百万文字記念 白き竜とアーサーと北大路友治 究極の敵と世界を守る者 そして父の嘘

 ルキフグスの企みの場面から、時間を元に戻すすすすすすす。


 天文台の周辺は修羅場だった。


「おいこれどうなってんだ!?」

「何をしたらいい!?」


 アーサーや天文台の職員が、時空間のほつれについて報告をすると、それに関係した希少な能力を持ち、特別な訓練を施されている者達が派遣された。しかし、そんな彼らでも歪みが大きくなりすぎている状況に慄いた。なにせ彼らの特殊な目で見るに、寧ろどうして時間軸が壊れていないのか分からない程、ぐちゃぐちゃだったのだ。


「緊急の応援に来たが何をすればいい!」


 また別の応援が直後にやって来た。

 彼らは単純に、悪魔が襲撃してきたり、不測の事態が起こった際の戦力として送られた者達だった。


「専門家は小さいほつれを直せ! 戦力はとにかくあの東洋人の女と、糸車を回してる男を何があろうと死んでも守ってくれ! いいか! 本当に死んでもだぞ! あの二人がいないと、冗談抜きにイギリスが恐竜時代に飛ばされても不思議じゃない!」


 天文台で勤務していた、これまた時空間に関する特殊な力を持った異能者が、唾を飛ばしながら大声で指示を出す。


 彼の視線の先には、四葉小夜子と木村太一の姿があった。


「面倒な……!」


 陰陽師は、天文学、暦学、時間の通知を生業としていた。その最高峰、ではなくまさしく頂点だった陰陽師、安倍晴明の力を持つ小夜子は、その知識と馬鹿げた霊力で、時空間のほつれを修復していく。そして陰陽師としての技量が必要なため、出力は上がるものの、力の種類が変質してしまう九尾になる選択肢をとれなかった。


「ぬああああ!」


 一方、太一は必死の形相で糸車をぐるぐると回している。現在、過去、未来を司るモイライ三姉妹の力が合わさった糸車を回して、なんとか現状維持を成し遂げていた。


(正直何やってるか半分も理解できないけど、とにかくこの二人が最重要なのは間違いない!)


 そんな二人を死んでも守れと言った天文台の職員だが、実のところ技術が高度すぎるため、殆ど理解できていなかった。しかし、それでも時空間の修復に、二人が欠かせないことだけは分かっていた。


 ◆


 そのギリギリの均衡が約二時間ほど続いたが、徐々にほつれの方が大きくなっていった。


「小さいのが開いた! 悪魔達が通って来るぞ!」


 小さな綻び全てをカバーできず、魔界や地獄といった場所に空間が繋がり、その隙間から悪魔達が現実世界に這い出てくる。


「【四力結界】!」


「【超力壁】!」


 悪魔達は、虹色と拒絶の壁に阻まれた。


(あれが若い学生くらいのが作った壁か!?)


 悪魔達は、折角現実世界に侵入できそうだったというのに、それを阻んだ壁を苛立たし気に攻撃するが、虹と拒絶はびくともしない。


 それを他の穴を塞ぎながら見ていたイギリスの異能者は、壁を展開したらしい雄一と勇気の技量に驚愕する。悪魔達がそれほど強力ではないとはいえ、広がった穴の向こうでは、十数体以上が犇めいていたのに、それを完全に遮断していた。


「【神移断花】」


『ギゲ!?』


 栞の声と共に、ほぼ理性を持たない悪魔達が驚愕する。防がれていない穴を見つけて、そこから侵入しようとしたのに、現実世界とあの世の境界を跨ごうとした途端、体がぴたりと止まってしまった。その背後には一本の橘の木が生えていた


 悪魔達が知る由もないが、栞の橘は現世と常世の道標と同時に楔なのだ。その楔が悪魔達の要る次元に打ち込まれ、彼らを現世に来られないよう縛り付けていた。


「一匹抜けて空へ飛んだ!」


「【飛行】! 【限定アイスジャベリン】!」


 それでも全てを防ぎきれず、隙間から羽の生えた小悪魔が空へと飛び立つが、飛鳥が空へと飛んで悪魔に追いつくと、市街地で許されるギリギリの出力で氷の魔法を放ち、悪魔を消滅させる。


(こいつら本当に外見通りの年齢か!?)


