第61話 井伊谷
岡崎も任された俺は慌ただしい日々を送っていた。
武田義信の解任は国内に多少の影響はあった。
廃嫡の噂もたち、家臣の動揺はおさまりきっていなかったが、武田信繁が周囲をなだめる事により少しずつ落ち着きを取り戻していた。
そんな中で、今川の謀略が明かされた。
家臣の多くが激怒し、今川侵攻が計画された。
史実と違い、北条が認めている事、
義信は既に監視下に置かれている事、
義信の周囲から今川の手の者を排除出来ていることにより、
史実と違い、謀反騒ぎにまではなっていないようだった。
そして、俺は飯田からマサムネを呼び出し、軍の編成を行っていた。
今川を東から攻める総大将を任された上に岡崎の防衛も行わないといけない状態となる。
俺は旧松平家臣を岡崎に配置して防衛に当たらせる。指揮官は渡辺守綱とした。
そして、三河の兵はすべて防衛に回した為に俺の手勢は飯田から呼び寄せた。
三河、信濃で新たに募兵も行い、千の兵を増やし、元の手勢と合わせ計ニ千にて今川を攻める。
「ニ千か、少し少なくないか?」
マサムネに指摘される。
「うう、わかってるけど、仕方ないんだ。今回は東から武田の本隊も来てるから牽制ぐらいかな。」
俺は武田の本隊が駿府侵攻を開始してから遠江に侵攻する。
今川氏真は駿府に家臣や兵を集める。
それもその筈、信玄の本隊は二万からなり、信玄の怒りが感じられる。
そして、先陣を勤めるは飯富虎昌、先日の義信の失態を挽回しようと鬼気迫る物があった。
その為に駿府に集中していた為に、俺はほぼ無人となっている遠江の城を簡単に落としていく。
しかも、遠江は今川の支配が弱いようだった。年老いた者は今川を憎んですらおり、俺達が近付くだけで開城する城もあった。
そんな中、井伊谷に近付いた時。
「武田の土御門殿とお見受け致す、参陣を許可願いたい!」
鎧姿の武者だが良く見ると女性であった。
「俺が土御門ヒロユキだが、貴方は?」
「申し遅れました、私は井伊谷の領主、井伊直虎、武田にお味方したく馳せ参じました。どうか御許可を!」
「御助力ありがたい、今後は良しなにお頼み申す。」
俺は井伊直虎を受け入れた。
その日の晩、ささやかながら祝宴を開く、
そんな中、マサムネが直虎に近付いて話している。
どうやら武芸の話で盛り上がっているようだった。
「直虎殿、此度の参陣ありがたく。」
俺は改めて挨拶に来た。
兵力の少ない俺達は味方についてくれた人に礼を尽くし、裏切られないようにしないといけない。
「はっ、神の使いと名高いヒロユキ様にそういってもらえるとは、誠にありがたき御言葉。」
「それは言い過ぎです。でも、御味方してくれた事は信玄公にもお伝えします。
ちゃんと領地の安堵も約束致しましょう。」
「ありがとうございます。」
「ところで井伊の当主はどなたでしょうか?」
俺は直虎に聞くと
「一応直親がついでおりますが・・・」
「それでは直親殿は?」
「今は駿府に行っております。」
直虎は言いにくそうに伝えてくる。
「そうですか、直虎殿が当主ですな、信玄公に伝えておきましょう。」
当主が今川にいるままだと他の家中から裏切り者扱いされかねない。
俺は少し大きな声で、井伊の当主は直虎と宣言する。
これにより、戦後、罰を受けることはないはずだ。
「御配慮ありがとうございます、あの御配慮ついでと申せば語弊が有るかも知れませぬが、次期の井伊の当主についても後見をお願い出来ませぬか?」
「わかった、次期が来たら教えてください、直虎殿の子でも、他の子でも口利き致しましょう。」
直虎のみならず井伊の家臣達も深く頭を下げる。
「ヒロユキ、堅い話はいいからお前も飲めよ。」
「マサムネ、飲みすぎるなよ。」
「これぐらいで、へばるかよ。」
「はぁ、直虎殿、迷惑じゃなければマサムネに付き合ってください。私は他にも挨拶に行かないと行けませぬので。」
「はい、わかりました。」
その後もマサムネと直虎は仲良く飲んでおり、二人の関係は翌朝まで続いた。
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