第128話 武田家滅亡
俺が甲斐に近付くと驚きの使者がくる。
「何?降伏すると?」
「はい、甲斐で集めた六千の兵の降伏をお許しください。」
「わかった、降伏を認める。」
俺は降伏を認め、指揮官に会う。
「昌貞殿でしたか。」
俺は指揮官を見て驚く。
「正確には私では無く、昌豊殿でしたが、軍を乗っ取らせてもらいました。」
「無茶をなさる、だが、お陰で無益な血を流さずに済んだ事に感謝致そう。」
「いえ、感謝など・・・ただ、民をよろしくお願いします。」
「わかった、無下には扱わない事を約束する。」
元々するつもりも無かったが民に危害を加えない事を約束し、躑躅ヶ崎館に進軍する。
その頃、躑躅ヶ崎館は大混乱だった。
「なんだと、戦もせずに降っただと!」
武田信廉はあわてふためく、このままだと、義信の二の舞である。
「荷物を纏めよ、すぐに此処をたつ!」
武田信廉はヒロユキの軍が来る前に北条に向かい逃走を開始する。
指揮すべき信廉の姿がなくなった躑躅ヶ崎館ではもう戦う事が出来なかった。
その為、遺された者は自身の領地に帰るか、躑躅ヶ崎館に残り、降伏の準備をしていた。
武田はろくな戦をすることもなく、滅亡したのであった。
俺は躑躅ヶ崎館に皆を集める、
「武田家は信永に継がせる、ただし、主君としてではない、一家臣としてになるが異存のあるものはいるか?」
俺の声に皆も予想はしていたのか異存の声は出なかった。
「信永、武田家を頼めるか?」
「はっ!謹んでおうけいたします。」
「昌豊、昌貞、両名は信永を支え、甲斐を統治してくれ。」
「「はっ!」」
「このまま、上杉と一戦交えたい所ではあったが、思ったより甲斐の状態が悪い、よって、暫し内政を重視することとする。
リク、甲斐の治水を急ぎ頼めるか?」
「わかった。」
「長安は街道の整備を頼む、元忠は治安維持だ。」
「「はっ!」」
「信永は戸籍の作成、収支の取り纏めを頼む。」
「うっ、書類業務ですか。」
「いやか?」
「いやですけど、頑張ります!」
「そのいきだ、昌豊、昌貞にも手伝って貰えよ。」
「はい、もちろんです。」
これから山積みになる書類に信永はゲンナリしながらも引き受けた。
「上杉とやり合うのは国内が落ち着いてからだ、それまでは防戦致す。マサムネは五千の兵と共に諏訪に滞在してくれ、もちろん、手が空いている時間は諏訪の開発よろしく。」
「了解だ、だが、公重と康政をもらっていいか?」
マサムネは奥山公重と榊原康政を求める。
「いいけど、将を要求するのは珍しいな。」
「相手が上杉景虎だからな、防戦とはいえ甘く見るのは危険だ。」
「そうだな、もちろんすぐに援軍を送る体制は作っておく。頼んだぞ。」
「任せろ!」
俺はマサムネに前線指揮を任せ、一旦三河まで戻る事となる。
俺が差配をしている頃、武田信廉は・・・
この時代にはまだない甲州街道の前身となる道を進んでいた。
「くそっ!なんで私がこのような事をせねばならぬのだ。」
信廉は悪態をつきながら、北条を目指し進む。
信廉と共に進むは穴山信君、一条信龍、
そして、武田盛信を連れていた。
「敵襲!!」
護衛の者から声が聞こえて来る。
「くっ!追手か!」
「違います!落武者狩りです!」
「農民風情がぁ!討ち取れ!」
信廉の声の元、落武者狩りとやり合うが、道中の疲労もあり信廉側の部が悪い。
「こんな所で死ねるか!」
信廉は全てを置いて逃げ出した。
それを追うように穴山信君も逃げ出す。
落武者狩りの多くも身なりのいい二人を追いかける、
だが、残された信君の妻、見と盛信の周りにも落武者狩りが集まってくる。
「殿!お前ら近付くな!近付くと斬る!」
護衛としてきていた、土屋昌次が必死に守る。
「おいおい、兄さんも逃げた方がいいんじゃないか?兄さんは腕がたちそうだからな、逃げるなら追わねぇぜ。」
「黙れ!殿と、見様を捨ててなど、いけぬわ!」
土屋昌次が戦っている所に一条信龍も合流する。
「昌次、よくぞ申した、ワシも最後まで戦おうぞ!」
「信龍様!何故お逃げにならなかったのですか!」
「お前と同じよ、女子供を置いて逃げるなどできぬ!」
二人の気迫に落武者狩りの者達は気勢をそがれる。
「おい、どうする?」
「やるしかないだろ?」
「じゃあ、お前がいけよ・・・」
尻込みしている者に向かい、盛信が叫ぶ、
「私は武田盛信である!お前達は甲斐の民であろう、私をヒロユキがいる躑躅ヶ崎館に連れて行くが良い、首を斬るより破格の恩賞が受けれるぞ。」
「殿!」
「盛信!」
「伯父上、ヒロユキなら無下には扱わないでしょう、昌次、そなたの忠義感嘆致した。しかし、その力は甲斐の民の為に使ってくれ。」
二人はまだ、幼い盛信の言葉に涙が出る。
そして、落武者狩り達は盛信達をヒロユキに渡して恩賞を得るのであった。
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