第41話 不協和音と笛の音
俺は氏政と一緒に辛垣城を囲む氏照の元に向かっていた。
「ヒロユキ殿、如何に城を落とすつもりですか?」
氏政は千で落とせると言っていたヒロユキの戦略に興味を示していた。
「うーん、行ってみないとわからないけど、山城なら何とかなるよ。」
「無策なのにあのような事を言っていたのですか!」
氏政は無策で、父、氏康に大口を叩いていたヒロユキが信じられなかった、そして、不審を抱くようになる。
「まあ、何とでもなるから。」
ヒロユキは不審に思われていることに気付かず城に到着する。
「兄上、どうしたのですか?援軍に参られるとは?それに其方の方は?」
氏政は氏照に聞かれたので仕方なく答える、
「此方は武田の将で土御門ヒロユキ殿だ、一応援軍にきていただいた。」
明らかにめんどくさそうにヒロユキを紹介する。
氏照は氏政の表情からヒロユキを嫌っている事に気付くがあえて気付かぬフリをしてヒロユキを笑顔で迎える。
「そうですか、それは忝ない、見ての通りの山城で攻めあぐねておりましたから助かります。」
「お初にお目にかかります、武田信繁の臣、土御門ヒロユキと申します、以後お見知りおきを。」
氏照と挨拶が終わった途端、氏政は不機嫌そうに聞いてきた。
「して、どう落とすのだ、城に着いたぞ!」
「兄上、落ち着いてください、まだ、着いたばかりではないですか、今日はゆっくり休んでいただきましょう。」
氏照は兄の悪い癖が出たと思った、氏政は気に入った相手にはいいのだが少しでも気に入らないと尊大に振る舞う癖があった。
どうやらヒロユキは氏政の気にさわる事をしたんだと気付いた。
「・・・なら、明日にでも落とします、今日は流石に兵を休ませたいですからね。」
ここに来てヒロユキも嫌われていることに気付く。
ならば、作戦など伝える必要などない、勝手に落として帰ってやろうと考えていた。
「二人とも落ち着いてください、そのような事では軍議も行えないではないですか!」
氏照が間に入ろうとするが・・・
「そこの陪臣の輩が頭を地面に擦り付けて頼むなら聞いてやってもよい。」
氏政はヒロユキを見下していた。
「武田の臣たる、私を侮辱すると言うことですね、
そのような奴と話す事などありません。明日は指を咥えて見ているといい。」
俺はそう言うと氏政、氏照の前を後にした。
ヒロユキが去った後、氏照は氏政を叱る。
「兄上、何を考えているのですか!彼は北条の臣下ではないのです。
援軍に来ていただいている武田の臣なのですよ。怒らせてどうするのですか!」
「しかし、陪臣だぞ、北条の御曹司たる私が頭を下げるいわれなどないと思わぬか?」
「それでも礼に欠けます。いいですか明日顔を合わせたら必ず謝罪してください!」
「い、いやだ!何故私が謝罪する必要が!」
「いいですか!この失態を父上に伝えますよ!」
「うっ、それは・・・」
氏政も氏康の思惑には気付いていた。
しかし、感情的な所で受け入れる事ができていなかった。
しかし、父に伝えられるとお叱りを受けることは間違いない。
何せ仲良くさせる為に送り出したのに侮辱してしまっているのだから・・・
「わかった、明日合ったら謝罪をしよう・・・」
氏政は渋々承諾する。
俺は自分の陣に戻ると皆に伝える。
「明日の日付が変わったら夜襲にて城を落とす。」
「ヒロユキ様、いきなりですね。」
守綱は急な発言に驚く。
「どうやら氏政殿に嫌われているみたいだからな、これ以上溝を深める前にさっさと落として帰ろう。」
「して、如何にしますか?見る限り兵は少なそうですが城自体は堅固な城ですよ。」
「どんなに堅くても門が開いたら行けるだろ?正成、門が開いたら速攻押さえてくれ。守綱はその後攻め込んで城を確保、正し、非戦闘員への乱暴は厳禁とする。」
「はっ!」
「じゃあ、今日は夜襲に備えて早く寝よう。」
俺達は早めに寝ることにした。
兵達も先日の勝利の為にいまだ士気が高く、夜襲への意欲も抜群であった。
兵を休ませ、日が暮れる前に眠りについていた。
俺はふと目を覚まし、城を眺めていると風にのり綺麗な笛の音が聴こえてきた。
「へぇ~いい音だなぁ~」
俺は最後まで聞いたあと、寝床に戻り再度眠りに着いた。
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