第7話 おとうと!
武田の陣に着くと・・・
「信繁!無事であったか!!御主が討ち取られたと聞いた時は気が気でなかったぞ!」
助けた武者より更に立派な鎧を着た武者が涙を流しながら駆け寄ってくる。
「兄上、心配かけました、何とか生きてはおりますが・・・腕を失ってしまいました。」
「な、なんと・・・しかし、御主が生きておることに変わりはない。よくぞ生きていてくれた。」
「それなのですが、そこの者達に命を救われました。どうか手厚い保護と恩賞を賜りたく。」
「何と、そなたたちよくぞ我が弟を助けてくれた。この信玄深く礼を言おう。」
「あ、ありがたき幸せ。」
俺とマサムネは頭を下げる。
「この場は戦場にて恩賞は甲斐に戻ってから充分に行う。皆、この者達に失礼がないように致せ。」
「はっ!」
「それですが兄上、私の側に置いておきたく。さすれば他との軋轢も少ないかと。」
「うむ、そうであるか、よし任した。信繁よ、御主は先に帰り怪我を癒せ。ワシは軍を纏めて帰らねばならぬので今しばし時がかかる。」
「はい、それでは先に甲斐に戻っております。兄上、お気をつけて。」
信玄は立ち去っていった。
「さて、改めて名乗ろう、私は甲斐の国主武田信玄の弟、武田信繁だ。
私の名前で君たちを保護するから、安心して休んでほしい。」
俺は事情を話す。
「ありがとうございます。しかし、私達には連れの者がおりまして、上田にてお別れ致したいのですが。」
「いや、それは困る。兄上も恩賞を与えたいだろうし、私もお礼がしたい。どうだろう、君たちの連れの者も保護するから連れてきては?」
「それが、女性がいるもので、陣中だと問題があるかと?」
「大丈夫だよ、私が率いる軍にそんな不埒者は出さない、それに君達は客人だ。丁重にお迎えするよ。」
「・・・わかりました、では、上田で一度会いに行ってきます。」
俺は信繁の誘いを断りきれず、合流する事となる。
「ヒロユキ殿、尾張に向かうのでは?」
盛清があきれている。
「はい、そのつもりでしたが、何の縁か信繁殿を助けてしまいまして。」
「しかし、どうなさるのですか?武田に仕官なさるのか?」
「それも1つの道かと考えております。信繁殿は人格者と伝わっておりますので、ユメが巫女ということを隠し、その前に自分の立場を上げれば何とかなるかと。」
「ふむ、確かにすぐに漏れる事は無いと思うが・・・」
「信玄に顔を知られた以上仕方ない道かと・・・」
「うむ、そうか・・・まあ、それなら戸隠の里も全力で支援が出来るしな、良いことなのか?」
「まあ、恩賞次第ですね。金をくれるだけかも知れませんし。」
「確かにそれはあるかもな。」
俺達は話合い、今後の事を考えていた。
上田から、甲斐に行く道中、信繁に呼ばれ、話し相手となる。
「ヒロユキ殿、これから武田はどうすべきと考える?」
「それは信玄公のお考え次第では?」
「なに、私は兄上の相談を受けることもあるからね、他の意見も聞いてみたいんだ。」
「しかし、私の意見など聞いても仕方ないで
しょう。」
「いや、聞くだけ聞かしてくれないかな?武田に属していない者の考えを聞いてみたい。」
「・・・それでは話しますが、受け入れられないとして、無礼打ちは勘弁してもらえますか?」
「約束するよ、というな話を聞いただけで斬ったりはしない。」
「ならば、お耳汚しかも知れませんが・・・
現在武田の敵というと越後の長尾だと思います。」
「そうだね。」
「しかし、打ち破るのは難しく思います。しかも、討ち滅ぼしても手に入るのは雪深い北の領地です。
それならば、長尾とは和睦して、三河か美濃どちらかに進攻するべきと思います。」
「して、ヒロユキ殿はどちらに?」
「・・・三河かと。」
「その心は?」
「武田家は現在北条、今川と三国同盟を結んでおられます。
今川を裏切り、独立した松平を滅ぼす事は間違った事ではない筈。」
「ふむ、一理あるな・・・されど、今川は如何にする?領地を囲まれれば不満もあろう。」
「今川が同盟を破棄するようならその時に滅ぼせば良いのです、甲斐と三河から挟み込めばいいのです。」
「だが、今川を先に潰したほうが楽ではないか?」
「それだと、同盟破棄が武田家になり、北条が敵となりかねません、長尾、北条、今川を同時に相手にしては勝てる物も勝てなくなります。」
「うむ、そうだな。いや、よく見えておる。機会があれば兄上に話してみよう。」
「はい、ただ、あくまでも机上の空論にございます、上手くいかぬ事も多いかと。」
「いや、そうであっても見事である。何、この話で責任をとれなんて言わないからな。方針の1つとして提示してみる。」
それからも、甲斐に向かう道中、色々な事を聞かれるのであった・・・
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