第47話 前原リク

俺達が帰路につき、信濃を進んでいると・・・

俺の前に一人の男が飛び出してきた。

「ヒロユキ様!」

周囲の兵が取り押さえる。


「このくせ者め!何処の手の者だ!」

「ち、ちがう!話を聞いてくれ!」

男は必死に叫ぶ。

「何が話だ!じっくりと聞いてやるから雇い主を吐け!」

「ちがう!ちがうんだ!おい、そこの2人、令和を知ってるだろ!バスだ、バスに乗っていた者だ!」

その言葉に俺とマサムネは気付いた、身なりはボロボロになっているが良くみるとシャツを着ているように見えた。


「離してやれ、話を聞く、此方に連れて来てくれ。

あと、少し早いけど休憩にする、

誰かこの者に水と食べ物を用意して。」

俺は話を聞くことにした。


「ありがとう、ありがとう。」

男は貪りつくように握り飯を頬張る。

男は食べ終わると話を始めた。


「俺は君たちと同じバスに乗っていた者なんだ・・・」

「確かに何人かいましたね。俺は土御門ヒロユキ、此方は立花マサムネ、バスを追わなかった者ですよ。」

「女の子と一緒にいた子だね、私は前原リク、28歳の会社員・・・いや元会社員かな。」

「たしか会社員の方は3人おられたと思いますが?」

「残りの2人は死んだよ・・・」

「これは失礼を、あれから何があったのですか?」

俺はリクにこれまでの事を聞く、


リクはバスを追いかけていたが、追い付いた頃にはバスは農民に囲まれて襲われていた。


リクの先輩だった、シンスケがリク達が止めるのも気にせず、農民に話を聞きに言ったが話しかけた瞬間、興奮した農民に叩きのめされ、身ぐるみを剥がされていた。


リクは残された同僚のツトムと共に必死に逃げた。

夜になり、携帯のライトを頼りにバスの所に戻るとそこには死んだシンスケの死体と、荒らされたバス、そして、運転手の姿があった。


それからは山に隠れ、何とか生き延びていた。

幸いツトムが山菜に詳しくて何とか食い繋いでいたが、冬の寒さと山菜が無くなった事での飢えによりツトムが病気になりそのまま無くなった。

ツトムがいなくなってからは町にいき乞食をして食い繋いでいたのだが、ふと噂話でヒロユキとマサムネの話を聞いた瞬間、現代人だと気付いた。


それなりに武将の名前を知っていたリクにしてはヒロユキやマサムネという武将は知らないし、この時点で徳川家康が死ぬなんてあり得ない。

そう思うと、何とか会って庇護してもらおうと機会を探していた。

そして、今に至る。


「なるほど、事情はわかりました。しかし、何故庇護してもらえると?」

「い、いや、現代人同士だろ?助けてくれないか?」

「名前も知らず、ほぼ初対面ですよね?」

「そ、そうなんだが・・・」

「まあ、いいですよ、ただ、俺達のグループの決定権は俺が持ってます、歳上だからと特別扱いは出来ませんし、リクさんにも働いてもらいますよ。」

「わ、わかった。君の指示に従うよ。」

「なら、俺達は今、飯田の城に向かっているのですが来ますか?」

「もちろんだとも。」

「じゃあついて来てくださいね。」

俺達は新たな仲間を加えて帰宅した。

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