第33話 戦の前に

俺は躑躅が崎館に来ていた。

到着早々、信玄に呼び出しをくらい、面会する。

「よく来たな。此度の北条の手伝い戦、お主に一軍を任せようと思うが良いか。」


「はい、ありがたき幸せ。」

俺は頭を下げる。


「わかっておらぬようだの、お主に別動隊五千を預ける、好きに戦うがよい。」


「別動隊?もしかして好きに動いていいとの事ですか?」


「そうだ、お前は自由にさせた方が手柄を立てそうだからな。いいか多く城を落としてこい。」


「もしかして、落とした城が金になるのですか?」


「そうだ、北条に話したら乗り気でなら金でよいならいくらでも出すと言ってきたのだ。」


「それはなら信玄公はどのように動くのでしょうか?」

信玄は地図を指差しながら、説明する、


関東は武蔵を境に北条と上杉が勢力争いをしている所であった。

ただ、北条が少し追い込まれており、武蔵の拠点松山城をとられていた。


「ワシは北条と一緒に松山城に向かい攻略する予定だ。其処から関東の各城を落としていくつもりだが、ヒロユキには信濃から上野に入ってもらい城を落としてもらいたい。」


「わかりました。それで上杉の様子はどうなのでしょうか?」


「うむ、気になるか?」


「はい、上杉の強さは尋常ではありませんし、警戒するに越したことはないかと。」


「上杉は先月の2月まで関東に軍を進めていたが、現在は越後に帰った所よ。すぐに軍は起こせまい。」


「ならば、私の当面の相手は長野業正ということになりますね。」


「そうだな、奴は名将と聞く抜かるなよ。」


「はっ!肝に命じておきます。」

俺は信玄との面会を終え、マサムネや家臣達の元に向かう。


「マサムネ、みんな別動隊の指揮官になったぞ。」

「おお!おめでとうございます。」

家臣達は祝ってくれるが、


「ヒロユキ、責任重大だな。やれるのか?」

マサムネは心配してくれている。


「まあ、何とかするしかないだろう。

正成、伊賀者を上野に入れれるか?」


「お任せを、して任務は?」


「出陣前に噂を広く流して欲しい、武田が民を救う為に上野に来ると。」


「民を救うですか?」


「うん、上杉の奴隷狩りから義憤にかられた信玄公が軍を起こすと伝えてくれ。

あと、この手紙を吉田にいるユメちゃんに渡してもらえるかな?」


「かしこまりました。すぐに手配いたします。」


「兵は五千預かる事になる、マサムネ、兵が来たら訓練宜しく。」


「おう!」


俺達は出陣に向けて着々と準備をしていく。

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