青春の一幕 訓練
「中々面白そうなことが起きそうね」
「そうですねお姉様!」
ゴリラ室から出ると、お姉様が楽しそうにニタニタ笑いをされている。
「でもあんなモノ見せるだなんてデリカシーがありませんよ!」
「ふふ」
だが俺はゴリラに物申したかった。
ゴリラに朝早く呼ばれて行ってみると、どう考えても神が関与してるとしか思えない様な羽の写真を見せられてしまったのだ。げろげろ。全く青少年になんてものを見せてくれるんだ。あんなの発禁だよ発禁。
「でも興味が沸いちゃったわね。チームの訓練が終わった夜に、その空港へ行きましょう。何か分かるかも」
「分かりました!」
だがそんなご禁制の品に対して、お姉様が興味を持たれたようだ。刀以外の物にお姉様が興味を示すのは珍しいが、神が直接関与しているような遺物に対してはその限りではなかったのだろう。チームの訓練が終わり次第、その羽が見つかった空港に行って調査する事となった。
◆
「あら北大路……よね?」
「え?」
ゴリラ室から訓練場に向かっていると、お姉様の言う通り確かにマッスルの後ろ姿が見えたのだが……
「あ、ああ……貴明と……小夜子か……」
「き、北大路くーん!?」
「ぷぷ」
振り返ったマッスルの顔は、まるで窪んだ骸骨の様な顔だったのだ!
「いったい何があったんだい!?」
「き、昨日、つ、翼先輩が中々開放してくれなくてな……」
翼先輩ってあの中性先輩だろ!? いつの間に名前で呼ぶようになったんだよ! ああゴラァ!? 心配して損した!
「ぷふ。ゾンビーズ全員気に入られた様ね。ぷふ」
多分俺が盗み見した後、ようやくやる気を出したチームゾンビーズと中性先輩との間で、熱い戦いが繰り広げられたのだろう。そして中性先輩に全員が気に入られてしまい、仲良く浜辺で夕日をバックにってんな訳ないか。
「でもその筋肉、いい感じに仕上がってるね」
「ふ、それが分かるとは流石は主席だ」
「いやあそれほどでも」
だがそのお陰かどうか知らんけど、マッスルのマッスルは実に見事な仕上がりで、このままボディービルダーの大会に出場出来るほどのキレっぷりだ。
「それで今日も?」
「ああ。非常に鍛えられるからな」
特鬼レベルと戦って鍛えられてると感じるのはかなりヤバいのだが……普通は単なる蹂躙なのに。
「おっと引き留めてごめんよ」
「いや、そちらもマネージャー頑張ってくれ」
「そっちもね!」
普通の生徒だったら心配するところだったが、寧ろマッスルの筋肉的にはここからが本番だろう。超回復のために頑張ってくれ。
◆
「おはよう皆!」
「おはよう」
「ご両人おはよーう」
「おはよう」
「おはよう」
今日も朝一番から鍛錬を積むチーム花弁の壁の皆に挨拶をする。親しき仲と仲間にも礼儀あり。挨拶は大事なのだ。
「貴明、ウォーミングアップに組手を頼めないか?」
「勿論!」
すると藤宮君に組手を頼まれた。いきなりハードに体を動かすのはよくないため徐々に行うのだが、ゴリラがここにいたら、いつでも戦えるよう常在戦場の心構えと体作りが云々言うだろうな。実際俺がベルゼブブの前に呼び出した時は、即座に襲い掛かってたし。
「あらこれは、ぷふ」
「小夜子、今からボク達も組手しないかい? 勿論異能は無しで」
お姉様が、佐伯お姉様が持ち込んだ資料の束の様なものを見て笑われている。はて、一体何がああああ!?
あ、ある意味伝説の資料、げ、"現役魔法少女が教える飛行のコツ"だあああああ!
これを書いた奴、空中をビュンビュン飛び回って、上から大火力を叩きつける日本の単独者なのだが、何を血迷ったのか自分で書いた戦術教本のタイトルを、現役魔法少女が教える飛行のコツ。だなんてタイトルにしたのだ! 勿論売り上げは爆死で、今では入手困難な伝説の代物となっている!
「ぷふ。よく手に入れたわね。あ、他意は無いわよ。ぷふ」
「実家の伝手がそこそこ広くてね。それよりも他意ありまくりだよね? だよね? ボクにはよく手に入れるつもりになったわねって聞こえたんだけど」
だがこの本、書いている事は至極真っ当で分かりやすかったらしく、タイトル通りきちんとコツを教えてくれるらしい。そのため一部からの評価はいいのだが、割と古い本で電子書籍化されておらず、しかも当時は本屋でこのタイトルを持ってレジへ行く覚悟が必要なのだ。そりゃ売れねえよ。
「な、何か参考になる事書いてましたか?」
「うん。最初は慣れるまで平衡感覚が狂うから、何か長い棒を持って練習しろだって」
「ああなるほど」
外から見た感じ、いきなり上下の感覚が無くなって浮いてしまうのだ。何か基準になる物を身に付ける必要があるのだろう。
口が裂けても言えないが、アニメとかで魔法少女が持ってるステッキに意味は合ったんだな……
「ステッキを持ったら、魔法少女アスカから後戻りできない。ふひ、ふひひ」
「とりゃ!」
「あだば!?」
佐伯お姉様も俺と同じような事を考えてしまったのだろう。またしても暗黒精神に陥りそうになっていたので、慌てて邪神流柔術活法を用いて正気に戻す。
「ここはどこ!? ボクはボク!?」
よかった正気に戻ったようだ。
「それじゃあ貴明頼む」
「了解!」
佐伯お姉様が正気に戻った事を確認して、藤宮君と一緒に訓練場に上がる。
それでは邪神流柔術殺法をお見せしよう!
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