第141話 家臣の気持ち

出兵前、俺は家臣達を集めて話し合う。

「みんな今回の敵はたぶん本願寺、もしくは比叡山になる、宗教と戦になる。

そこでみんなの気持ちを聞いておきたい。」

「本願寺と比叡山ですか・・・出来れば戦いたくありませんな。」

馬場信春は言いにくそうに言ってくれる。

それは家臣の多くが思っている事だった。

この時代、信仰心が高い者が多い、特に生死が関わる武士は神仏の加護を大事に考える、好んで争う者はいない。

その為、寺社が増長する所もある。


「みんなの気持ちは解るつもりだ、そこで俺は帝の勅書を賜わろうと思っている。

本願寺、比叡山がこれに従えばよし、逆らえば逆賊として討つ。

どうだろう?これでも戦えないかな?」

俺はもう一度みんなを見る。


「帝の勅書に従えぬなら討つのもやもなしかと。」

渡辺守綱は討伐に賛同する。

「そうですな、王城鎮護の寺が帝に逆らうのは本末転倒ですな。」

高坂昌信も賛同の意を示す。

二人の言葉は多くの家臣の気持ちであった。


「みんなが苦渋の決断を下してくれたのはわかる。

出来る事なら戦にならねばいいと思ってはいるが向こうの出方次第、戦えないと思う者は今回の出兵は控えてくれて構わない。」

「殿、もし皆が戦えないと言えばどうなさるのですか?」

真田幸隆が思った疑問を投げかけてきた。


「みんなが戦えないなら、俺だけでも向かうよ。修験者のみんなは力を貸してくれるだろうし、その時はみんなには悪いけど領地の引き締めをお願いするよ。」

「お前だけって事はない、俺は間違いなくお前についていくからな。」

マサムネは当然の如く参加を表明する。

「マサムネには残って欲しいけど、みんなが来ない時は頼むよ。」

「私も行きます!師匠だけ良い格好はさせません!」

前原景久も当たり前のようにいう。

「すみませぬな、少々たちの悪い冗談を言ってしまったようにございます。

勿論、私も殿と共に戦えます。」

真田幸隆は頭を下げ、参戦を表明する。

それを皮切りに皆が参加を表明し、何故か流れで血判状を作る事になる。

「いや、そこまでしなくても・・・」

「殿、何を申されますか、皆の気持ちが一つである事の印でございます。どうかお納めを。」

俺は血判状を胸に懐き、京へ旅立つのだった。

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