第83話 信広・・・

織田信広は刑に処される前に拷問が施される事になった・・・

「くくく、これが武田の御曹司がやることか、武田の末路が目に浮かぶわ!」

信広は既に左腕を切り落とされ、片足も使い物にならなくされているなか、周囲に毒づいていた。


「黙れ!おまえ!頭がおかしいのか、何で拷問されてそんなに毒づけるんだ!さっさと命乞いをしろ!」

刑を行っている兵士が棒で殴る。

「織田に、そのような卑怯者などおらぬわ!ほら、さっさと殺せ!」

あまりに毒づく為に兵士はもう処刑を行おうと、刑場に連れて行く。


「これで最後だ、言い残す事はあるか?」

「つくづく惜しいな。」

「何がだ!」

「お前達武田の滅ぶさまが見えない事がだよ!」

「黙れ!!」

兵士は刀を振るい信広の首を切り落とし、終わらせようとした。


「待て!」

俺は暗闇に乗じて刑場に捕らえられている信広に近付いていた。

「なっ、これは土御門様!」

兵士は跪く。

「この者は俺が預かる。」

「しかし、義信様の御命令では、処刑するようにと・・・」

「ならば、始末したと報告するか、何者かに奪われたと報告するか、好きにすればいい、何なら俺に奪われたと伝えてもいいぞ。」

「そんな、土御門様を訴えるような真似は・・・」

此処までの道中、兵士はヒロユキに恐怖を感じていた。


「まあ、好きに報告するがいい、しかし、こいつは貰っていく。」

兵士と話しているうちに信広を確保して最低限の止血を行い、馬に乗せる。

兵士は止める事も出来ずにただ信広が連れていかれるのを見ているだけだった。


翌日、義信のもとには処刑が終わった事を伝えられた。

既に義信にとってはどうでもいいことであり、放置される。


そして、安祥城の隣、刈谷城に進軍する。

城を守る水野信元は所領安堵の条件で義信に降る。

義信は戦わずして城を手に入れた事を大いに喜び、水野信元の為の祝宴をおこなった。

そして、駿河から持ってきていた兵糧を刈谷城に運び込む。


岡崎はヒロユキの城の為に信用出来ず、安祥城は激戦だった為に倉も含めてボロボロだった。

義信は刈谷城を前線基地として使用するつもりであった。


「義信様、刈谷城を前線基地として使用するなら城主を変えてくださいませ!」

馬場信春は刈谷城主、水野信元を信用していなかった。


「信春、俺は所領を安堵したのだぞ、今さら反故にすれば信元も面白く無いだろう。」


「それならば、信元殿を前線に出せば良いではないですか。」


「それがだな、信広に兵を取られており、ほとんど兵士がいないそうだ、手勢もおらぬのに連れて行っても仕方あるまい、後方にて城を守ってもらう。」

「義信様、信元殿が裏切ればどうなるか考えておられますか!」


「信春、心配しすぎだ、刈谷城は内地になるのだぞ、裏切ればどうなるか信元もわかるであろう。

それにすぐに尾張を落とすのだ、兵糧を置くのも一時的なものだ。」

馬場信春の忠告も義信は聞く気がなかった。

そして、武田軍は尾張に侵攻を開始する。

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