チーム【クリフォト】

 我がクラスは30人。西岡君のチームが10人で、ここは元々集団戦部門に出る。南条君達一族主義者の10人は個人個人のスタンスで集団戦なんか出るわけがない。なら残りの10人に声をかけるしかない。


「という訳なんです」


「なんとまあ事務員のミスとはねえ。まあでも忙しかったみたいだから仕方ないのかね?」


「聞いた話だが電話ノイローゼになり掛けてたみたいだな」


 呆れたように肩を竦める佐伯お姉様と、惨状を知っていたらしい藤宮君チャンピオン。そうだよね。忙しかったみたいだから仕方ないよね。うんうん。


「私は問題ないわ」


 橘お姉様ならそういうと思っていた。準決勝で佐伯お姉様とジャンヌダルクが引き分けたため、第3位という素晴らしい結果に終わっても、目指すは頂点ただ一つなのだ。結成されるかもしれないチームなら十分勝機はあるだろう……ありすぎるかもだが……。


「ふっ二冠に輝くのも悪くない」


「お、言うねえ藤宮君。じゃあボクも出るとしようか」


 藤宮君のふてぶてしい笑みと、佐伯お姉様のかっこいい笑みが帰ってきた。


「ぷぷぷぷぷぷぷぷ」


 お姉様は当然プリティあいてっ。でへへ。


 よーしなら後はあいつらだ!


 ◆


「いいだろう。藤宮とアーサーのマッスル溢れる戦いを見て、俺の筋肉も動きたがっている」


 まずは実質的に馬鹿のリーダーを務めるマッスルに話をする。持ってるダンベルは無視だ。


「晩御飯までには帰ってくるように」


「はい翼先輩」


 ちょっと待て。マッスルと一緒にいた中性先輩こと堕天使天使こと翼先輩だが、今なんて? 晩御飯までには帰ってくるように? どゆこと? って言うか中性先輩の体のラインに違和感あるんだけど。なんか記憶と違くね?


「ぷぷぷぷぷぷぷ」


「では行こう」


「う、うんそうだね!」


 よく分からんが俺の体から呪力が溢れそうだ。


 ◆


「ちょっと待って。チラシを確認するから」


「あっはい」


 次に声を掛けたのは、四馬鹿の元紅一点こと厚化粧だ。


 なのだがこの大阪のおばはん、どっかのチラシを広げてなにかを確認をしている。


「特に欲しいのはないわね。いいわよ」


「あ、ありがとう如月さん!」


「ぷぷぷぷぷぷ」


 この厚化粧、まさか世界異能大会の出場と、スーパーの特売を天秤にかけたのか? なに? 欲しいのがあったらそっちを優先して買いに行ったの? 馬鹿なの?


 まあいい。これで残りの馬鹿は3人、じゃなかった。2人と東郷さんだ。東郷さんに馬鹿達と一緒に纏めていたと知られたら、俺っち浄化されてしまうな。


 しかし東郷さんか……。


 ◆


「俺は別にいいぞ」


 快諾してくれた狭間君。


 それで、だ。


「え……注目されるとか……その……」


 全く乗り気じゃない清楚美人東郷さん。


 やっぱり。東郷さんが一番渋ると思ったんだよな。味噌っかす扱いされて注目されるのに慣れてない彼女は、大勢の観客の前で戦うことに忌避感を持っているようだ。


 仕方ない。無理強いは良くないな。うんうん。


「佐伯お姉様も、橘お姉様も、藤宮君も、北大路君も、如月さんも、お姉様も、僕も出るけどなあ。それに今狭間君。これで東郷さんが出るなら完璧なんだけどなあ」


 だから単なる事実を教えてあげることにした。なんて親切。


「え!? 皆出るの!? じゃ、じゃあ出ようかな?」


 戸惑ったように了承する東郷さん。


 勝った。敗北を知りたい。船から避難する日本人には、皆飛び込んでますよと言うのが一番なのはまさに真理だった。


「それじゃあまた後で集合しよう!」


「りょうかーい」


「ひょっとして……流された?」


 軽く手を振る狭間君と、冷静になり始めた東郷さんと分かれる。


 ◆


「え? ワイはみんなの応援せなあかんから無理やで」


 言うと思った。いや確信していた。最後のメンバーはこの数日で単なるチャラ男から、真チャラ男にグレードダウンした木村太一だが、真チャラ男らしくどうやら集団戦にも出るらしいモイライ三姉妹の応援をするつもりのようだ。


 だがこいつには必殺技がある。


「彼女さん達にカッコいい所見せたくない?」


「え?」


 え? とかいう割には耳がぴくぴくしたな。ちょろいわ。


「応援は試合に出てないときにできるし、彼女さん達も木村君のカッコいい所見たいと思うなあ」


「そ、そうかな?」


 そこはせやろか? だろうが似非関西弁!


「それにラケシスさんが言ってたけど、新婚旅行の旅費を集めてるんでしょ? あ、ここに偶々学園長から聞いた、団体戦優勝の報奨金のメモが! 見る?」


 ついうっかりしていた。ポケットにゴリラから聞いておいた、報奨金のことについてのメモを持ってたままだった。いやあ、人が多いこともあり流石に個人戦よりは少額だし、今大会から設立された部門だったから、そこまで高額という訳ではないが、それでも優勝すれば異の剣や政府から纏まった金額が支給される。


「カッコいい所も見せれて、新婚旅行費も大部分を出せたら、男としての面目は保たれるだろうなあ」


 うむまさに一石二鳥。


「貴明君、さあ一緒に優勝を目指そう」


「ぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷ」


 石が当たったのはアルカイックスマイルを浮かべた馬鹿だが。こいつ、ギリシャと、モイライ三姉妹と当たることがさっぱり頭から抜け落ちている。まさに真チャラ男にして真馬鹿。


 まあいい。これでチームが完成した!


 ◆


 ◆


 そして迎えた試合直前。


「プロテインの準備も完璧だ」


 マッスル! 役割は高速戦闘並びに尖った個の制圧! 対アーサーにぶつける予定! 超見たい!


「石油王の王子はどこ?」


 厚化粧! 役割は最強の矛! だけど1日1発の制限あり。それがどうした。耐えれる奴いるのかよ。


「私抜けるから……」


 橘お姉様! 役割は超硬度な盾の破壊と権能使いの封殺!


「ワイと同じ常識人がおらんなるのは困るで!」


 真チャラ男! サポートなら出来ること多すぎて役割もくそもない!


「ぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷ」


 主将であらせられるお姉様! ちょっと、いや、かなりツボに入ってて戦えないっぽい! でも可愛いあいてっ。でへへ。


「連携とか確認してないけど、まあ訓練でお互い動き方は分かってるか」


 佐伯お姉様! 癖がありすぎる我がチームにおいてメインの高火力担当! 場合によっては空中に飛び上がり、地上と連携して挟み込む!


「俺達が壁担当だ。昨日まで一人で戦っていたから、役割分担できるのは楽だな」


 チャンピオン藤宮君! 役割はメイン盾! 一発で破れるのは多分アーサーだけ! チャンピオンが単なる盾とかどうなってんだこのチーム。


「だからお前が四力結界張るなら俺いらないって」


 突っ込み! 役割はメイン盾! メインが2人もいるとか贅沢だ。


「私、ゾンビーズの皆にはバフかけ続けられても、花弁の壁の皆には普通の浄力者なんだけど……胃が……」


 清楚美人東郷さん! 役割はゾンビ共の超強化と、チーム花弁の壁への普通の強化!


「えいえいおー! あ、東郷さん、僕には浄力掛けないでね!」


 説明不要の主席俺! 役割は応援と肉盾!


 これで優勝できない筈がなああああああああああい! 勝ったなガハハ!










 ちょっとやりすぎのような気もするけど。

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