第84話 信広救出
「土御門殿、某を助けて如何するおつもりか?」
俺は織田信広を岡崎まで連れてきて手当てを行った。
すると、信広から質問される。
「どうにもしないかな?まあ、今、織田に帰られると俺の立場が悪くなるので少しは滞在して貰いたいですね。」
「人質としてか?」
「うーん、そんな手段は好きじゃないから、戦が終われば帰って良いですよ。」
「それでは何故助けたのだ?」
「そうですね、信広殿程の勇士を拷問して殺すなんて真似が気に入らなかったと言う事ですね。
それに義信とは因縁がありますから。」
「武田の事情も複雑なのだな、どうだ土御門殿が良ければ織田に来ないか?」
「それも迷う所ですが・・・まあ、武田に知り合いも増えましたので、裏切るつもりはありませんよ。」
「残念だ、気が変わったら教えて貰いたいな。」
「その時は信長殿に口利き頼みますよ。」
お互い本気とも冗談ともとれるやり取りをする。
「しかし、土御門殿は織田が滅びるとは思っておらぬのだな。」
「義信ごときが総大将では落ちる物も落とせないでしょう。
それに既に術中にはまっているのでしょ?」
「ほう・・・何故そう思う?」
「信広殿が安祥城で大軍相手に無理な籠城戦を行ったからかな?
三河なんて織田からしたら、どうでもいい土地でしょ?
それを信長殿の兄である信広殿が命懸けで守る意味がない。
となると何か考えがあるんでしょ?
そして、次の刈谷城の水野信元があっさり降伏。
刈谷城に仕掛けがあるか、水野信元の降伏が嘘か・・・
この辺ですか?」
「いい所をつくな、つくづく敵にしたくない。
だが、それを知っていて何故教えてやらない?」
「俺と義信の仲の悪さも策に入っているでしょ?
俺としても義信には負けて貰わないと困りますから。」
「それもお見通しか・・・」
「ええ、敵の敵は味方といったところですかね。」
「違いない。」
俺と信広は笑いあった。
「ヒロユキ様、信広様はお怪我をなさっているのですから、お話をするより、静養していただいた方がよろしいのでは?」
岡崎城までついてきていた三田笛が話し込んでいた俺を嗜める。
「おっと、そうだった。信広殿まずはゆっくりと休まれよ。」
「信広様、食事の準備が出来ております。すぐに持って参りますね。」
笛は食事を取りにいった。
「なかなか良い奥方ですな。」
「いやいや、奥方じゃないからね!」
「そうなのですか?まだということですかな。」
「家臣の娘です、色々世話をしてくれているのです。
ほら、私も怪我をしてますからね。」
俺は信広に痛めた足を見せる。
「それが上杉影虎にやられた怪我ですか?
土御門殿は武勇伝に困りませぬな。」
「いやいや、武勇はからっきし駄目ですから、友のマサムネならこんな怪我をすること無く勝てたのでしょうが・・・」
「お二人が揃った戦場で敵にはなりたくないですな。」
俺と信広は意気投合して、その日は一緒に食事をし、親交を深めるのであった。
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