第138話 再び京へ

小田原を落とした後は少しずつ、国内の安定に務める。

まずは新規開墾と道の整備、治水などを行い、住人の暮らしを良くしていく。

以前を懐かしむ者も多くいるが、暮らしが良くなるのを嫌がるものはいない。

少しずつだが、安定していっていた。


そんな中、織田から書状が届く、どうやら三好との決戦を考えているようで、その援軍要請だった。

「マサムネ、対北条は任せていいか?」

「俺はいいが、俺がいなくて大丈夫か?」

「まあ、主力じゃないだろうし、旧松平家臣達と三河の兵で援軍に行ってくるよ。」

「景久も連れて行けよ、身の回りの警備は腕の立つやつが大事だ。」

「わかった。」

俺は再び上洛する事になる。

主力は三河兵八千、渡辺守綱を筆頭に鳥居元忠、服部正成、榊原康政、そして、島清興を連れての上洛だった。


「ヒロユキ良くぞ、来てくれた。」

京で信長と合流する。

「信長殿、俺を援軍に呼ぶなんて戦況が良くないのか?」

「そうではないが、些か気になることがあってな、ちと、奥で話すぞ。」

俺と信長は二人での密談をするために屋敷の奥の部屋に入る。


「それで?」

「うむ、まずは本願寺の動きがある事だ。」

「しかし、それは想定出来ているだろ?」

「ああ、だが、これに比叡山も呼応する動きがある。」

「なるほど、表立って来ないから今の時点で動けないと。」

「そうだ、そして、京を任せれる奴もいない、下手な尾張の武士が統治すれば公卿の反発を招きかねない。」

「誰に喰わせてもらっているかも考えずに恩知らずな奴らだ。」

俺は荒れた京を建て直し、公卿達が食に困らなくした、織田に弓引く公卿にあきれていた。


「そう言うお前だから信用出来る。お前なら公卿に顔も効くだろ?

お前が京を安定させてくれたら、その間に摂津近辺を統治する。」

「わかった。お義兄様を助けて差し上げましょう。」

「ええい、普通に喋らんか!だが任したぞ。」

「任されました。」


翌日、俺は京の南の郊外に陣をしき、あえて中に入らなかった。

そして、貧しい者達に炊き出しと日雇仕事として滞在用の砦の建設をはじめる。


俺が中に入らないことに、公卿、二条晴良が俺の元を訪れる。

「修理大夫殿、何故都に入らぬでごじゃる?」

「京は信長殿が治める地なれば、私が入ると角が立ちます。

それに比叡山の動きも怪しい、私はそれに備える為にも外にいるのです。」

「しかしのぅ、帝もそなたの来訪を楽しみにしておる、どうじゃ?

1度、拝謁してもらえぬか?」

「ならば、比叡山を抑えてもらえませぬか?

武家の事に手出しするのは寺社として些か分をわきまえぬ事かと。」

「・・・恥ずかしいながらのぅ、あやつらに我らの声がどこまで届くかわからぬのじゃ。」

「ならば、形だけでも勅をもらえませぬか?

さすれば、私も安心して帝にお会い出来ます。」

「うむ・・・わかった。すぐに準備致す。

じゃが、約束忘れぬようにのぅ・・・」

晴良は再度確認して、帰っていく・・・

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