戦国転移、修学旅行から川中島へ！

第44話 祝宴

「ヒロユキ、松山城も落とせないか？」

信玄にふと言われる。

「松山城ですか・・・たぶん、落とせますね。」

「まことか？」

「ええ、山もありますし、ただ一つ懸念があるとすれば、俺が手柄を立てすぎてることですね。

ここで俺が松山城の攻略すれば家中で買わなくていい恨みを買ってしまいます。」

「むっ、確かにそうであるが・・・」

「信玄公、力押しは止めて使者を出してみれば？現状を伝えてやれば降るのでは？」

信玄は考えてみる、確かに上野は落ち、周囲も北条傘下になっている。

此処で頑張っても時間の問題であろう。

「一理あるな、よし、使者を送ってみるか。」

「それなら、この手紙を見せてあげてください。」

「なんだそれは？」

「箕輪城に犬が運んできた、援軍要請の手紙です。」

「なんと、犬に手紙を運ばせていたのか！」

「そのようですね、まあ、箕輪城は既に落としてましたから、無駄になりましたが、彼等の心を折るのに丁度いいのでは？」

「うむ、やってみよう、しかし、お前の進言でやると言うことはお前の手柄だな？」

「あっ、今の無しで！」

「もう遅いわ、早く城を落として、帰るぞ。」

信玄は笑いながらも、降伏の使者を準備した。

ほどなく城は降伏を受け入れ、城は開城した。

「信玄殿、此度の援軍感謝致す。」

氏康は信玄を招き戦勝の祝宴を開いた。

「いや、これも北条殿の為でござる、我等武田と以後もよき付き合いをお頼み申す。」

「こちらこそよろしく願う。」

氏康と信玄は終始和やかな雰囲気で進められていく。

宴の途中で北条家家臣大道寺政繁が信玄にたずねてきた。

「信玄殿、これから上杉が攻めてくると思われるが如何にする所存か？」

「祝宴に無粋なやつだのぅ」

「政繁さがれ！」

氏康は顔を青くしつつ、政繁に下がるように言うが、

「下がりませぬ、信玄殿、武田は我等に上野を渡し上杉の盾にするつもりでございましょう！」

「それの何が悪い、それとも我等が関東に領土を増やしてもいいと言うことか？」

「それは・・・」

「何せ我が家には上野を瞬く間に落とした稀代の軍師がいるからな、上野において置けば勝手に領土を増やすであろう。

なぁヒロユキ。」

俺は信玄に話をふられた。

「えっ、そうですね、上野を渡さないなら戦略を変える必要はありますが・・・

約定を破る以上、北条殿のとはこれまでですか？」

「いや、そんな話しはしておらん！ヒロユキ殿は話を飛躍しすぎておる。」

政繁はあわてていた。

「しかし、約定を破ると言うことはそういうことでしょう？

北条は信義に厚いと聞いておりましたが間違いでしたかな？」

「政繁、謝罪をして下がれ、申し訳ない家臣の統率が出来ておりませなんだ、

悪い酒の上での発言として流してもらいたい。」

「よい、氏康殿に謝罪してもらったことであるしな、だが、皆にも伝えておく。

上野を北条に渡すのはワシも惜しいと思っておる。

しかし、関東の城を渡すという北条殿との約定を守っての事だ、これに不満があるのなら、相手にいう前にそれぞれしての主君である氏康殿かワシに言ってくるがよい。

よろしいか氏康殿。」

「寛大な配慮感謝致す。

信玄殿が申す通り、それぞれ思いがあろうがまずは主君に述べよ。

私は北条と武田は長きに渡る友好関係を築こうと思っておる。それを邪魔立てする真似は避けるように。」

「「ハハッ！」」

二人の当主の宣言に家臣一同平伏する。

おかしくなりかけた空気も再び和み出すが・・・

「ヒロユキ殿、上杉が来たらどう致しますか？」

俺に聞いてきたのは氏康の五男で14歳の若武者北条氏邦であった。

「えーと、氏邦殿でしたか？

まあ、来たらその時に対応しますよ。」

「しかし、近々来ると思いますが何か手を打っておられるのですか？」

「それまでに北条方に上野を渡して、帰国したいとは思ってますよ。」

氏邦は目を輝かせて聞いてくるが、戦略をこんなところで話す訳にもいかないし、そもそも、他家である北条に言う気もなかった。

「こら、氏邦！ヒロユキ殿に迷惑であろう。」

氏康は氏邦をしかる。

俺は氏康が謝ったり叱ったりと大変だなぁ～と眺める。

「しかし、私も気になるところですな、ヒロユキ殿、戦略の一端お教え願えませんか？」

氏康は頭を下げて教えを乞う。

「氏康殿、このような場所で話す話しでもないでしょう。それに武田と北条が軍を進めている今、上杉も来れないでしょう。

今のうちに防備を構えておけばよいのです。」

信玄は俺に助け船を出してくれる。

しかし、引き下がりそうにはなかった。

北条としては上杉の侵攻は脅威であり、策は多い方がいいのだろう。

気持ちはわかるので・・・

「すぐには来れませんよ、暫くは時がかかります。その間に固めてください。」

俺は少しだけ教えた・・・