第85話 鳴海城
武田義信率いる軍勢は刈谷城を出発して、鳴海城を攻めていた。
しかし、鳴海城を守る佐久間信盛の必死の防衛により、1ヶ月かかっても落とす事が出来なかった。
そして、武田軍の兵糧が段々減ってくる。
近隣の村は織田信広が稼いだ時間の間に食料を持って逃げ出しており、何も残されていなかった。
そのうえ、信長が木下秀吉に命じて後方の撹乱を命じて、輸送隊を襲い続けていた。
義信が部隊を出し、捜索するが農民に扮した秀吉を見つける事は出来なかった。
その為、囮を使い誘きだそうとするが秀吉が囮を襲う事はなく、必ず、少数の輸送隊を襲い続けていた。
「何故だ!何故見つけれん!」
武田義信の怒りは増すばかりである。
「しかし、兵糧を何とかしませんと戦になりませぬ。」
飯富虎昌が義信に言うが・・・
「言われずともわかっておるわ!ならば、兵糧の輸送に五千を使え、それならば襲われまい。」
「五千ですか?多いのでは?」
「致し方なかろう、そして、刈谷城に置いてある兵糧を全て持ってくるのだ。」
「わかりました。直ぐに手配致します。」
虎昌は輸送隊を指揮し、刈谷城から運び込む、本来なら虎昌程の猛将が輸送隊を指揮したりはしないのだが、絶対に失敗の許されない作戦の為に虎昌自身が進んで指揮をとった。
虎昌が指揮をとった為なのか襲われること無く兵糧を運び込むことが出来た。
「義信様、無事に運び終えました。」
「虎昌、良くやった。
これで織田を落とす事が出来るわ!」
義信は上機嫌だった。
士気を盛り返す為に、その日の夜は兵士に充分な食事と酒が振る舞われた。
その夜・・・
「義信様!一大事にございます!」
馬場信春が義信の寝所に駆け込んでくる。
「なんだ・・・うるさい、明日にしろ・・・」
義信は嬉しさのあまりに深酒をしてしまっていた。
「義信様!それ処ではございません!兵糧か
、兵糧が燃えております。」
「なに・・・なんだと!」
義信は飛び起きるが酒の為にふらつく、
信春に支えながら、外に出てみると、兵糧を置いている辺りの空が赤く染まっていた。
「け、消せ、何としても消すのだ!」
「今、消火に全力であたっておりますが、火の回りが早く、手がつけられません。
現在消火と平行して無事な兵糧を運び出しておりますが・・・」
「急ぐのだ、何としても兵糧を確保するのだ!」
義信がどれだけ命令しても火は朝まで消える事はなかった・・・
翌朝、
「信春、兵糧はどれ程残った?」
義信は憔悴しきった顔で信春に聞く、
「二割程にございます。」
「それで何日戦える?」
「節約すれば1ヶ月程は・・・」
「くっ、1ヶ月でどう尾張を落とせば良いのだ!」
「ヒロユキ殿に援助を願いましょう、三河は裕福になっていると聞き及んでおります。
頼めば出してくれるでしょう。」
「私がアイツに頭を下げるのか!武田の次期当主たるこの私がだ!」
「しかし、このままでは尾張攻めが失敗になってしまいます。
ここは我慢のしどころにございます。」
「ならん!アイツの手を借りてみよ、尾張攻めの手柄を全部取られてしまうわ!」
「なれど!」
「くどい!信春、一刻も早く鳴海を落とすのだ、城の中には兵糧もあろう。
それを奪い取れ!いいな!」
義信の言葉に信春は従うだけであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます