第106話 配置

俺は新たに配置を告げる。

「綱秀、今川館にて引き続き駿河を纏めてくれ。マサムネは軍を率いて裏切り者を始末してくれ。」

三田綱秀に駿河を任せつつ、マサムネに備えを頼む。


「お待ちを、かの者達にも機会をいただけませぬか?

かの者達は状況の変化についていけなかっただけにございます。

落ち着いて話せばわかってくれる筈です。」

駿河の国人の安部 元真が出ていった者の助命を願い出る。


「元真、機会を与えるのは構わないが、如何にするつもりだ?」


「私が説得してみます。どうか2ヶ月ほど時間をいただきたい。」


「わかった、元真に任せる。

マサムネは軍と共に駿河に滞在して様子を見てくれ。」

「了解。」

俺は安部 元真に説得の機会をあたえる。


「次に遠江は引馬城にて信永に任せる。」

「私ですか!その様な大役、私につとまるでしょうか?」

信永は驚いていた。

「信永ならきっと出来るさ、遠江の者達も信永を支えてやってくれ。」

「お任せを。」


「次に内政についてだが、まずは街道を整備する。

吉田から今川館までの道を真っ直ぐにする。

領民をかり出すが給金は払う、これで少しはゆとりが出来る筈だ。


次に開墾だが、これについては吉田にて開墾をしていた者達を随時回していくが、これについては順番を待ってくれとしかいえない。


あとは俺が各地を訪れその地にあった内政を指導する。


俺は三年を目処に三河、遠江、駿河を他の国に負けない、裕福な地にするつもりだ。

各自それぞれ不満もあると思うがせめて三年は待ってくれ。」

俺は大雑把に計画を告げた。

国人達も、一先ず受け入れてくれる。


「あと、織田とは同盟を結ぶ事が決まっている、北条との関係はまだ不明ではあるが油断はしないようにな。」


「ヒロユキ様、武田との関係はどうなるのでしょうか?」

「一応同盟国と思っているが、向こう次第だな、

まあ暫くは動けないだろう。北に上杉を抱えているし、北条との関係も不明だからな。」


俺は情報をみんなで共有したあとは祝宴とする。

色々あったが、やはり男が仲良くなるには共に呑むのが一番だ。


俺はみんなに酒をついで回り、声をかけ、相談にのり、親睦を深めていった。


翌日、俺は手勢と共に吉田に戻る為に出発する。

道中進んでいると一人の若武者が道の前に出てきた。

「何者だ!!」

俺を守る為に前原景久は前に出る。


「怪しい者ではござらん!どうか仕官を願いたい!」

若武者は刀を置き、敵意が無いことを示す。


俺は少し興味を持ち、男に声をかける。

「俺が土御門ヒロユキだが、貴殿は何が得意だ?あと名を教えてもらえるか?」

「某は島清興と申す。武芸に自信がござる。

お家再興の為にも何卒家臣の末席に加えて貰いたい。」


島清興・・・島左近か!

俺は彼を思い出す、石田三成に従い名を馳せた武将である。


「わかった、仕官を認めよう。

して、其処の草むらに入るのは奥方か?」

俺は草むらに隠れている女性を見つける。

「はっ、某の妻にございます。」

「誰か荷車を片付け、場所を空けよ。

清興、少し待て、奥方の場所をあけるのでな。」

「いえ、其処までしていただくわけには・・・」

清興は遠慮しようとするが。

「俺は家臣の妻を歩かせるような真似はしたくない。

それに子を抱えて歩くのはしんどかろう。

遠慮せず乗るがよい。」

「しかし・・・」

「ふむ、気が引けるなら、その分、今後の活躍で返してもらおうか。

それならば清興も気兼ねする必要も無いだろう。」

「ありがたき幸せ、必ずやこの御恩忘れませぬ。」

俺は思わぬ所で、一人の武将を手に入れることが出来た。


「ならば、早速命じる、道中荷車の警備につけ。大事な荷を守るのだぞ。」

俺は清興に馬を与え、道中、家族が乗る荷車の横に配置したのであった。


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