表彰台は異能学園が独占だ!
うっ……なんだ急に頭が……。よく分からんが俺様の株が上がって、結局元の位置まで落ちた様な……。
ま、まあいい。今はそんなよく分からん電波より大会だ。
うん? あのどこかガキ大将のような雰囲気の短髪は……。
「西岡君頑張ってね!」
「おうよ貴明!」
偶々訓練場に向かっていた西岡君を見つけたので応援する。
一年生の個人部門は藤宮君、佐伯お姉様、橘お姉様、西岡君、南條君に決まり、集団部門は西岡君がリーダーとして率いて、伊集院君や村上君など比較的協調性のあるメンバーが選出された。
そんな西岡君だが、個人部門と集団戦部門の間に少しだけ日があるとはいえ両方に出場するため、その負担は中々の物だろう。しかし、どちらかに専念しろという言葉が出ない程、彼はまさしく異能の東西南北である、西岡家の本家生まれに相応しい能力の持ち主だ。
って言うか何度も思うけどやっぱこの世代超ヤバいな。東西南北の本家生まれが全員いるのに、その更に上である桔梗の生まれであるお姉様までいるのだ。名家的にもまさに黄金世代だろう。北と東は味噌っかす扱いだが。
む。男性だが首元まである、少し長い髪の毛の後ろ姿。
「南條君頑張ってね!」
「……」
西岡君の次に南條君を見つけて声を掛けたのだがガン無視された。我が一年A組は、大雑把に分けて3つの分類がある。名家的にははみ出し者の俺達花弁の壁と五馬鹿の10人、西岡君など比較的協調性のある名家10人、それと南條君達などの残りの10人なのだが、彼らは一族至上主義者なため纏まった10人ではない。そしてその一族至上主義者が他をガン無視するのはいつもの事だ。
言うこと聞かせられるのは、その南條家ですら配慮せざるを得ないゴリラのみ。そう、入学当初は分からなかったが今なら分かる。ゴリラがこのクラスの担任を務めている理由はそれだ。間違いない。
「貴明マネ、先行ってるねー」
「そちらも頑張って」
「面倒事だったら言ってくれ」
「待ってるわね貴方」
「頑張ってね皆! すぐ終わらせますお姉様!」
そして訓練場に向かう我がチームの皆も、大会に向けて追い込みをかけている最中だ。しかし、本当に今年からルーキー部門とか作ってよかったんですかね世界異能大会執行部の皆さん? 言っとくけど俺らの代表ヤバいよ? 下手すりゃ極一部以外の二年生より強いんだぜ。しかも普通の学生部門に出る四年の先輩達も、蜘蛛君に日々揉まれてるからすげえ成長してるみたいだし、半裸会長とかセミプロ通り越してプロ中のプロレベル。これは学生部門とルーキー部門の両方で、我がブラックタール帝国が表彰台を独占間違いなし!
おっと、皆が栄光を手にするためには完璧な準備と大会運営が不可欠だ。そのため皆と別れて泣く泣くゴリラ園へ向かう。なんか用があるみたいだけど、もう殆ど終わらせることは終わらせてるんだけどな。
まあとにかく、これはもう勝ったなガハハ!
◆
◆
ど、どうしてこんな事になってしまってるんだ……。
「これは各国が発表したものだから選手にも教えるが、その前に執行部と運営委員の長である君達に知らせておく」
ゴリラ園に入ったとき、戦闘会執行部として出場選手の調整をしている、半裸会長までいたから嫌な予感はしてたんだ……だが、どうしてこんな……。
「出場国全てが本気の様だ」
ゴリラがため息をついた。
今までの大会では、出場選手は各国共に出来るだけ伏せておく傾向にある。情報を収集されればそれだけ不利になるからだ。がしかし! それを敢えてせずに各国が一人だけ発表した、代表選手とも言えるべき奴が大問題だった!
「アメリカは"一人師団"の次男!? ロシアは"永久凍土"の長女!? イギリスは"今代アーサー"の弟子!? フランスは"ジャンヌダルク"の妹!? ギリシャは"マーズ"の孫でバチカンは聖人んんん!?」
全員が世界的に有名な連中の関係者じゃん! またプロさんが学生ですって言い張って出て来た方がましなレベルだろ! 学生レベルじゃないプロなのに、本当に学生だから質が悪い!
いや待てよ!? 幾ら何でも豪華すぎる!
「学園長、ブラフで混乱させる作戦では!?」
デカいことぶち上げて混乱させ、その隙を突くのも作戦だ。つまり彼らが出て来る事はない筈!
「私もそう思って伝手を当たってみたが、どうやら本当の可能性が高いらしい」
「なんとまあ……」
やれやれと首を横に振るゴリラと、呆れたと溜息をつく半裸。
おかしいだろ! 全員高校生くらいの時から実質プロみたいな連中なのに、それがアマチュアの大会に出て来てどうすんだ!
「どうも集団戦が気に入らなかったロシアが、"永久凍土"の長女を出して個人戦は確実に獲ると出場させたらしいのだが、アメリカがそれならこっちは"一人師団"の次男だと対抗したらしい。そうしたら今度は負けてなるものかと各国が、な」
あああああああああああああ! やっぱり冷戦からなんっにも反省してねえ! その二人、集団の中の一人とは言え、俺らとタメの癖に大鬼の討伐に参加してたような奴らじゃん! そっから連鎖反応して各国も大物が出場とか、サラエボ事件からの第一次大戦か!?
「ほ、他の部門もですか!?」
まさかと思うが次男だの長女だの弟子だのではなく、その本人が成人部門で出てきたりしねえよな!?
「いや、流石に国防に穴をあける訳にはいかんからルーキー部門だけだ。一年生だからまだ動かしやすかったようだな」
くそったれえええ! 動かしやすいもなにも、そいつら全員国防に関われるようなレベルだろうが! それを動員したとなると間違いねえ! どこもかしこも勝つつもりだ!
こうなりゃ俺が邪神アイで戦い方なんかを情報収集をして皆の援護にってだめだ! 俺は運営委員長なんだ! ルールの隙を突いたわけでも反則をした訳でもなく、単純に一年生がルーキー部門に出場するだけなんだ! それなら俺は公正な者として、試合に影響が出るようなことをしちゃいけない!
だがしかし、各国が発表したのはそれぞれ一人なのだ。二人目三人目のトンデモ選手がいる可能性もある! それだけでも調べ……いや! やはり俺は運営委員長であるべきだ!
み、皆ああああああ! と、とにかく頑張ってくれえええええええええええ!
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