第11話 信繁と信玄

躑躅ヶ崎館

信繁は信玄と対話していた。

「信繁よ、あのような者を城代に据えてよかったのか?」

「兄上、今は私を信じてくださいとしか言えませぬ。」

「うむ、ワシはお主を信じておるが・・・」

「ならば、今しばし時をいただきたい。彼は私と見えてる物が違います、必ずや武田家にいい影響を与えるでしょう。」

「わかった、暫し好きにするがよい。まあ、お主にやった領地だからのぅ、誰に任せるかはお主の裁量だ、それより、今川を攻めるなとは・・・」


「兄上、攻めるおつもりでしたか?」

「・・・確かに考えてはおった。北の長尾を倒すのは容易ではない、ならば弱っているところを狙うのは乱世の習わしよ。」


「兄上、ヒロユキが申す通りお考え直しを、北条が敵になるのは今の状況では・・・」

「わかっておる。いや、わかったが正しいな、して、三河を狙うとは・・・信繁どう思う?」

「悪くないかと、ただどうせならもう少し楽に行きましょう。」

「どういう事だ?」

「今川を救援すると言って、援助をさせるのです。そして、今川領内を抜け三河に攻め込む。

あそこは今、家督を継いだばかりで混乱してますからな、交渉次第では乗ってくるかと。」

「くくく、面白い、今川の銭で三河を獲るか!信繁やってみよ。」

「はっ!お任せあれ。」


信繁は自ら使者となり、駿府城に行き、今川氏真を説得しにいった。

「氏真様にはご機嫌麗しく。」

「信繁どの、よく参られた。この度武田が救援に来てくれるとの事だが、いきなりどういう話だ?」

「はい、先日義元公を失い、それに乗じて氏真様を認めぬ愚か者が多いことに、我が甥、義信が心を痛めておりまして、此度はその願いを叶えるために援軍を出しても良いという話にございます。」

「何と義信殿がそのような事を・・・さすがは義理の兄弟、いや、この氏真、感動してござる。

是非、お願いしたい。」

氏真が感動して涙を流している。

「わかりました。義信の気持ちを汲んでいただき感謝致します。

ただ甲斐は山奥にて米が少ないのです、恥ずかしながら、軍の糧食を今川家にお願い出来ないでしょうか?」

「もちろんだ、援軍に来ていただくのだ、糧食ぐらいは出させて貰わないと今川家の恥となる。」

「それは入らぬ心配でござったな。さすがは名門今川家ですな、」

氏真は感動して、簡単に引き受けたが信繁にとっては望み通りに叶ってホクホク顔で帰国した。

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