第17話 松平軍の崩壊

武田軍と松平軍両軍は対峙していた。


松平軍。

松平元康。

「なんだ奴らは、川を背にするとは兵法を何も知らんのだな?大将は誰だ?」

「武田義信とかいう、信玄の嫡男ですな。」

石川数正が答える。

「なんと、信玄は息子の教育に失敗したと見えるな。よし、長坂信政に攻撃させよ、川に追い落とせ!」

元康の命令の元、攻撃が開始される。


武田軍。

「叔父上このような布陣で宜しいのですか?これだと・・・」

義信は言いにくそうに反対していた。

「大丈夫だ、これでいい。」

背水の陣の上に鶴翼の陣の為に兵が横に広がっており、本陣の前には飯富虎昌がいるだけだった。

「何、此処で松平を片付ける策だ、少々厳しいが我等武田軍が破られる訳がない。それより、右翼の多田と左翼の三枝を前進包囲させろ。」

義信は信繁の言葉に従い、

「わかりました、多田と三枝に連絡を松平を壊滅させる!」


そして、戦いが開始される。

松平の先陣、長坂信政が突撃を行う。

それを武田軍、飯富虎昌が対峙する、両者豪勇でならす将同士、互角の勝負をする。


しかし、多田と三枝が包み込んでくる。

それを多田には大久保忠世、三枝には大久保忠佐が受け止める。

精強でなる、武田軍を同じく精強といわれる三河兵が受け止める。

一時は互角の勝負をしていたが、武田軍は別動隊を抜いても九千、松平軍八千と数に違いがあり、徐々に松平軍は押されていく。


「くっ!流石武田軍、強いな!元忠!長坂の援護に向かえ、数正は忠佐の援護、守綱は忠世の援護に!」

元康は鳥居元忠、石川数正、渡辺守綱を各部隊の増援に向かわせる。


押されていた各部隊は一時持ち直す。だが、その分本陣が薄くなっていた。


そこにヒロユキ率いる別動隊が背後に回ることに成功していた。


「マサムネ!突撃だ!」

「おう!」

俺達はマサムネを先頭に松平軍の背後から突撃を行う。

全面に集中していた松平軍は此処に来て後ろからの攻撃に一気に崩れだす。


「信綱!マサムネの右側に出ろ!」

「お、おう!」

「信豊は左だ、攻撃を開始しろ!」

「わ、わかった!」

俺は指示をだす!

そして、松平軍は混乱状態が増す。


「ここだ、信綱!少し退け!」

「えっ?」

「早くしろ!」

「あ、ああ・・・全軍停止!少し下がるぞ!」

信綱が攻撃を緩めた事で、少し間が生まれる。其処らか松平軍は逃走を開始する。

「マサムネ!もっと突っ込め!」

「りょーかい!」

「信綱もう止めなくていい、再度攻撃だ!ただし、逃げ道を塞ぐな、少しだけあけておけ。」

「わかった!」

信綱が再度攻撃を開始した時には松平軍の兵は逃げることに集中していて戦おうとするものはいなかった。

皆が我先にと逃げだし、精強で知られた三河兵とは思えない姿だった。



「元康さまを逃がせ!」

元康の側近達は必死で元康を逃がそうとしていた、わずかに出来た逃げ道に兵が殺到して逃げ道は潰れている、それでも、なんとしてでも、逃がそうと仲間の兵士を斬ってでも突破しようとしていた。


「見苦しいな、潔く刀の錆びになれ!」

ついにマサムネが元康の元にたどりついた。

「元康さま、お逃げください!」

本多忠勝、本多忠真がマサムネに襲いかかる。


マサムネは2人を相手に、流石に足が止められた。

「やるな、二人とも。」

暫く、2人を相手に戦っていたが決着がつきそうになかった。


「お前も中々の腕だな!」

忠勝が基本的にマサムネとやりあっていた、

だが、まだ若い忠勝は体がまだ出来上がっておらず、マサムネとやりあうには少し力が足りていなかった。

だが、マサムネが力で忠勝の体勢を崩すと忠真が間に入り、止めをさせなかった。


「忠勝、お前は元康様の元に此処は俺が引き受ける。」

忠真はこのまま戦っても目の前の男に勝てない上、時間をかけると逃げることも出来なくなってしまう。

そう考え、甥の忠勝を逃がす事にした。


「叔父上!」

忠勝は忠真を見る。

「お前はまだ若い、元康様を助けて、松平家を頼む。」

忠真は逃がそうとするが・・・


「喋りすぎだ。」

マサムネは忠真に意識をとられていた忠勝を刺し殺す。


「ガハッ!お、おじ・う・え・・・」

忠勝は馬から落ちた・・・

「忠勝!貴様!何故忠勝を!」

「何を言ってる、対峙しているのに余所見して話しているのが悪いだろ?逃がす気など無いしな。」

「おのれ!武士の気持ちもわからぬ奴め!」

「知るか!さて、お前も首をおいていってもらおうか。」

「くっ!くそ!」

忠真は槍を繰り出すが・・・

マサムネは先に忠真を突き刺す。


「二人でかかってくれば、まだ戦えただろうに。」

マサムネは残念そうにこぼした。

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