第122話 やっちゃった。
「ヒロユキ殺ったな?」
翌日、信長が慌てた様子で俺の元に来る。
「何の事だか?俺に人を斬る腕はありませんよ。」
「鼠を操れるのも御主だけであろう。」
「まあ、そうですね。これを見てください。」
俺は義昭の書状を見せる、
「これは!」
「それにくわえて市を渡せとも言いましたので。
生かしておく気がなくなりました。」
「どうするのだ、将軍殺しの汚名を着ることになるぞ。」
「まだ、将軍ではなかったですし、目撃者も全て鼠の腹の中です、病死で良いのでは?」
「まあ、それはそれで良いかも知れぬが、我等の大義名文が無くなってしまったぞ。」
「朝廷を支えたら良いのです」
信長は少し考える・・・
「それしかあるまい、だがヒロユキも少し力を貸せ、今すぐ帰国はしないでくれ。」
「わかりました。俺が引き起こした事ですからね、後処理もさせてもらいます。」
俺の帰国は延長されることとなった。
足利義昭の死亡は病死として発表され、
全国にしれ渡る。
信長の支援を受け、将軍即位が目の前だった為、病死を疑うものは少なかったが、
阿波にいた足利義助が三好義継を後見に将軍として名乗りを揚げる。
たが、信長は
「将軍を名乗るなら上洛して京にいるべきだ。」
と宣言した。その上、朝廷を支持し天皇の元に国は纏まるべきと他国にも知らせる。
一部の者は反発したが、三好に上洛する力は無く、表面上の平穏は保たれていた。
俺は滞在期間中に道の整備、城の築城など、京から摂津の開発を行う。
そんなおり、本願寺顕如との面談が行われる事となる。
俺からは摂津の開発に対しての協力要請、顕如からは信仰の保証が話し合いの議題であった。
「ヒロユキ殿、貴方は信仰をお持ちですか?」
俺が軽く流すと、少し空気が重くなる事を感じる
「いや、特にはないね、そんなことより、摂津の開発について話したいのだが?」
「そんなことですか?そのような言い方だと御仏の罰が下りますよ。」
「罰を下すのは人間だろ?
俺がそんなことと言ったのは拝む神様が誰かより、
生きる人達が食べるものも無く、死んでいく世の中を改善する事、此方の方が大事では無いのか?」
「貧しい者を助けるのは御仏の御心にございます。」
「心が満たされても、腹が満たされねば死んでしまうだろ?」
「御仏に、仕えておれば死したのち、極楽浄土に向かう事が出来るのです。」
俺と顕如の話は平行線を辿っていた。
その結果、顕如は怒りだした。
「貴方はどこまで不信心なのですか!」
「俺は信仰心が無い訳ではないが、生きる人を助ける方が先だと思っているだけだ。」
「話にならない、帰らせて貰う!」
「短気な奴だな。」
「よろしかったのですか?」
俺を警護していた服部正成が聞いてくる。
「良くはないけど、あれ程、民を思わない人物とは思わなかったな。
正成、事の顛末を広めてくれ。
本願寺は民が飢えて死んでも仏を拝めと教えていると。」
「かしこまりました。」
俺は摂津のみならず、領内全てにこの話を伝える。
その上で畿内の各所で身分を問わず炊き出しを行い、道や砦の普請に賃金を払い、貧しい者にも金銭が手に入るようにする。
俺に従えば飯が食える。
解りやすい構図を展開する事にした。
民は喜び、普請に励んでくれたが一部の寺が普請で得た金銭を御布施として巻き上げる事態が起こっていた。
これにより、本願寺の信仰心に多少なりのヒビを入れる事が出来た。
俺は直接の戦闘を行わないまま、本願寺の力を削ぐ方針で攻撃するのであった。
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