筆記テスト

「諸君おはよう。言うまでもないが本日のテストでは、日頃の学びの成果が出る。気を引き締めて臨んで欲しい」


 おはようございます学園長。なんか一時に比べて元気になってません? 三者面談の時に具合が悪そうだったから心配してたんですよ。でも元気になったみたいですから、親父との飲み会のセッティング進めておきますね。


「事前に言った通りカンニングは許可されている。が、私に見つかった場合点数はゼロ点になる。バレない様上手くやりなさい」


 流石ですね学園長。実戦極まってますよ。ただ言わせて貰うと、世界中探したって学園長の目を盗んでカンニング出来る奴がいないってことですかね。だからワンチャン自分の能力に賭けていた木村君が白目向いてますよ。なにせ何かしらの女神の力を借りようにも、ちょっと霊力を使用するだけでゴリラが肩をポンと叩いてくるだろう。


「それではテストを始める」


 さて最初のテストはあれだ……。


 ◆


 あーーーっはっはっはっはっはっはっは! 楽勝おおおおおおおお! 英語なんてイギリスに行ってもネイティブなクイーンズイングリッシュ使えて、現地の人におったまげられること間違いなしの俺様からすれば楽勝も楽勝よ!


 これがチートの中のチート、その名は語学! たとえ異世界だろうが宇宙の果てだろうが、これ一つで飯食っていけるスーパーパワーなのだ!


 やっぱ進む道間違えてるかなあ……いや、通訳になったらお姉様とイチャイチャする時間が減るしな。やっぱり適当な妖異をぶっ殺してるだけで、結構な金を貰える異能相談所を立ち上げて、副業で翻訳家でもするか? それにゴリラが教師とか変な事言うから俺も妙に意識して……。


 おっともう書き終わってしまったぞ。見返し見返し……完璧!


 ◆


 数学ねえ。困るんだよなあ、人間の分かる文字で書いてくれないとさあ。俺って証明せよって言葉を見るだけで頭痛してくるんだぜ? あ、ははあん分かったぞ。つまりそれは数学ってのが邪悪な知識だからだ。頭痛がするのも納得だね。異端として弾圧しなきゃ。


 あーあ。ガウスとかオイラーを呼べないかなあ。というかこの二人本当に人間か? 数学星からやって来た数学星人なんじゃねえの? ラマヌジャンは違う意味で宇宙人だけど。数式は閃いたけど、本人が証明できないから、証明をしたのは別の奴だなんて完全に意味不明。過程はどうした過程は。


 大体いいじゃん。足す引く掛ける割るが分かってたらさ。


 あれもう時間? え、半分以上白紙なんですけど……。


 ◆



 情報のテスト用紙、問題は俺が持ち出した答案用紙からそのまま出すとか言ってたけど、いまいち信用出来ねえんだよなあ。ゴリラの事だからあれは嘘だとか平気で言いそうだし。


 えーっと……よかった同じだ。これで問題が違ってたら、親父との飲み会のセッティングは無しだったな。


 問題の欺瞞情報もクラスの皆で探したから大丈夫だ。こういうのはそれぞれ分けるんじゃなくて、全員が最初から最後まで確認すれば、別の人間の思い込みからのミスをなくせる。欠点は時間が掛かる事だが、満点以上の点数には代えられない。


 そして一番多く欺瞞情報を見抜いたのは主席皇帝事俺っち。そして二番手はマッスル。あいつマジでどうなってんだ? あの筋肉を維持したまま、論文は見てるは間違いは見つけるわ勉強は出来るわ……。


 んんん? いやなんか最後に追加されてるけど、問題じゃない? ははあ逆カバラの名前と悪魔の由来、歴史の記述か。答えは全部わかってるんだから、書き終わって暇なら見てろって事だな。アララと蠅、ナヘマーはもういなくなってるけどな!


 そうだ空いた席に座るか? 座っちゃうか? 皇帝とかかっこよくないか? それか労働天国? 幸い二番目の蠅の席は空白だから、トップのサタンを蹴り落としてそこにお姉様が女帝で座ったら完璧。一番下のナヘマーは親父の自堕落だ。


 おっと予定を立ててる場合じゃない。見返し見返し。よし完璧!


 ◆


 ◆


 ◆


「筆記テストご苦労だった。明日は実技テストなため、怪我をしない様集中して臨んで欲しい。以上だ」


 ふー終わった終わった!


「簡単だったわね」


「本当かい小夜子?」


 筆記テストが終わり、さあ明日は実技だ実技だという雰囲気の教室で、お姉様が余裕たっぷりに笑い、それを佐伯お姉様が怪しいなと見ている。


「ええ勿論。そうねクラスで三番目くらいの位置にいるんじゃないかしら」


「またまたー」


 興味のない事にはとことん取り組まないお姉様だ。授業も殆ど受けていないため、佐伯お姉様は疑っている。


 でも本当ですよ佐伯お姉様。俺はお姉様の後ろの席のため見えていたが、確かにお姉様はすらすらと淀みなく記入しているように思えた。流石はお姉様だ。まるで答えがわかっているようなななななな!?


 わ、分ったかもしれない! 邪神アイ発動! 天井に目を凝らす!


 じー。


 や、やっぱりいた! あれはお姉様特製式符の一つ、偵察特化型のネズミちゃんだ!


 お姉様は、あの天井に尻尾を引っ掻けて宙ぶらりんのネズミちゃんからの視覚情報を受け取り、それをそのまま記入していたんだ! 俺もゴリラも気が付かずにカンニングするだなんて流石ですお姉様!


 あ、お姉様が唇に指をあてて、しーのポーズをされた。どうやら正解を導き出せたようだ。しかし、プリンとしたお姉様の唇超チャーミングあいてっあいてっ。でへへ。


「それじゃあ帰りましょうか」


「はいお姉様!」


「なーんか怪しいぞこれは」


「ふふ。それでは御機嫌よう」


 まだ胡乱気な目をしている佐伯お姉様に、ひらひらと手を振って別れを告げるお姉様。な、なんてカッコいいんだ! 流石ですお姉様!

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