凄い学園長
「貴明……実家からの突き上げがきついんだ……!」
休み時間に必死な顔して俺に話しかけているのは、異能至上主義者の西岡君だ。
「貴明の言う通り、学園長がそういうのに興味ないってのは俺も同意見なんだが、毎日のように親父や爺さんから進展はどうか電話で聞いてくるんだ!」
どうもノイローゼ気味になってる様だ。全く余裕が無い。
「だけど返事は変わらねえよ! 悟ったんだけど、学園長結婚なんか気にしたことも無いタイプだ!」
そう。今学園では空前の学園長争奪ゲームが繰り広げられているのだ!
「ちなみに結婚候補が妹さんだった場合は?」
「親父も爺もぶっ殺す」
目がキマッてるな。どうも西岡君はシスコンのようだ。
前にゴリラが特鬼の猿君と相打ちになったときも、西岡君も含めて武闘派名家を中心にざわざわしていたのだが、逆カバラの悪徳、それもベルゼブブなんて大物中の大物を打倒した、今度という今度は放っておけないようだ。
これまた前回と同じように、結婚と言う形で学園長を取り込みたくて仕方ない様なのだが、彼らにとって問題は、ゴリラがそんな情緒なんて持ち合わせていない事だ。
「実際どれくらい動いてる感じ?」
「東西南北は全部マジだな。中堅どころも。下は流石に睨まれるから動いてない」
「今度はマジだね」
「ああ。マジノ線だ」
「迂回されちゃったね」
「だな」
つまり名前の通ったところは全部か。もげろ。それとベルギー可哀想。
ん、待てよ? 東という事は東郷さんもか。模擬呪物の時に逃げた東郷さんが、学園長にホールドされていたが、一族の人が見ていたら、そこだ! やれ! って応援してたかな?
あと西岡君が桔梗の名前を出さなかったのは、彼が心底ビビってるお姉様の注意を引きたくないからだろう。なにせ彼は、一族至上主義者の南條君も含めて、お姉様に一撃で吹っ飛ばされた面々の一人なのだ。いやあ、あれは惨劇だった。
「ってあれ? 南條君のとこも? ほら、学園長ポッと出だから受け入れないかと思ってた」
「あそこは排他的な癖に、他が伸びるのが嫌だからな。余所に学園長を取られるよりはって感じだろ」
「ははあ」
基本的に南條家は、広がった分家とか、付き合いの濃い一部の名家の中で婚姻をしているが、時たまそれ以外に生まれた強力な異能者を受け入れる事もある。が、今回は庶民も庶民。全く異能の異の字も無い様な家から生まれた、突然変異のゴリラを欲しがるだなんて、こりゃどこもマジだな。もげろ。
◆
「いやあ、何処もマジだね」
「そうね。呆れるわ」
いやはやと首を振る佐伯お姉様に、呆れたと言わんばかりの橘お姉様。
時間はお昼休み。つい最近チーム花弁の壁の昼食会をやったばかりだが、テスト期間は忙しくてする暇が無いだろうから、今日もまた行う事になったのだ。そして話題は当然ゴリラの事だ。
「まあ確かに、実際見た俺達からすれば分からんでもないがな」
「そうだね藤宮君!」
藤宮君は大分鬱陶しがっていたが、あのゴリラ対蠅のビッグマッチを至近距離で見ていたチーム花弁の壁の皆は、いろんなところから質問攻めにあってしまったのだ。
そして俺も被害にあってしまい、何故かゴリラの武勇伝を語る羽目になってしまった。解せない。
「まあ、見世物としてはそこそこ面白かったわね」
「小夜子ならベルゼブブも余裕かな?」
「さあどうかしら?」
「はははは。え? その余裕っぷりは本当に?」
冗談めかしていうお姉様に、佐伯お姉様も驚愕している。ボクの見立てでは33-0でお姉様の圧勝ってとこですかね。
『東京で起こった異能者と一般者のデモ隊の衝突で、多数の負傷者が発生した模様です』
「まーたこれだ。嫌になるね」
うんざりしたような佐伯お姉様。テレビでやっているのは、相も変わらず起こっている異能者と一般の人たちの衝突だ。
どうも、ベルゼブブとゴリラがどんだけヤバいか散々テレビでやっているもんだから、一般の人たちが危機感を覚えたらしい。
ベテランの異能者にとっては何を今更と言うだろうが、逆カバラと日本最強のガチンコなど、米露がマジで軍事衝突したようなもんだ。そんなどちらかと言うと異能者でも妖異寄りで、現代兵器が全く効かないベルゼブブの契約者をどうこうする手段は、それこそ米露軍事連合と言うトンデモパワーワードが結成されてようやく何とかというレベルの話になる。何とかなるよな?
んで、デモに参加してる異能者否定派の人たちは、やっぱり異能者はやばいという結論を更に確固とした様だ。この結論の欠点は、ベルゼブブクラスになるとそれと同程度の異能者、今回はゴリラだが、ともかく危険な悪玉異能者を止めるには善玉異能者をぶつけるしかない事だ。何故かそこら辺がすっぽり抜け落ちてる。
ま、態々そのデモを妨害するような異能者連中がいる事を考えたら、それも一理あるのは確かだ。上に立ちたがるのは人間の癖だからな。
授業参観の話はしない。橘お姉様のご両親が亡くなられているからだ。
さて、授業参観と言えば!
学園長! 親父と旧交を温めてくださいね!
◆
「スーツよし! いつでも行けるぞ!」
◆
「さ、寒気が……」
◆
さて、うげふんさんやかげふんさん。ヒュドラの時みたいに彷徨って現世に留まっているならともかく、俺の領分から逸れてかなりルール違反をするから負担が半端じゃないが、ここでやらずにどこでやる。
ぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐがががががががあああああああああああああああああああああaaaaaaアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!
だ、ぐうううううううう! がはっごぼっ!? だ、第三形態■■■■変っっ身っっっっ!
【輪廻
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます