第119話 京にて
京に入る前に俺は全軍に命令を出す。
「いいか、略奪は絶対に許さん、俺の部下として恥ずかしくない振舞いを致せ。
あと、飢えている者に炊き出しを行う、兵糧は多く運び込んであるから遠慮なく振る舞ってやれ。
いいか、京の民に我等の名を知らしめるのだ。」
信長も部下に指示をだしていた。
「良いか、たとえ一銭でも奪えば首を切る。よいな!」
信長軍も整然と進軍した。
しかし、浅井軍は統率がとりきれていなかった。浅井が進軍した西側では略奪が行われており、
南の土御門軍、東の織田軍に向かい民は逃げて行っていた。
長政が略奪を止めれたのは翌日になってからであった。
その為、京の民は織田と土御門を称え、浅井を野蛮人呼ばわりしており、長政の機嫌は悪くなっていた。
信長は京に入り、ひとまず本能寺に拠点を置くと、義昭の居城の建築に入る。
足利家の復権を示す為である。
一方俺は郊外に陣を張り、死体の片付け、治安維持、炊き出し、
そして、朝廷に献金を行い、宮城の修理を願い出て、建築を行う。
陰陽頭に任じられてる以上、宮廷に遣える身だ、これぐらいはしないといけないだろうと考えていた。
その為、京の町の人からの人気は上がっていた。
そんな中、朝廷から呼ばれ、謁見する運びとなった。
「陛下にはご機嫌麗しく。」
俺は深々頭を下げる、今、目の前に天皇陛下がいると思うと震えが止まらない、
「うむ、よく来てくれた。
そなたの尊皇の志のお陰で随分助かっておる。皆に代わり礼を申す。」
「勿体なき御言葉にございます。」
「うむ、これは余が出来る数少ない礼だ受け取ってくれ。」
陛下が下されたのは、安倍土御門の家督と従四位下修理大夫に任じられた。
俺が陣に帰ると皆が喜んでくれた。
「ヒロユキ様、誠にめでたい。」
「陛下に謁見出来るなどとは・・・家臣として誇らしく思います。」
「ありがとう、俺も陛下に会えるとは思ってもいなかったから緊張したよ。
そうだ、今晩は祝宴を開こう。
少し豪華な食事を皆に配ってくれないか?」
「わかりました。」
俺のワガママではあるが、嬉しさのあまり皆と喜びを分かち合いたかった。
この日、土御門軍全軍で祝う、兵士達も我が事のように喜んでおり盛大に祝っていた。
そして、この事は炊き出しに来ていた民達にも知ることとなる。
「いったい何の騒ぎだか?」
「ああ、ヒロユキ様が陛下にお会いする事が出来て礼を言われたそうだ。」
「それは凄い、やはり人徳のある方は違うのだな。」
「そうであろう、そうだ、お前達もヒロユキ様を祝ってくれよ。」
配給班の機転でお裾分けという形を取り、来るもの皆に豪華な食事が配られていた。
その日は夜遅くまで、土御門軍は賑やかに過ごすのであった。
そして、お裾分けを受けたもの達もこぞってヒロユキを祝うのであった。
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