第34話 同盟軍

4月に入り、武田は軍を出立させる。

1つはヒロユキ率いる五千の兵が信濃を通り上野へ。


もう1つは信玄自ら1万を率いて小田原を通り、松山城を目指していた。

そんな中、北条と合流した信玄は、北条氏康の元に来て会談していた。


「信玄殿、此度の援軍忝なく。」


「なに、氏康殿、三国同盟にて我等は家族も同然ではござらぬか、水臭い事は無しにしましょうぞ。」


「これは有難いお言葉、痛み入ります。

して、お本当に宜しいのですか?落とした城を譲っていただいても?」


「構いません、当家は関東に出る気はないからな。関東は北条家、氏康殿が治めれば良い。」


「ご配慮感謝致す、謝礼は充分にお支払致そう。」


氏康は頭を下げ、感謝を伝える。

だが、信玄にとっては北条に恩を売れて多額の予算が手に入る、一石二鳥の作戦であった。

更にその金で上洛を果たせるのなら・・・


そして、この戦でヒロユキから薦められていたのは乱取りの禁止である。

これは領地を拡大するにあたって、恨みを買わず、戦力化していくのに必要だと、説明を受けていた。


この戦は経費を北条にたかることが出来る。

これを機会に武田に乱取り禁止が根付けば今後の侵略に役に立つと。


信玄は青臭いと思いつつも、ヒロユキの才覚を認めていた。

もし、上洛する為なら、これぐらいは聞いてもいいだろうと、各兵に至るまで指示を出していた。


略奪せずに進軍する武田軍をみて、関東の民衆は驚いていた。

軍隊というのは略奪が付き物、当然進軍エリアの民は避難を余儀なくされるが武田軍は略奪をしない。

先日略奪の限りを行い、多くの民を奴隷として連れ去った上杉と比べて当然の如く、人気をあげていく。

氏康としてはあまりの人気に不安になるが、信玄は落とした城を北条に惜しみ無く渡していた為に次第に警戒を解く。

そして、信玄の行為に好意を持つようになっていた。

「信玄殿は今後の北条領の民を荒らすのを嫌っておられるのだな、それほど北条との同盟関係を重視しておられるようだ。」

氏康の勘違いも含めて、同盟関係は強固のものとなる。

ヒロユキの狙いは上杉への牽制とも知らず・・・


そして、連合軍は松山城を包囲することになる。

城代太田資正は籠城するが武田の人気のせいで士気が上がらない。

資正は上杉に援軍を求める使者を送ろうとするもすぐに捕まってしまう。

困った資正はかねてから用意していた1つの策を用いる。


犬による伝令であった。

箕輪城まで向かうように訓練した犬に書状をつけ三頭放つ、これにより敵の目を掻い潜り援軍に来てもらうのだ。


松山城の運命は三頭の犬に託された!




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