年度末と来学期に向けて

 原初神達が起きたり、村にある寺の坊さんが腰をヤってしまい、急遽親父と一緒に除夜の鐘を鳴らすことになった、スーパーハプニングがあったものの、なんとか平穏無事に年末年始を過ごすことが出来た。地球さんも生きてるからよかったよかった。


 そして今日から、再び首席として頑張らなければ!


「やあやあ貴明、小夜子。新年あけましておめでとう」


「あけましておめでとうございます佐伯お姉様!」


「ふふ。あけましておめでとう飛鳥」


 学園に向かっていると、佐伯お姉様とばったり会ったので新年挨拶をする。うーん。新年も変わらずカッコいいお姿だ。


「いやあ、年末年始はゆっくりできたよ。ありがとうね貴明」


「いえいえ!」


 俺が親父に頼んで行った、胃の剣に対する裏工作を知っているお姉様がお礼を言ってくれる。佐伯お姉様は日本に帰ってきてすぐ、俺の電話で親父にもお礼を言っていたが、大邪神と知って電話するとは流石としか言いようがない。胃の剣の所長が知ったらスカウトしに来るかもしれん。


 そして、俺達は日本で特に噂になっていない。


 なにせ、戦争ともいえるイギリス動乱で、呑気にスマホ片手に動画を撮影していたのは……まあ結構いたようだが、本当にヤバかった天文台付近や、“アーサー”達が駆け回っていたロンドン郊外の戦場は、民間人が完全に排除されていたので、皆の活躍は映像で残っていなかった。


 そのためイギリスで俺達は、見えなかったけど、多分白き竜を打ち倒したんだよね? なにやってたかさっぱり分からないけど、時空間を修復したんだよね? と、半信半疑の扱いなのだ。


 それを日本のメディアは嗅ぎつけていなかった。イギリスの動乱で花弁の壁とゾンビ共が活躍したのは間違いないが、メディアに注目されて悪目立ちしたり、勝手なところで騒ぎにされるのは全員がノーサンキューだからよかったよかった。


 ただまあ、ゾンビ達は実家の扱いを考えたら、有名になってもいいような気はするが、本人達がそれを面倒だと思ってるからな。厚化粧に至っては、マーリン扱いを断固拒否してるし。


 それと少し意外だったのは、橘家の名を高めたい橘お姉様も、今回の騒動後は目立つのを避けていることだ。どうやら、知る人ぞ知る橘家を目指しているのであって、実績以上の変に作られた虚像やアイドルは嫌なようだ。


「よう! イギリスの戦いはどうだったのか聞かせてくれよ!」


「西岡君、あけましておめでとう! 僕は直接見てなったけど、そりゃあ“アーサー”が凄かったみたいだよ! なんせ何人もいたからね!」


「ああくそ! 俺もいたかったなあ!」


 学園の敷地に入り教室へ向かっていると、西岡君に声を掛けられた。相変わらず武闘派らしく、大きな戦いに興味津々の様だ。クラスメイトは、俺達がイギリス旅行に行ったことを知っているので、今日は質問攻めにされるだろうな。


 ◆


「諸君、新年あけましておめでとう。またこの教室に、全員が無事に集まることが出来てなによりだ」


 あけましておめでとうございます学園長。日本の空港で、無事を確認するため出迎えてくれて以来……あれ、なんかやつれてませんか? どうやら年末年始は忙しくてゆっくりできなかったようですね。こういう時は……そうだ。新年会だ。忘年会は親父と原初神達の飲み会だったが、新年会なら呼べるだろう。


 いや駄目だ。親父は原初神達と飲みまくった後、痛風で呻いてたくせに、懲りずに年末年始も飲みまくったせいで、過去最大級の痛風の激痛で死んでる。残念だがゴリラを労わるための新年会はなしだな。


「来月の始めには期末試験だ。言うまでもないが、年末年始の気分と別れを告げ、気を抜かないように」


 いきなり嫌なこと言いますね学園長。ほら、クラスの全員がうげって顔してますよ。まあ、普通の大学も年始が始まったら、大概はいきなり期末試験だから仕方ないか。


「ああ、それとだが……」


 苦笑しながら言い淀むとは珍しいですね学園長。なにがありましたか?


「四年生が、卒業までに非鬼の蜘蛛を倒すのだと少々殺気立ってる。注意が必要かもしれん」


 おっと、四年の半裸達が、打倒蜘蛛君を目標に掲げて燃え上がっているようだ。とは言え、卒業は三月だから、もう殆ど時間は残されていない。それに、学生にやられるようでは非鬼ではないため、半裸達が勝つことは無理だろう。


 っつうか、一体いつからやってるんだ? まさかとは思うが四年の連中、年末年始返上で蜘蛛君と戦ってるんじゃないだろうな?


「期末試験の前には、推薦組の入学試験もある。そして最後には卒業式と慌ただしいが、普段通りの自分を維持するように。以上だ」


 出たよ。推薦組予定の生徒が入学前にやる、特にやる意味がない入学試験。名家出身なら基礎的な能力は保証されてるんだから、態々確認する必要……あるよな。百聞は一見に如かずなゾンビ共のことを考えたら尚更だ。当時の藤宮君も基礎四系統にそれぞれ適性がある、珍しい奴程度の認識だったし。


 そんなクラスの皆を差し置いて、首席になったのがなにを隠そう四葉貴明君なんだが!はっはっはっ!


 ……今思い出しても胃がいてえ。試験でドンケツなのをこれでもかと見せておいて、入学式じゃ新入生代表の首席として挨拶する羽目になったからな……。


 ま、まあ、今では俺が首席に相応しいことは皆が知ってるから大丈夫だろう!


 しかしそうか……ついに我が同士、佑真君と美羽ちゃんが入学する日が近づいてきているのか。


 西岡君がそわそわしているのは無視。



 後書き

 完全にひと段落終わったので、あと5話かそこらになると思いますが、年度末を書き終わったら、一旦ですが一年生編・完。ということにします。

 勿論、ハーレムタグさんには仕事してもらわないといけませんし、勝手に動き回る貴明なので、それほど長い間ではない筈w

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