第52話 飯田の信豊
俺達は無事に飯田に着くことが出来た。
既に信玄に借りていた兵は小諸で信繁に渡して甲斐に帰国し、残りの飯田から連れてきていた兵も解散となる。
俺達は恩賞を各自に配り、一声ずつかけ、労をねぎらい解散とした。
「やっと帰ってきたか、ほら交代だ交代。」
城に入ると少し痩せた信豊が俺に指揮権を渡してくる。
「信豊どうしたの?」
「どうしたもこうしたもあるか、仕事が多すぎだろ!なんだ、この開墾計画は何でこんな速度で広がっていくんだよ、それに移住計画とか、戸籍の作成とか、町の区画整備とか!もう一杯だよ!」
信豊は資料を渡しながら文句も出してくる。
「おー全部やってくれたの?すげぇ~」
俺は資料を見ながら、上手く纏めている信豊に驚いていた。
「・・・まさか!」
「いや~さすが信豊くんだ。この調子で吉田も任せちゃおうかな?」
「止めてくれ!死んでしまうだろ!」
「いやいや、君なら出来るよ。しかし、凄いね、途中まで終わればいいと思っていたけど、ここまでしっかりやるなんて。」
「もうやらないからな!」
「なら、俺がこっちをやっておくから、代わりに戦場に行ってみる?」
「・・・お前の代わりが出来るわけないだろ?」
「出来るって、きっと!ちょっと行って1国落とすだけだから。」
「落ちねぇよ!」
「落ちたよ?」
「お前だけだ!!」
俺と信豊が話し合っていると、周りがハラハラして見ていた。
その視線に気付き俺は聞いてみる。
「あれ?業盛、綱秀どうしたの?」
「よ、よろしいのですか?信繁様の嫡男様にそれほどの口の聞き方で?」
「ダメなのかな?」
「控えた方が・・・」
綱秀に諭され敬語を使おうとすると・・・
「止めろよ、そんな気持ち悪いことするなよ。」
信豊は嫌そうな顔をしている。
だから、あえて話し方を変えてみた。
「若様、何を仰られるのですか?某、信繁様の一家臣として、当然の振る舞いをすべきと改心した次第でございます。」
「やめろ!鳥肌がたつじゃねぇか!しかも、それわざとだろ!嫌がらせじゃねぇか!」
「あら、ばれた?」
「ばれるわ!みんなも俺とヒロユキはこんな仲だから気にしないでくれ。」
「そうだよ、ちゃんと信繁様から斬っていいって許可も貰っているから。」
信豊は目を丸くする。
「いつそんな許可貰ったんだよ!」
「この前、小諸で会った時に話の流れから斬っていいって言われたよ。」
「どんな話の流れで斬っていいなんて言われるんだよ!」
「うーん、それはね・・・」
俺は信豊に信永が来ることを伝えた。
「なるほどね、確かに内政官は少ないな。
よし、こき使おう。」
「酷い兄だ、そこは兄として弟の分も働くところだろ?」
「俺は充分働いた、後は若い者の仕事だ。」
信豊は押し付ける気満タンであった。
しかし、ここまで内政が出来、纏めれる立場の男を楽させる気など俺にはなかった。
「うーん、でも、正直、飯田は信豊に任せるかも?」
「へっ?」
「ここまでしっかり出来るなら、問題ないし、軍はマサムネが鍛えるから、内務は信豊が仕切ってくれる?
信永は吉田に連れて行って、こき使う・・・もとい、働いて貰おうかな?」
「いや~~~!!」
信豊の悲鳴が飯田の城に響き渡る。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます