第120話 京の内政
俺の人気が上がれば上がるほど長政の機嫌が悪くなっていた。
「何故だ!京を解放したのは私だぞ!」
「長政様、落ち着いてください。」
長政を諌めるのは腹心でもある、遠藤直経 であった。
「直経、これが落ち着いていられるか!我等の事を野蛮人と罵っておるのだぞ!」
「初日の統制が取れてなかったのが悔しい所ではありますが、こればかりは仕方ない事かと、更に土御門殿は宮城の整備、町の清掃、炊き出し等、莫大な資金を投じております。
民の人気が上がるのは致し方ないかと。」
「わかっておる、わかっておるのだが!」
「落ち着いてください。いくら資金を投じても土御門殿は京から遠い地の御方、今だけの事にございます。
此処は土御門殿の資金で京を整えて貰いましょう。
どうせいなくなるのですから。」
「な、なるほど。そのような考えもあるのだな。うむ、そう思えば、受け入れられる気がするな。」
直経はタメ息が漏れる、本来なら我等が出来れば一番なのだがそれは予算的に出来ない。
そして、足利将軍家は織田が朝廷は土御門が抑えるという動きは見事としかいえない。
織田が朝廷に働きかけても武家ということで揉めるだろうが、
土御門は公家の出と聞く、朝廷としても受け入れ易いのであろう。
ならば我等はどうすれば良いのだ・・・
直経の悩む日々が始まるのであった。
「此度はご苦労であった。皆のお陰でワシが将軍となることが出来る。
今後もワシに忠節を尽くすのだぞ。」
将軍候補の足利義昭から声をかけられる為に忙しい中、織田信長、浅井長政そして、俺が集められる。
「普通、こういう時って何か褒美があるんじゃないかな?」
謁見が終わったあと、俺は信長に聞いてみた。
「普通はな、一応ワシは美濃と尾張の守護職を貰ったが。」
「長政殿と俺は眼中にないということか?」
「すまんとしか言えぬな。」
「信長殿に詫びてもらう必要はないが、せめて長政殿には近江守護職を与えて貰いたかったな。」
俺の発言に長政は驚いている。
「土御門殿、それはどういう事ですか?」
「長政殿にとって守護職は役に立つでしょう、京極家にでかい顔をされるのも嫌でしょう。」
「それはそうだが。」
長政は一方的に敵視していたが、浅井の事も考えてくれている態度に少し好感を持つ。
「多分、義昭は側近の京極高吉を近江守護職に据えたいのであろう。
困った御方だ。」
信長はタメ息をつく。
そんな中、織田家、家臣達が摂津を落としたと報告が入った。
「うむ、よくやったな。」
信長は上機嫌となる。
「おめでとうございます。」
俺と長政も祝いの言葉を述べる、これで畿内は粗方抑えた事になる。
「信長殿、こうなると上洛軍はお役御免ですか?」
「そうなるな、長政殿、ヒロユキ殿此度はワシの依頼を引き受けてくださり感謝致す。」
信長は頭を下げる。
「一応、俺は少し部隊を残して宮城の建設をさせてください。」
俺は部隊を少し残すつもりであった。
「それはわかっているが、予算は大丈夫なのか?」
「それは大丈夫、堺からも運び込みますから。」
「抜かりないな、長政殿、もし京に何かあれば援軍を頼み申す。」
「お任せあれ。」
こうして上洛軍は解散となった。
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