 扱いの難しい飛行魔法を瞬時に行使した飛鳥や、思い切りのよすぎる栞達をみたイギリスの異能者は、歳に見合わないと慄く。


「大きいのが来るけど通すわよ! こっちを塞がないと!」


「もっとヤバいの塞ぐから手伝ってええええ!」


(ヤ、ヤバい!)


 小夜子の発した世界共通語と言える力ある言葉と太一の声に、時空間を専門とする者達はゾッとした。


 二人の言うように、大きなナニカが二つも時空間を通り抜けようとしていたが、それを放っておかなければいかない程、ド級の捻じれが発生していた。


「おおおおおおおおおおおおお!」


 専門家達が渾身の力で最も危険な穴を塞いでいる横で、大きな二つのナニカの片方が、別の時空の隙間を通った。一方はそのまま天文台の近くの隙間に、もう片方は宿敵の気配を感じて、ロンドンの外に通じる隙間を通ったのだ。


 そのナニカこそ。


「し、白き竜……」


 イギリス異能者の誰かがポツリと呟いた。


 実際に見た者は殆どいないが、それでも誰だって分かる。蜥蜴のような蛇のような顔、強靭な四肢を持つ爬虫類の体。蝙蝠の様な翼。長い尾。それが10メートル以上の巨躯を持つのだから、ドラゴンなのは間違いない。だが体表が真っ白なら、答えは一つ。まさしくイギリスの宿敵。


 無音で現れかけているそれこそが、アーサー王とコンスタンティンに打ち破られた筈の、世界を漂白する白き竜だ。時空間が捻じれすぎて、ついには白き竜が生きていた頃と繋がってしまっていた。


 もし完全に実体化すれば、世界は全てを塗りつぶす白に溢れ、最終的に消滅してしまうだろう。


 完全に現れることが出来たなら、だ。コンスタンティンが悪魔の変身を待つ訳が無いように、敵の準備が出来ていないなら、喜んで仕留めるのが戦闘者達だった。


「師匠!」


「もう切り札は切って使えん」


 白き竜を討伐した実績のあるコンスタンティンに、弟子の先代が叫ぶ。しかし、コンスタンティンは既に切り札を切ってしまっており、現状での再使用は困難だった。


「それにお前の弟子が、今代の“アーサー”がやろうとしてるんだ。見守ってやれ」


 師の言葉に先代は、己の弟子を探す。すぐに見つかった。


 エクスカリバーの所持者である今代は、誰よりも早く白き竜に駆けていた。


『白き竜が出てくるなんてね! でも生憎だけど私がいるのよ!』


 エクスカリバーが叫ぶ。


 エクスカリバーは、まだ貴明が白き竜の消滅を知らなかった頃に生み出され故に、必要だと思って詰め込まれていた。


『三度の予言の再現は今! やるわよアーサー!』


「ああ!」


 マーリンが予言した、コーンウォールの猪、アーサー王が白き竜を踏み潰して勝利するという概念を。


 そして、二度目の予言の成就を成し遂げたコンスタンティンが、異能学園で宣言した言葉を借りて、貴明が名付けたその権能こそが。


「『アーサーが竜に負けることアーサー王伝説などない!』」


 桃太郎の一億数千万の思いを凌ぐどころか、下手をすれば数十億を超える、エクスカリバーとアーサーの概念。それに加えて、勝利した事実を押し付け、問答無用で白き竜を抹消する消滅の力だった。


 そんなものを個の存在が受けて、耐えられる筈がない。まだ現れかけている、不完全な白き竜なら尚更だ。


 陽炎の白き竜にエクスカリバーが触れた途端、白き竜はあっけなく霧散して消滅した。


 それと同時に、ロンドンの結界内に現れようとしていた白き竜も消滅する。


 数百、あるいは数千の拳を一瞬で叩き込まれて。


「【祓い給い清め給い】【祓い給い清め給い】【祓い給い清め給い】【祓い給い清め給い】【祓い給い清め給い】」


 約二時間。北大路友治は、東郷小百合のバフを受け続け、更に彼は、異能学園にイギリス校がやって来てから、なんとかコンディションを保ち続けて今に至る。そして常人ならば、一歩踏み出すつもりが時速100㎞で走り出すような、認識と肉体が全く合致しない状態となる筈なのに、友治はそれを完璧に制御していた。


 それを僅か一秒未満の全力に凝縮。


 結果。


 友治はこの世界の肉体的到達者達による、人類最高到達点を塗り替えるどころか、人が至ってはいけない領域に軽々と足を踏み入れた。


 そして時空間がねじ曲がっていたからこそ、物理現象をほんの少しだけ無視した友治は、周囲に衝撃波をまき散らすことなく、本当に一瞬としか表現できない速度で、白き竜に近づいた。


 その刹那。白き竜の頭から尻尾まで満遍なく、極限まで握りしめた拳と、限界を振り絞った膂力で叩きつけた。


「あ?」


「ぷ、プロテインを……」


 余人が認識できたのは、消えゆく白き竜と、全てを燃焼して千以上の拳を叩きつけ終え、彼ら視点ではなぜか地面に転がった友治だけだった。


 そして最も重要な小夜子と太一は、なんとか危険な穴を塞ぎ終えたが、この二人だからこそ見えた。


(あなた!)


(あかああああああああん! 全次元で一番ヤバいレベルのどっかが一瞬見えてしもうた!)


 最も遠くにある次元の光景。


 異なる世界を覆い、地球なら成層圏すらぶち抜くほど巨大な、究極の黒い人型と、究極の白い人型の決着を。


 「終わったかしらね」


 「はいユウコさん」


 悪魔達と死闘を繰り広げていたアーサーと優子も足を止める。時空間の捻じれは、白き竜達が打ち倒されると同時に元に戻っていった。


 それが、ロンドンで起こった騒動の最後だった。


 ◆

 

 時間を巻き戻すすすすすすすすすすs

 

 ◆ 


 次元がぐにゃりと歪む。


 蛇と鰐、もしくは鰐のような蛇が対峙する。


 その圧に耐えきれず、至る所で霊的な雷が轟き世界を揺るがす。


 真っ赤な花が咲き誇る大地の上で、八つの峰を跨ぐ途方もない巨体が、天にまで届く八本の首が伸ばし、絶死の殺意を叩きつける。


 首の名は


 メドゥーサ宝石の目

 ウロボロス永遠

 バジリスク

 アジ・ダハーカ千の魔法

 八岐大蛇日ノ本最強

 ヒュドラ不死身

 ニーズヘッグ怒りて臥す者

 サタン神の敵


 一方、その赤い大地を境にして広がる海から、それが身を現わしていた。


 世界を守る蛇に匹敵する長い胴体をくねらせ、ねじ曲がった角からは邪悪な霊力が迸り、口からは暗黒の煙が漏れ出している。そして鱗はありとあらゆる攻撃を弾き、世界の終末まで死なぬことを約束された無敵の存在。究極の生物リヴァイアサン。


 人の世界であってはならない程、強大な蛇と鰐がにらみ合い、殺意が具現化したかのように、その中間で放電が起きる。


 一転。


『ジャアアアアアアアaaaaaaaaaaaaaa!』


 蛇はヴリトラとアポピスの首を即座に生やして、合わせて十の頭が各々配置につく。


    物質主義10i.キムラヌート

    

    不安定9i.アィーアツブス

貪欲8i.ケムダー      色欲7i.ツァーカム

     醜悪6i.カイツール

無感動4i.アディシェス     残酷5i.アクゼリュス


愚鈍2i.エーイーリー     拒絶3i.シェリダー

     無神論1i.バチカル

 

これ即ち、生命の樹であるセフィロトと真逆。邪悪の樹であるクリフォト図。


『ジャアアアアアアアアアアアアアア!』


 クリフォトから邪な文字と文様が溢れ、蛇の口全てで極限まで圧縮された霊力が、その悪徳の“座”から放たれた。


『GIAAAAAAAAAAAA!』


 リヴァイアサンも負けていない。突き出た牙の隙間から、ドス黒く濁った青の霊力をゴボゴボと漏らすと、そのまま蛇めがけて一直線に放出した。


 極光と青の奔流が衝突する。


 蛇とリヴァイアサンの全身に筋が浮かび上がり、渾身の必殺同士がせめぎ合う。近くに人間がいれば、その衝撃だけで体はバラバラになり、遠くにいても、奏でられるこの世のものとは思えない不協和音で精神を狂わされるだろう。


 だがその均衡も徐々に崩れていく。青の奔流が押され、少しずつ、少しずつ邪悪な極光がリヴァイアサンに近づき、そして。


『GI!?』


 リヴァイアサンの長い胴に直撃した。


 だが……蛇は舌打ちをしたかった。


『GIIIIIIIIIII!』


 リヴァイアサン健在。どころかその鱗には傷一つなく、全くの無傷で体をしならせ、蛇に巻き付こうと突進してくる。


 あらゆるものを弾く鱗と、世界の終末まで死ぬことが無い概念が合わさって、リヴァイアサンそのものが究極の盾となっているのだ。


『ジジャアアアアアアアアアアアアアアアアアア!』


 蛇はリヴァイアサンを迎え撃つため、前方に展開していたクリフォト図を背後に展開して、己の霊基を接近戦に最適化する。蛇の鱗は漆黒に染まって硬化し、クリフォト図は後光のように黒い紫電をまき散らす。


 世界を揺るがす者達が直接ぶつかり合う。


 比喩ではない。両者の激突は閉ざされた世界を揺るがし、破壊ではなく破界にまで至る寸前だ。


『GIIIIIIIIIIGIGIGIGIGI!』


 リヴァイアサンは蛇を絞め殺す為、その長い長い胴で巻き付き、頭は天に位置して蛇を見下す。


『ギジャアアアアアアアアアアア!』


 一方、巻き付かれた蛇の鱗はびくともしていなかったが、それと同時に危険を感じた。この蛇は捻くれ者が生み出しただけあり、首が由来の土地にいる場合、その地の異能でしか傷つかないという権能を持つ。例えば蛇が日本で現れたなら、八岐大蛇の首には日本の神話体系しか通用しないのだ。


 そしてもう一つ。


 隠された権能として、指定した神話体系の一つの攻撃を受け付けないというものがある。これらは世界の敵の仮想敵として、無理矢理人類の手を握らせる為の仕掛けだが、それがリヴァイアサンに通用していなかった。


 考えられることは、リヴァイアサンが一神教の神話体系から逸脱しているか、蛇の権能すら上回るナニカを秘めているかだ。


 その両方に心当たりがある蛇は、セーフティーの全解除を急ぐ。


 貴明の眷属で唯一蛇だけが、セーフティーを設けられていた。理由は簡単。強すぎるからだ。他の眷属達とは違い、完全に一から作り上げられた蛇は、徹底的に戦闘用に調整された上に、場合によってはどんな存在でも打ち倒すことが使命としている。


