第127話 甲斐

俺は武田と戦になる前に準備を行う。

南信濃には引き続き防衛を頼み、援軍として、長野業盛に兵五千を預ける。

そして、俺は駿河に八千を率い向かった。


「マサムネ、武田をやるぞ。」

「おお、わかったが北条はどうする?」

「牽制の兵を駿府に置いて置て、綱秀殿に任せようと思う。」

俺は三田綱秀に駿河を任せ、北条に備える。

「じいさんか、あの人なら大丈夫だろう。」

マサムネも納得し、軍を編成する。


連れて行く将はマサムネを筆頭に前原景久、林崎重信、奥山公重、杉谷善住坊、榊原康政、鳥居元忠、服部正成、武田信永、


そして、1万五千の兵で甲斐に向かう。


俺の進軍を知った武田家は狼狽していた。


「ヒロユキが攻めてくるだと!やはりあの下賎の輩は武田家を狙っておったのだ、迎撃の準備をせよ!」

武田信廉が指示を飛ばすが反応が悪い、武田の軍備は昨年ヒロユキに攻められから数を減らしており、その補充もまだであった。

その上、ヒロユキの戦上手を知るもの達は戦いを躊躇う。

「信廉殿、此処はヒロユキ殿に使者をたて、和睦をはかるべきかと。」

内藤昌豊は家臣を代表して意見を言う。


「昌豊、そのような真似ができるか!この状況での和睦など、降伏と同じではないか!」


「しかし!兵もなく、上杉を北に抱え戦が出来ると思いか!」

「黙れ黙れ黙れ!!!

昌豊、今ある兵を纏め、ヒロユキにあたれ!」


内藤昌豊は仕方なく命令を受ける。

集めれた兵は六千であった。

「少ないな・・・」

「昌豊殿、甲斐の民もヒロユキと戦う気など無いのです。」

三枝昌貞はタメ息混じりに言う。

「これではヒロユキ殿と闘えぬな。」

「昌豊殿は戦うおつもりか?」

「・・・昌貞殿なんと?」

「この戦、誰の為でしょう?」

「武田の為だ!お家を守るために戦うのが武士ではないか?」

「義信、信廉とろくなもんでは無かった、

既に民の心は離れております。

ヒロユキ殿に降るべきでは?」


「な、ならん!信玄様に受けた恩を考えるとそのような真似が出来ると思うのか!」

「昌豊殿は真面目ですからね、そう言うと思いました。」

三枝昌貞が手をあげると兵が周りを囲む。

「昌貞殿、何のつもりだ!」

「昌豊殿は捕縛されてどうしようも無かった。そうでしょう?

裏切りの汚名は私が被ります。

どうか、おとなしく捕まってくだされ。」

内藤昌豊は諦め、刀にかけていた手を離す。


「昌貞殿、辛い役目をお願い致す。」

「ええ、お任せください。

誰か、ヒロユキ殿に使者をだせ!

我等は降伏致す。」

降伏の言葉に兵から歓声があがる。

皆、ヒロユキと戦いたく無かったのだ。


その声を聞き、内藤昌豊は武田の滅亡を感じていた。

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