第64話 募兵
俺は軍を三田綱秀に任せて、最短距離で飯田に向かってもらい、
俺自身は一度吉田を通り、飯田に向かう。
先に飯田に着く三田綱秀には軍の編成と休養を、そして、俺は吉田で連れていける兵士を確保した後、飯田に向かう事にした。
「ヒロユキくん!」
吉田に着いた俺にミユキが慌ててかけてきた。
「ミユキさんどうしたの?」
「どうしたの、じゃないよ、上杉謙信と戦うってどういうことよ。」
どうやら先行して兵を集めるように指示をしていたのだが、其処から話を聞いたようだ。
「いや、上杉が攻めて来たからね、対策に行かないと。」
「それでもヒロユキくんが行く必要何てないじゃない。命令もきてないんでしょ!」
「そうだけどね、でも、誰かは行かないといけないし、
多分信繁様が前線に行ってると思うんだ、あの人に何かあると俺達も今みたいに暮らしていけないからね。」
「でも!」
「ごめんね、でも、必ず帰ってくるから、笑顔で送り出してくれないかな?」
俺は困った顔をしながらミユキに答えた。
「ずるいよ、そんな顔で言われたら何も言えないよ・・・絶対帰ってきてよ!」
「約束するよ。」
俺はミユキをギュッと抱き締め、兵に指示するために離れていく。
残されたミユキは精一杯の笑顔で見送った後、ヒロユキの姿が見えなくなってから泣いていた。
俺はミユキとわかれた後、前もって集めてもらっていた兵士を確認する。
みんなの面構えを見る限り、使命感に燃えたいい面構えだった。
「現在、上杉が北信濃に侵攻してきた。これを撃退しなければならないが残念ながら現在向かえる兵はほとんどいない。
しかし、北信濃の民を見捨てて上杉の人攫いを認める訳にはいかない。
どうかみんなの力を貸して欲しい。
覚悟があるものは参加してくれ!」
「おお!!」
俺が激を飛ばす中、ミユキがやってくる。
「みなさん、どうかご武運を。
そして、どうかヒロユキくんを、主人を守ってもらえませんか?」
涙ながら兵士に訴える。
「奥方さま!心配ありませんぜ、必ずヒロユキ様を連れて戻ってきます。」
「お任せを!上杉なんざサッと片付けてきますぜ。」
兵士達は力強く答える。
「ありがとう、ありがとう・・・」
ミユキは涙を流しながらお礼を言っていた。
「ヒロユキ様、奥方様、三河武士を代表して私も同行させてもらえませんか?」
鳥居元忠が訴えてくる。
確かに鳥居元忠は遠江対策に吉田の守りを頼んでいたが、遠江を落とした以上、手が空いている。
「元忠、来てくれるか?」
「はっ!三河武士の力をお見せ致しましょう。」
こうして俺は五百の追加の兵と鳥居元忠を従え、飯田に向かう。
飯田でも募兵に応じた三百の兵がおり、合わせて二千八百の兵をもって海津城に向かう。
起こす気の無かった第5次川中島の戦いの始まりである。
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