 それ故に。


 極光を放って以来、自らの尾を食むウロボロスの、“無限”の目が怪しく光る。


 再生と不死、永遠の象徴である蛇の中にあって、なお無限の頭を持っているのだから、貴明がセーフティーを設けたのは必然だった。


 勿論、言葉遊びの域を出ていない。出てはいないが、ちっぽけな人間なら無限と評するような力を持っていた。


『ジャアアアアアアアアア!』


 蛇がリヴァイアサンに噛みつくが、鱗を貫通するどころか、まさしく歯が立たない。


『GIIIIIIIIII!』


 逆にリヴァイアサンは更に蛇を締め上げ、同格とも言われている不遜なサタンの首に食らいつくと、黒い鱗にひびを入れてしまう。それを止めるため、ウロボロス以外の全ての蛇が、自らを見下ろすリヴァイアサンに噛みつくが、やはりびくともしない。


 蛇は確信した。現状で許される全ての権能を全力で行使して、リヴァイアサンを弱体化させようとしているのに全く効果が無く、そして無敵の概念があろうといくらなんでも硬すぎる。


 それ故に、のほんの僅かな力が、リヴァイアサンを更に強大にしてしまっているのだと確信した。


 だが、それもこれで終わる。


 蛇が全てのセーフティーを解除し終えた。


『GI!?』


 リヴァイアサンは驚愕した。これでもかと締め上げていた巨大な蛇が、唐突に細長くも単なる蛇となって、己の体を抜け出したのだ。


 その細長い蛇が天に上る。天に位置した蛇が、円ではなく∞の形となり……。


 リヴァイアサンは見た。見てしまった。


 世界の敵の仮想敵として、この世のありとあらゆる蛇の概念を詰め込まれながら、なお世界を、人の世を、人類を守る者であれと願い願われた、究極の祈りが行きついた果てを。七と十の葉を用いられた奇跡を。


 生える、生える、生える。∞の蛇を起点として首が生える。


 ラードーン、ズメイ、九頭竜、エキドナ、ファフニール、タラスク、テュポーン、ムシュフシュ、リンドブルム、ヴィーヴル、ガルグイユ、ミドガルズオルム、その別名ヨルムンガンドも。


 神話で語られる、蛇の因子と概念を持つ者達の首が。


 それだけではない。


 機械の首やカラフルな見た目など、神話ではなく近代の人の創作が生み出した蛇すら生える。


 しかも、リヴァイアサンの首すら中には含まれているではないか。


 一が八に、八が百に、百が千に、千が万に。限りなく無限へ。


 ありとあらゆる蛇の首が、閉じられた世界に伸びる。


 蛇が天地を覆った。埋めた。溢れた。


 これこそが、人類には対処できない超越存在、もしくは外宇宙からやって来る敵性存在を真正面から相手取り、粉砕し、打ち砕き、そして77億の人類と那由他の命溢れる地球を守る、最後の保険にして切り札。


 “世界を守る者”の全力だった。


 その全ての蛇の口から、溢れてはいけない極光が灯る。


 遥か、遥か先の未来、外宇宙からやって来た、万を超す敵性宇宙人の艦隊を吹き飛ばし、忘れられた地球が再発見されるきっかけとなったソレ。


『■!』


 万物を消滅させ、宙を裂いた光が世界を塗りつぶした。


 放たれた光はリヴァイアサンよりもさらに巨大。それが一瞬で着弾すると、ほんの僅かな抵抗すら許さずリヴァイアサンを光に変えながら突き抜け、果てのない閉ざされた世界をどこまでも進み……そして消えていった。


『ジャァァァ……』


 蛇が光りを放ち終えても、圧縮しすぎた霊力が物質化してしまい、輝く光の玉となって辺りを舞う。それはまるで、蛇の勝利を祝福しているかのようだったが、本懐を遂げた筈の蛇に喜びはない。それどころか、蛇なのに苦虫を潰したような表情だった。


 四葉貴明がアレに勝利せねば、全てが滅びてしまうのだから。


 ◆


 時間を動乱直前に巻き戻すすすすすsgwa0p1opa。




 リヴァイアサンは究極の敵ではなかった。




 騒動直前。


 ◆四葉貴明


 さあて今日は観光最終日!


 ん? なんだ混線したな?


