」
書状を受けた上杉景虎は思案する。
趨勢は織田に傾きつつある、唯一抵抗できそうな土御門は織田との協調路線を歩むようだった。
「我も上洛して、織田の馬揃えを見学しようぞ。」
景虎は上洛を決意する。
もとより天下を望む気はない、それならば天下に挑む信長を見物するのも悪くなかろう。
「ヒロユキに使者をだせ、物のついでだ、土御門領を通って行きたい。
通行の許可を貰ってこい。」
「景虎様、それはあまりにも危険では?我らは長年武田とやり合っているのですぞ。」
直江景綱は反対する。
「大丈夫だ、ヒロユキさえ許可を出せば問題は無くなる。」
景綱の反対を押し切り、使者を出すのであった。
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