第107話 仁王立ち!

帰国・・・

吉田城の前にユメが仁王立ちしていた。


「お兄ちゃん!どういうこと?」

「ただいま。戦が終ったから帰ってきたよ。」

「違うの聞きたいのはその事じゃないの!

笛さん、梅ちゃん、それに市さまと結婚ってどういう事なの?」

ユメはついに結婚について聞き付けたようだった。

「それはね・・・」

俺が答える前にミユキがやって来た。


「お帰りなさい、あなた。

ユメちゃんもワガママ言っちゃ駄目ですよ。

こんな世界に来ているのですから、ヒロユキくんが側室を持たなくてはいけない立場というのはユメちゃんだってわかるでしょ?」

ミユキはユメを説得してくれる。


「怪しい・・・ねえ、ミユキ。お兄ちゃんと何かあったの?」

ユメは疑いの目をミユキに向ける。


「な、なんの事かな?」


「だって、ミユキが他の女を容認するって変じゃない!

何があったの・・・まさか!お兄ちゃん!」

ユメは俺の方を向くが、俺は既に城に向かって逃走していた。

ユメは残されたミユキを追及しているようだった。


城に入ると鳥居元忠が俺に声をかけてくる。

「ヒロユキ様、市様がお越しになられております。」

「あれ?先に来てるの?

てっきり俺が帰ってからになると思っていたんだけど。」

「信長殿の伝言によると、市様が城にいればヒロユキは織田に向かって来ないだろうとの事でした。」

「・・・読まれてるな、まあ、同盟を反故にする気はないけどね。

信長殿に使者を出してもらえる、帰って来たから祝言をあげると、参加するならお越しくださいと伝えて。」

「かしこまりました。」

「じゃあ、俺は市さんに会いに行って来るよ。」

俺は元忠と別れ、市に会いに行く。


市の部屋に行くと其処には言葉も出ないような美少女がいた。

「はじめまして、俺が土御門ヒロユキです。」

俺は思わず、緊張して声が固まっていた。

「ヒロユキさま、緊張なさらないでくださいませ。

私は信長の妹、市と申します。

末長くお付き合いよろしく御願いいたします。」

「ああ・・・」

ミユキ、笛も美少女だが、市の美しさはその上をいっていた、

歴史上、数多くの武将が惚れ込んだ事も納得がいった。


「そうだ、今信長殿に使者を出したから、祝言はその使者が帰ってから決めようと思う、それまでは婚約者として、この城でゆっくりしてください。」

「はい、お優しいお言葉、ありがとうございます。

ですが、私に出来ることがあれば何なりとお申し付けください。

私は土御門に嫁ぐのですから、ヒロユキさまの為に尽くしたいと思います。」

柔らかい笑顔で言ってくれる。

「わかった、何かあったらお願いするよ。」

俺はその笑顔にドキドキしながら部屋を後にした。


その夜、

ミユキが部屋に来たので話していると市の話が出てきた。

「ヒロユキも見たんでしょ?市さん綺麗だよね。」

「ああ、ビックリしたよ、あんなに綺麗な人がいるとは思わなかった。」

「むう、わかるけど、それはちょっと悔しいかも。」

ミユキは頬をふくらます。

「ごめん、ごめん。比べた訳じゃないんだけどついね。」

「ううん、私から見ても負けてると思ったし。」

「でも、正室はミユキなんだから奥の事は任したよ。」

「うん、ヒロユキも市さんにうつつをぬかさないでね。」

「わかってるよ。女で国を滅ぼした男は沢山いるからね。

俺もそうならないように気をつけるよ。」

俺はミユキに注意されつつ、その夜はミユキとあつい夜をすごした。

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