 ArthurアーサーArtoriusuアルトリウスAmbrosiusアンブロシウスAurelianusアウレリアスAzathothアザトースうううう?


 そんな無茶な。アーサー王に関連する名前に、アザトースを連ねて貶め、アーサーの概念を弱体化させようとしてるみたいだが、綴りも語尾も滅茶苦茶じゃん。そんなの上手くいく分けねえし。


 どこでやってんだよ?


 ああストーンヘンジね。アーサー王本人とは関係ないけど、アーサー王伝説で形として残ってる場所だ、か……ら……。


 ……ま、待てよ?


 転移発動!


 マズいマズいマズいマズい! だがあり得るのか!? いや、ともなく何としてでも止めなければ!


 ルキフグスの野郎! 出し抜いたつもりだろうが、自分が何を招いてるか全く気が付いてねえ!


 そ、そこで、イギリスで! ストーンヘンジで! 虚無神の! 邪神の名を讃えるな!


 太陽の沈まない国で、そこは太陽と石の位置が合わさってる場所なのに!


 世界で最も有名な天文台がある国で、そこは古代人が星を観測した場所なのに!


 世界で最も有名な時計台と本初子午線がある国で、そこは宙の歴という時間を計算した場所なのに!


 全部揃ってしまうんだぞ!


 混線したのを辿り、転移でストーンヘンジに着いた!


「ん?」


「【死ね】!」


 ルキフグス達を呪殺で即死させる!


 だが……ストーンヘンジの中心、その遥か上空にあった。


「くそったれがあああああアアア! 第三形態変身んんんンンンン!」


 第一形態の注連縄が解け、第二形態の藁人形の化身となり、その藁の隙間から、真っ赤な真っ赤な真っ赤な花が咲き誇る。


 赤い花弁が、彼岸花が花開く。


「蛇君そっちは任せた!」


 リヴァイアサンが現れる寸前だが、そっちに構ってる暇はねえ! 隔離世界にリヴァイアサンを叩きこみ、そこへ蛇君を送り込む!


「【彼岸招き】!」


 そしてこっちを俺ごと隔離する!


 ここは全てが赤き彼岸花の咲き誇る世界。


 体中から彼岸花が花開く人型。地獄を運営する権限を扱えるのもこれの派生。俺の中に存在する常世を展開して、相手を問答無用で即死させ地獄に叩き込む、いわば彼岸世界そのものが、我が第三形態“リコリス”の力!


 だが駄目だ! 無抵抗だから何とか隔離できたが、存在の格が大きすぎて死を押し付けられない!


「親父いいいいいいいいいいいいいいいいい!」


 親父を呼ぶが返事が無い! 招いたのがルキフグスの契約者という人間だから、アレには不干渉のつもりだ!


 人間では認識できない力の渦。四つの概念の塊。バラバラに蠢きながら一塊となっているアレ!


 ガス灯! 星の夜空! 時計! 真っ白な空間!


 これで親父の嘘がはっきりした! 親父は異世界帰りの邪神じゃねえ!


 異世界を行き帰りしただ!


 そうでなければ、異世界の星の海に還った筈のアレが、ここにいることの説明ができない! アレは星の海という、親父に還ったんだ!


 そしてルキフグスが、親父から偶然招いてしまった!


 “火”も“宙”も“時間”も“無”も!


 あれは! ほんの一欠けらだろうが地球を消去できる


 原初神の力の集合体だ!



 

 後書き


 じ つは百万文字書いてました……。

 つ い昨日のことのように思えますが、一年半ちょっと書いてることになります。

 は ずかしい作品ですが、皆様に楽しんでいただけていれば幸いです。

 う んうん唸りながらなんとか文字数と話を合わせることが出来ました。

 そ れでは皆さん、一年生編のラスボス行ってみましょう!


 一回作品タイトル変えてますが、それでも百万文字にわたる作者の嘘にお付き合いいただき誠にありがとうございます。

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