第46話 北条綱成に会う

「お見事ですな。」

そういって誉めてきたのは北条綱成だった。

彼は北条家随一の猛将でどうやら北の守りに配置されるようだった。


「綱成殿、上野を頼みます。」

「任せてくだされ、上杉が来ても防いでみせよう。」

北条の本気が感じられる人選であった。


その後、降った国人達と引き合わせて、俺達は引き上げ準備に入る。

とはいえ、既に粗方の準備は出来ているので、帰るだけなのだが・・・


「ヒロユキ殿、聞きたい事があるのですが。」

綱成がやって来て話をもちかけてくる。


「どうなされました?」

「ヒロユキ殿は何故沼田を落とさなかったのです?あなたならすぐに落とせるのでは?」

「それをすると、武田の中でも上野を渡したくない者の声が大きくなるからですね。

あの地は要所になりますから上杉の防衛に使えると考えれますからね。」

「それを言ってよいのですか?」

「どうでしょう?ただ手柄を立てすぎてるのも事実ですので、画竜点睛を欠くぐらいにしておきます。」

「変わった方だ、しかし、面白い。」

綱成は笑っていた。


空気が軽くなっていたので、俺は興味があることを聞いてみる。

「それより、綱成殿、川越夜戦について聞きたいのですが!」

「ああ、かまいませぬが・・・」

俺は綱成が参戦していた、歴史的戦の話を本人から聞くことに成功していた。

長話になったので食事も一緒にとりながらになったが俺は大満足であった。


「いや、綱成殿、見事な戦ですね。」

「いやいや、ヒロユキ殿の戦と比べれば私の闘い方など泥臭いものです。」

それから数日お互いを誉め合いながらも、戦談義を行っていた。

しまいには互いに今の関東の戦況ならどう動くかなど実践を想定した戦略、互いに兵を設定しての戦術なども話し合う。


俺が上杉、里見、佐竹の北条の有力な敵勢力となり、戦略を考え、綱成が防ぐ手をのべたりする。

机上の空論のぶつけ合いだが意外に楽しくいろんな手をのべてみた。


中でも三方同時攻めは今の北条には厳しそうだった。

実際連絡の不備や互いの思惑で全軍上げてくる筈がないのだが、もしそれが行われると防ぎきれないとの見解だった。


俺としても、綱成が述べる手は、この時代の名将の采配であり、学ぶ的点は多かった。

中でも局所戦、戦術については俺より明らかに深いものがあり、勉強になる。


そして、帰国の日。

「ヒロユキ殿、楽しかったですな、またいつでもお越しください。」

「綱成殿、私も楽しかったです、また話し合いましょう。」

綱成と俺は打ち解けていた。

年の離れた友人になった感じだった。


「さあ、ヒロユキ出立致せ。」

信玄は俺と綱成が打ち解けているのをハラハラしながら見ており、帰国の先陣は俺となり、明らかにさっさと帰れというのが伝わってきた、


「ヒロユキ、信玄の顔みたか?」

のんびり帰路についていたらマサムネが馬を寄せ話しかけてくる。


「うん、見たよ。明らかに綱成と引き離したそうだったね。」

「まあ、お前を北条にとられたくないだろうからな。」

「しかし、勉強になったよ、どうも俺は戦術が苦手なのがわかった。」

「お前自身に武力がないからな、戦術なら俺の方が上か?」


「お前は突撃しかないじゃないか!まあ、お前の武勇ならそれでもいけるんだろうけど。」

「何、俺達は二人で戦えばいいんだよ、二人なら綱成にも負けないだろ?」

「そうだな、頼りにしてるよ、相棒。」

「任せろ親友。」

俺達は仲良く馬を並べて帰路を進んでいた。



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