第18話 岡崎確保

「ヒロユキ見事だ!元康を逃がしたとはいえ、松平家は終わりであろう。」

信繁は上機嫌だった。

「信繁さま、早く追撃を!せめて岡崎は確保しませんと!」

俺は慌てて、進言する。


「どうしたと言うのだ?そこまで急がずとも松平は攻め落とせるであろう。」

「織田が来るかもしれません。」

「何?」

「岡崎を織田に盗られれば、何の為に出兵したのかわからなくなります。何卒、私に追撃の許可を。」

「・・・わかった、信豊、信綱はそのままヒロユキに帯同するよう。本隊もすぐに向かう。無理はするなよ。」

「はい!」


「信綱さん、無理言ってすいません。」

俺は道中にあまり面識のなかった信綱に謝りに行った。


しかし、信綱は笑いながら。

「ヒロユキ殿、某に「さん」など水くさいですぞ、それに戦場では呼び捨てではなかったですか。

若い者同士遠慮の無い付き合いをしましょう。」

「信綱さ、いや、信綱、俺もヒロユキでいいから、今後もよろしく。」

「ヒロユキ、俺の方こそよろしく頼むよ。

なあ、今回の作戦、ヒロユキが書いた絵図なんだろ?凄いよな、一気に領地が広がったぞ。」

「書いた絵図というか、信繁様にちょっと進言したらこうなりました。」

「それでも、お前には見えていたんだろ?

その才覚が羨ましいよ。」

「信綱も凄い武勇じゃないか、俺なんて武勇なんてからっきしだぞ。」

「代わりに部下に猛将がいるじゃないか、今も先頭を走っているんだろ?」

「あいつは親友なんだ、どっちが上とか無いんだけど、まあ、あいつが負ける姿は想像出来ないかな?」

「いい組み合わせだよ、猛将と名軍師を手に入れた信繁さまが羨ましいよ。」

「まあ、素性のあやしい俺達を受け入れてくれたからね、部下にしてもらった以上、全力を尽くすさ。」


道中、信綱と話すことで仲は良くなっていく。



そうして、俺達は岡崎に向かった。

俺達の軍勢を見て、兵を失った元康は何処かに落ち延びたようだ。それっぽい一団がいたが間に合わなかった。

それより城を押える事を最優先とした。


そして、周囲に物見を走らせると、既に織田が刈谷城を押えて安祥城まで来ていた。


「危ないところだった、あと少しで岡崎も盗られる所だった。」

俺は安堵した。これにより三河の東は押えれる。

「しかし、信長の行動は早いな~いや、元康も逃げ足が早かったな・・・

やっぱり英傑は違うよな・・・なぁ、マサムネ、信長来てるかな?」

「そりゃ来てんじゃねぇか?」

「・・・なぁ、見に行かないか?」

「言うと思った、付き合うよ。」

「わるいねぇ~」

「こっそり行かれるよりはましだ、どうせ止めても行く気だろ?」

「もちろん、信長が好きな武将ナンバー1だもん。」

「それで最初尾張に行くと言ってたのか?」

「・・・それだけじゃないけど、それもある。」

「それで会ってどうするんだ?裏切るのか?」

「そんなことは出来ないよ。既に武田家に縁が出来てるしね。」

「俺はどっちでもいいが 、お前の行くところに着いて行くだけだしな。」

「マサムネも考えてくれていいんだよ。」

「面倒くさいからいやです。」

「マサムネー!」


俺とマサムネはその後、偵察と称して、軍を率いて安祥城に近付いて行く。

すると、安祥城からも兵が出てきた。

「何用か!」

出てきた兵の中で一番立派な鎧を着ている人が質問してくる。


「偵察です!誰がいるのか見に来ました。」

俺が返答を返す。

「くくく、ふざけた奴よ、特と見よ、我が織田信長だ。」

「これは信長公でしたか・・・」

会えた感動で言葉が出て来なかった。

「なんだ、ワシが答えたのだ、ソチも名を名乗らんか!」

「失礼を天下に名高い信長公に会えた喜びで、言葉が出ませんでした。

私は武田信繁が臣、土御門ヒロユキと申します。」

「ほう、その面構えで陪臣であるか?

どうだ、ワシに仕えんか?」

「ありがたい申し出ですが、既に仕える主を得てしまいました。」

「ワシの誘いを断るか。」

「申し訳ない。」

「・・・致し方ない。気が変わればいつでも来るがよい。」

「ありがたき御言葉。マサムネ、撤退するよ。」

「もういいのか?」

「おう、話せたし、長々話すのも疑われる元だからね。

では、信長公。これにて失礼します。

出来れば戦場で会いたくないですな。」

「そなたの主に伝えよ、こちらは同盟を結ぶ用意があるとな。」

「しかと、伝えます。では、失礼。」

俺はマサムネを連れて岡崎に戻った。

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