第4話 ユメの悩み
宴の間、浮かない顔をしていたユメに俺は。
「ユメちゃん、ちょっといいかな?」
「お兄ちゃん、どうしたの・・・」
俺を見る眼もどことなく怯えているようだった。
ユメを連れだし、二人きりになる。
「さっき、住職の話を聞いてから様子が変だからね。どうしたのかと?」
「お兄ちゃん・・・私のせいかな・・・この護符があるからお兄ちゃん達も巻き込んでこんなところに来ちゃったのかな?」
ユメは涙を浮かべていた。
「なんだ、そんなことを気にしてたの?確かにその護符はよくわからないけど、ユメちゃんが望んで来たわけじゃないし、俺達を巻き込みたかった訳でもないだろ?」
「・・・うん」
「なら、たとえ、その護符のせいでもそれは事故だよ。
ユメちゃんが悪いんじゃないよ。少なくとも俺はそう思ってる。
逆にその護符のお陰で庇護されそうだからね。感謝の方が大きいよ。」
「ホントに?」
「うん。それにユメちゃんみたいな子供が考え過ぎだよ。もっとお兄さんを頼りなさい。」
「いいの?」
「勿論、少なくとも現代に帰れるまでは俺がユメちゃんのお兄さんだ。妹は兄に迷惑かけるもんだろ?」
「迷惑はかけないけど、時々甘えてもいい?」
「いいよ、不安になったらいつでもおいで。」
「うん♪」
ユメの顔に笑顔が戻っていた。
「さて、宴に戻ろうか。遅いとみんなが寂しがったらいけないからね。」
「はーい。」
ユメは俺の手を握り、一緒に宴の会場に戻った。
会場に戻ると1人の男が待っていた。
「役巫女さま、お待ちもうしておりました。」
ユメは俺の後ろに隠れる。
「失礼ですがどなたですか?ユメが怖がっているようです。」
「失礼いたした。それがしは戸隠に身を置く、横谷左近と申します。役巫女さまをお迎えにあがりました。」
「ユメちゃん、敵じゃないみたいだよ。」
ユメは顔を少し出して、
「私達を助けてくれるの?」
「我等、戸隠一同、役巫女さまを御守いたす所存であります!」
「お願いします。」
ユメは頭を下げる。
「巫女さまが頭を下げる必要などありませぬ!さあ、お顔を上げてくださいませ。」
ユメは顔を上げるが俺の手を強く握った。
「左近殿、ユメちゃんは少々人見知りですので、多少の御無礼御許しください。今後の詳しい方針等は私が聞きますので。」
「貴殿は?」
「ユメちゃんの保護者です。」
「保護者というには実力がなさそうだが・・・」
左近は俺を威圧してくる。
威圧に気付き、マサムネが駆けてくる。
俺はマサムネを手で制止。
「腕前だけが全てでないでしょう。信頼を得れるかどうかですよ。」
「これは失礼した。平に御容赦を。」
「いえ、我々も世話になりますので互いの非礼は水に流していただけたら。」
「かしこまりました。して、今後はどう致す所存ですか?」
「そうですね、どうやらこの辺で大きな戦になりそうですので、出来れば避けたいかと。」
「それならば、我等の戸隠の里にお越しくださいませ。ここよりは安全かと。」
「それはこちらこそお願いしたい話でございます。是非よしなに。」
俺はその後、左近と話し合い、翌朝から戸隠の里に移動する事になった。
「みんな、勝手に決めてゴメン。」
マサムネは笑いながら。
「いや、俺はお前について行くから問題ないぞ。」
ミユキは俺の手を取って。
「私もヒロユキくんと一緒に行くよ。」
ユメは俺に抱きつきながら、
「私はお兄ちゃんと一緒だもん。」
俺達の仲間の同意を得たあと・・・
「海野さん、あなた方はどうしますか?」
「ふむ、私達も同行してかまわないだろうか?お寺に世話になり続ける事もできんじゃろうし、いろいろ考えてくれとるヒロユキくんに任せるよ。」
「わかりました。では、ここにいる全員で向かいましょう、左近殿が移動の為の手段を用意してくれるそうですので。明日はそれに頼る事になると思います。」
翌朝、
「住職、お世話になりました。」
「なんの、役巫女さまにお会い出来ただけでもわしらは幸せものじゃ、またいつでも来なさい。」
別れの挨拶をしたところで、左近が現れる。
「巫女さま、ヒロユキ殿、移動の準備が出来ております。ささ、お乗りください。」
そこには背負子を背負った屈強な男達がいた。
「あのこれは?」
「皆さんを運ぶ手段にございます。この辺りは山道なのでお年寄りや女性には辛いかと思いまして。」
「それはいいんだ、でも背負子の数、どう見ても俺の分もあるよね。」
「ヒロユキ殿は些か軟弱、もとい華奢ですので我等の移動に着いてこれないと思いまして。」
「うー」
「ヒロユキ、お言葉に甘えとけ、お前だと置いて行かれるだけだ。」
「マサムネ!」
俺はマサムネの言葉に従い、背負子に背負われ、戸隠の里にむかっ・・・運ばれた。
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