第65話 海津城の攻防

俺が向かっている頃、海津城は上杉の手によって攻められていた。


上杉の侵攻を聞いた武田信繁が近隣から集めれるだけの兵を集めて籠城していた。

その数七千、その数と難攻不落の城によって幾日も上杉の猛攻から耐えていた。


「なかなか、激しい攻撃だな。」

信繁は矢倉から上杉の攻撃を見ていた。

「しかし、まだ大丈夫にございます、信繁様がおられる事で士気も高く、簡単には落ちませぬぞ。」

信繁に答えるのは、北の守りについていた真田幸隆であった。


「幸隆よ、油断はするな。上杉景虎は戦の天才だ。どんな手で来るかわからん。」

信繁は油断無く防戦に努めようとしていた。



一方、上杉陣営では、

「景虎様、如何に城を落とすのですか?このままでは落ちぬと思うのですが?」

直江景綱は上杉景虎に質問していた。

それもその筈、上杉軍一万五千では普通に戦えば、七千の兵が籠城する城を落とすことは出来ない。

たとえ落とせても損害が酷く出る、何か策が必要であった。


「ふむ、ならば出てくるように仕向ければ良かろう。海津城を一旦放置して南下する。

先に甲斐を落としてしまおうではないか?」

「しかし、それでは何処かで挟撃されることに・・・」

「ふりだ、南下すると知れば出てこざるおれまい。そこを討つ。

もし出てこなければ、そのまま甲斐を略奪して帰るだけだがな。」

「なるほど、お見事な策にございます。すぐに準備致しましょう。」

直江景綱は他の部隊にも連絡をまわし、海津城をおいて南下を始めた。



上杉の南下を矢倉から見ていた信繁は軍を出陣せざるにはいられなかった。

信繁が兵を集めて来た為に各所の守備は手薄になっている。

そんな所に上杉が侵攻してきたら・・・


「信繁様、今出ると・・・」

真田幸隆は出陣準備をしている信繁を止めようとするが、


「幸隆止めるな、上杉を通せば手薄な甲斐まで侵攻されてしまう。

その間にいる民達が略奪にあってしまうのだぞ!」

「しかし、この兵力差、籠城せねば戦えませぬ!」

「背後をつけば上杉といえど被害は免れまい、そして、すぐに城に戻る。

さすればこの海津城に釘付けに出来よう。」


真田幸隆は不安もあったが、事実素通りさせるわけにもいかず、出陣する。

ひと当てして、城に帰るそれだけのつもりであったのだが・・・


信繁が上杉に追い付いた時には、上杉軍は信繁の方を向いており、突撃態勢をとっていた。

「しまった!謀られたか!こうなれば仕方ない全軍突撃、武田の騎馬隊の力を見せよ!」

信繁は追撃の為に勢いをつけていた為にスムーズに退却はできないと判断し勢いのまま、突撃を敢行する。

被害を与える事が出来れば上杉は撤退するだろうと希望的観測も込めて・・・


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