第13話 躑躅ヶ崎館

躑躅ヶ崎館に着くと信繁が待っていた。

「よく来たね、ヒロユキ。」

「信繁さま、お呼びと聞き参りました。」

「ヒロユキの考え通り、三河を攻める事になったよ。」

「少々早いのでは?」

「此処だけの話、冬の食い扶持を今川に持ってもらうのさ。」

「・・・なるほど、今川の援軍という形ですか。」

「おっ、よくわかったね。そうだよ、氏真殿が用意してくれる。」


「何処までやるつもりですか?」

「何処までとは?」


「松平を滅ぼすまでか、

期間一杯暴れて帰るか、

広げれるだけ領地を獲るかです。」


「広げれるだけ領地をとりたいな、少ないと維持は難しいが・・・」


「ならば、三河での乱取りを禁じる事は出来ませんか?」

「なに?乱取りの禁止?難しいかな、兵士はそれが目当ての者も多いし。」


「そうですか・・・仕方ないか。」

「一応聞いていいかい、何で乱取りを禁止するんだい?」

「今後の統治の為です。」

「統治の為?」


「信繁さまは略奪した相手を主君に出来ますか?」

「・・・なるほど、しかし、乱取りは世の常だよ、農民もわかっている筈。」


「わかっているのとやられるのは違います。そういった事が後日の弱みになると思うのです、今後領地を広げて行く為に、よく考えてもらいたいところです。」


「ほう、何やら偉そうに言っておるな。」


「兄上!」

「お館様!」

俺は頭を下げる。


「よい、それより話を聞こう。お主は三河をどう攻める。」


「それでは、机上の空論になりますが・・・

吉田城を落とし、そのまま岡崎を狙います。そして、包囲しているうちにこの奥三河から信濃までの道を確保します。もし岡崎が落ちなくても信濃までの道があれば落とした城の維持も何とかなるかと。」

「道中、各地にある城はどうする?」

「岡崎を囲んでいるうちに降伏を促すか、別途落としていけばいいかと。」


「なるほど・・・よし、お主に千の兵を預ける、好きに動かしてみるがよい。」

「えっ、ははっ、ありがたき幸せ。」

信玄は立ち去っていく。


「信繁様、今のは・・・」

「兄上もヒロユキの事を気に入ったようだね、いきなり千の兵を任せるとは。」

「だ、大丈夫かな?俺は兵士を指揮した事なんてないんですけど・・・」


「ははは、心配しなくても、ヒロユキにはマサムネがいるだろ、彼に任せれば千や二千、問題なく指揮をするさ。」

「そうでしょうか?アイツも指揮したことなんてないのですが?」

「心配ない、明日にでも千の兵士を訓練してもらおうか。」

信繁は楽観的だった。

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