第140話 比叡山延暦寺

比叡山延暦寺が動き出す。

その報告に森可成は手勢を率いて比叡山の麓、坂本の地を先に押さえ、進軍の邪魔をする。

「くそ坊主共め、足利なんぞに呼応しおって!」

森可成は千の兵で多勢に無勢な中、健闘していたが・・・

「可成さま!これ以上は・・・」

「ならん!比叡山を野放しにすれば信長様の背が討たれることになる、何としてもここで止めねばならん!」

可成自身も槍を振るい、前線に立ち戦っている。


「援軍です、京を守護なされていた織田信治さまと土御門さまの旗が見えます!」

一万からなる援軍に可成は一安心するのである。


「森殿は無茶をするなぁ」

俺は援軍が間に合った事に一安心していた。

いつでも動けるようにしていたとはいえ、京の南に陣取っていた俺が連絡を受けて動き出す前に、宇佐山城にいた森可成が単独で動く方が早く、戦の開始に間に合っていなかった。

「可成も無茶をするもんだ、しかし、ヒロユキ殿、援軍感謝致す。」

信長の弟の織田信治は信長の代わりに京の守護を任されていたが比叡山の動きを聞き、俺と一緒に来たのだった。


「信治殿は森殿と合流して、少し下がってください。あとは私がやりますので。」

「かたじけない、皆、可成と合流する、続け!」

信治は二千の手勢と共に森可成と合流する。

そして、俺は近隣の山から連れてきた猪を森軍と比叡山の坊主達の間に突っ込ませ間を開ける、あまりの事態に戦が止まった所で俺は坊主達の前に進み出る。


「帝からの勅である!代表の者は出てまいられよ!」

坊主や追従する門徒達はざわつき出す。


「代表はおらんのか!それともこれはただの暴徒か!それならこちらも加減はいたさん、全軍に突撃させるのみである。」

「ま、待たれよ。我らは延暦寺の僧なり、我らを害すると仏罰が下るぞ。」

「そなたの名は?」

「法在と申す、この者たちの代弁者だ。」

「ならば法在を代表とみなし問おう。

お前達は帝の勅に従うのか、否か!」

「内容は?」

「無礼者が!帝の勅を何と心得る、内容次第では従わんと言う事か!」

「ご、ご無体な事を申される。帝の勅とは言えど出来ぬ事は有りますれば、せめて内容だけでも・・・」

「まあよい、ならば勅を言い渡す、延暦寺の僧は我が命に従え。」

「なっ!」

「これが勅書である。」

俺は勅書を法在に見せる。


「た、たしかに、しかし、これが本物だと言う保証はありますまい。」

「ならば、朝廷に問うてみるか?だが、勅書を疑った罪は軽く無いぞ。」

法在にも解っていた、土御門がここで偽勅を使えば今の名声は一気に吹き飛ぶ、嘘のはずが無いのだが・・・

従う事にも抵抗があった。比叡山は長年に渡り、権力者に従わずに生きてきた。その誇りがこの時邪魔をした。


「我らは仏に仕える者、帝の勅とは言えど従えぬ事もございます。」

「ならば、致し方ない。皆の者聞いたであろう、この者達は逆賊である!

帝の御為にも我らは心を鬼として逆賊を討つ!

坊主の姿をする逆賊共を討ち滅ぼすのだ!」

俺の一声、全軍が突撃を開始するのだった。

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