第80話 前鬼
「ふむ、我を招来するとはよい術師がおるのだな。そなたか我を呼んだのは・・・うん?その五芒星は、小角の宝具!となるとそなたは小角の血筋か!」
「俺は違うけど、この子はそうかもな。それでお前は?」
「我は前鬼、かつて小角を守護せし者よ!」
「前鬼様!!」
お偉いさん達が騒ぎ始める。
中には拝み出すものも出た。
「皆さん静かに!前鬼さん、呼び出して悪いけど、この子に加護や祝福をかける事は出来る?」
俺はユメちゃんを守護できるか聞いてみる。
「小角の血筋の者を守護するは我等の役目、阿!」
前鬼が気を発するとユメに光が纏わりつく。
「これで凶刃から身を守れるであろう。」
「ありがとうございます。」
ユメはよくわからないながらも前鬼が自分の為にしてくれたことを気付いたのだろう。
御礼を言う。
「礼には及ばん、小角に使役された我の勤めでもあるからな。」
「前鬼さん、あと一つ、聞きたい、時を越える術はあるのか?」
「時を越えるだと?お主はいったい・・・まあ、質問に答えてやろう。
一応は有るはずとだけ伝えよう、だが、行うのは難しいぞ。小角ですら失敗したからな。」
「やり方は?」
「知らん、小角なら何か知ってたやも知れんが我等の知るところではなかった。」
俺は人外の前鬼ならと思い聞いてみたが成果は今一つだった。
すると、前鬼の姿が薄くなる。
「ふむ、今回の招来はこれまでのようだな、小角の血筋の娘よ、次に会うまで息災にな。」
「前鬼さん、次も招来出来るのか?」
「五芒星に月の光を一年当てるがよい、さすれば御主なら我を呼び出す事も出来よう。」
「わかった、ありがとう。」
「礼などいらん、術師よ、娘を頼むぞ。」
前鬼の姿は完全に消えた。
ユメは五芒星のネックレスを大事そうに握りしめている。
・・・一応祈りは終わったかな?と後ろを振り返ると、号泣しているものが多数いる。
「あ、あの、落ち着いてください。」
俺は宥めてみるが全く聞いてくれない。
「落ち着いてください。」
ユメが俺に続いて言うと全員が泣き止み、身を正す。
「何この違い・・・」
「お兄ちゃん、落ち着いたよ。」
「ああ、皆さん、落成式はこれで終わりです。
気をつけてお帰りください。」
俺は終了を告げるが。
「いやいや、土御門殿!今の前鬼様についてお話くだされ!」
立派な服を着た坊様が質問をしてくる。
「とはいえ、前鬼さんが出てきたのは予想外なんです。たまたまって奴ですよ。」
「そんな・・・しかし!また呼び出せると言っておりましたな!」
どうやら話はしっかり聞いていたようだ。
「そうみたいだね、何時になるかわからないけど。」
「ならば、その時は我等にも声をかけて貰えませぬか?」
「まあ、その時が来ればね。
知ってる人もいると思うけど、
俺達は一歩間違えれば、始末されてもおかしくない立場なんだ、だから、一年月の光に当てれるかも約束出来ないし、一年後に生きてる保証も無いから。」
すると、
偉いさん達は話し合い始める。
「安心召されよ、各地より修験者をこの地に配置致す。ユメ様、及び土御門殿のお命は何があろうと御守り致そう!」
この日より吉田の地に鍛えぬかれた修験者が住み着く事になる。
また、前鬼が現れた神社に参拝することが修験者の夢になり、常駐の修験者千に加え、来訪者の修験者およそ二千が引っ切り無しに訪れる町となった。
これにより全国の情報が絶えず届くようになる。
また、旅人が増えた為に宿場町も栄え、商業の発展が目まぐるしいものとなった。
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