第42話 辛垣落城
「さて、城を落としますか。」
俺達は日付が変わったら夜中、兵を集めていた。
「はっ、参りますか。」
兵達は静かに門に近付く。
そして、俺達が門に近付いた時、門が開く。
勿論門を開けたのは猿達だった。
此処は山の中、猿達の数に不足は全くなかった。
なので各所で猿が攻撃にも参加している。
寝ている兵に刃物で仕止めるから始まり、弓の弦を切ったり、矢を盗んで走り回ったりと自由に、暴れていた。
「ヒロユキ様、これは・・・」
あまりの城内の混乱振りに守綱ですら困惑する。
「いや~猿が張り切っちゃって、さあ、城を落とすよ。城主を押さえよう。」
守綱達は俺の声に従い城を進んでいく。
城兵達は進軍してきた俺達を相手にしている処ではなく・・・
「城主、三田綱秀殿ですか?」
「何者だ!」
「武田信繁が臣、土御門ヒロユキです。降伏してくれませんか?」
「な、何をバカな事を!出会え、誰かおらんのか!」
「既に城は押さえてあります。悪いようにはしませんので、降伏を。」
「くっ・・・」
「ヒロユキ様、三田殿の姫を捕まえました。」
正成が姫を捕まえて来た。
「笛!逃げたはずじゃ!」
綱秀は襲撃で門が破られているのに気付いた時点で家族で唯一生き残っていた娘を逃がそうと秘密の脱出路から逃がしていたのだが・・・
「伊賀の忍びから逃げれる訳がないですよ。さて、綱秀殿如何に?」
「・・・わかった降ろう、しかし、娘の身だけは保証してくれ、誰かの慰み物にしないでくれないか?」
「わかった、約束する。まあ、俺も幼気な少女が慰み物になる姿なんか見たくないからね。」
改めて笛を見ると13、4歳ぐらいの少女で肌が非常に白く、綺麗な顔立ちの美少女であった。
「成る程、綱秀殿が心配するのも仕方ないぐらいに綺麗だよね。」
「なっ、約束を破るつもりか!」
「破らないって、ただ綺麗だなって話だけ!たとえ信玄公に望まれても断るから。」
「本当でございますな?」
「ああ、約束する。」
俺は綱秀と笛の身を保証して今だ城内の者達に戦が終わった事を伝えた。
翌朝、日が昇る頃には信玄の元に帰る準備も完了していた。
俺は北条の本陣に向かうと氏照がいたので城は落とした事と本隊に帰陣する事を伝える。
「氏照殿、城は落としましたので、我等は信玄公の元に戻ります。後はお任せしても宜しいか?」
「えっ?ああ、任してくれ。」
「くれぐれも民に乱暴しないようお願い致します。」
「勿論だ戦が終われば、それはもう北条の民だ。」
「それなら結構、では出立致す!」
氏照が理解しきれていないうちに、
俺は帰って行った。
俺達が出立して暫くしてから氏政は起床してきた。
「氏照おはよう、どうやら寝すぎたようだな、さて、アヤツは何処だ?」
「帰ったよ・・・」
「なに?やはり口ほどにも無かったか、まさか戦いもせず逃げ帰るとは・・・」
「違うよ、城は昨晩の内に落としたようだよ・・・」
「へっ?」
「今、兵に確認しに行かせてるけど・・・」
氏照にしても信じられなかった。
昨晩城の方で少し騒ぎがあった事は報告を受けていたがまさか落城するまで攻めていたとは思いもしなかった。
「申し上げます。城の中は敵兵の姿もなく、空にございます。」
氏照は天を仰ぐ、同世代に英傑と呼べる程の男が現れた事、そして、父がその男と仲を取り持とうとしたのに仲違いをしてしまっている事。
そして、自分が苦労していた城をどうやって落としたのかすら解らない事を後悔していた。
願わくば、今一度仲を結ぶ機会が欲しかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます