青春の一幕 お昼2
なんて事だ! 皆、正統塩コショウ教徒だと思ってたら邪教徒だったんだ! 俺は邪神だけど。これじゃあベルリンの壁崩壊並みの勢いで花弁の壁が崩壊してしまう! あれ勘違いで崩壊したとか歴史って面白い。
「まさか伝統レモン教徒以外がいるとはボクは思わなかったね」
「ポン酢の真理を分からないなんて、親友の飛鳥に裏切られるとは思っていなかったわ」
「貴明、悪いが俺たちの友情はこれまでのようだ。お前がマヨネーズ派でさえあったら」
「そんな……皆自分達が間違っていることに気が付いてないだなんて……塩コショウ以外邪教だよ邪教」
「仲がいいようで嬉しいわ」
チーム花弁の壁が、やれやれと言った感じで首を横に振りながら、トレーにお皿を乗せていく。ついでにそれぞれ容器を一つずつ。そしてお姉様だけくすくす笑われていた。
「大体、揚げ物にマヨネーズとかカロリー爆弾だよ。あ、あそこの机が空いてるよ」
「何を言う貴明、俺達異能者は体力勝負なんだ。むしろ適正の筈。グラスを持って来よう」
「唐揚げにポン酢を浸すってふやけないかい? じゃあ席を確保しとくね」
「レモンも同じでしょ。椅子が足りないから持ってくるわ」
「ふふ、流石のチームワークね」
大邪神馬鹿親父でさえ塩コショウ派と言うのに、全く持って皆どうかしている。これは俺直々に邪教徒と認定せざるを得ないだろう。
「えーそれでは唐揚げ会、じゃなかった。チーム花弁の壁食事会を始めます。頂きます」
「頂きます」
佐伯お姉様の挨拶で、チーム花弁の壁食事会が開催された。
「はいどうぞ」
そして机の中心にそれぞれ容器が四つ差し出される。内容は、塩コショウ、レモン、マヨネーズ、ポン酢である。
「まあ食べてみて」
「ふふふふふ」
異口同音にそれぞれの神器を机に置いたのは、どうせ食わず嫌いなんでしょ? 一度食べてからもう一回言ってご覧という意味だ。幸いと言うか異能者は訓練で動くからその分よく食べる。唐揚げを追加で食べるくらい簡単だ。
そんな俺達のその様子が面白くて堪らないらしくお姉様は上機嫌だ。
「次の相手も二年生かな? むうう、ポン酢も悪くは……」
「ふふ、案外ゾンビだったりするかもね。私は気にせず全部試すわ」
「全く笑えんぞ小夜子。守りに入ったあいつらと戦うなんて、時間制限が無かったら言葉通り日が暮れるまでやる羽目になる。それならマヨネーズから試すんだ」
佐伯お姉様が次の対戦相手を予想するが、お姉様がネクロマンサー東郷さん率いるゾンビーズもあり得ると笑っている。だがしかめっ面な藤宮君の言う通り、お互い推薦組と一般組の違いはあるけど二年生を打倒しているのだ。困ったことにその可能性は十分ある。
「私達一年同士で戦い合わせても、向上心を重視している学園長はあまり意味を感じていないのでは? マヨネーズ、味が濃くなりすぎるわ……」
「ゾンビたちならデータ自体は十分あるんですけど、ねえ……。あ、それならシンプルに塩コショウをどうぞ橘お姉様」
「貴明マネの言う通り、攻めて主導権は握ってるはずなのに精神的に来るからね。訓練意外じゃノーサンキュー。おおっと、人に勧めるより貴明マネもレモンで食べるんだ。さあ。さあさあ」
あのゾンビ共と実際に戦闘会で戦うなんて、佐伯お姉様と橘お姉様も断固拒否の構えだ。狭間君と東郷さんがフル回転すれば、藤宮君の四力砲でさえ中和して突破する度、新しい壁が出来上がるだろう。
「佐伯お姉様がそこまでそう言うなら、男貴明、実食させて貰います」
本当は塩コショウ以外邪道なんだけど。いや、最後に食ったのはいつだ? 実は俺が食わず嫌い? えーっとレモンをぎゅっと。
ぴゅ
ぴゅ? あ、あああああああああ!?
「め、目があああああああああああ!?」
レモン! の汁!
「ぎゃああああああああ!」
目が灼けるううう!? 爽やかハーレム野郎に浄力を浴びせられた時のようだあああああ!
「水! 水!」
水道はどこだ!? 蛇口! 蛇口はどこ!? あったよ蛇口! 全開放!
あー水で浄化されるー。邪神にレモンって効くんだなあ。聖書にも載せるべきだわ。いずれ俺が親父をぶっ倒すときの切り札は決まったな。
「はいあなたハンカチ」
「ありがとうございます!」
「ふ、レモン教なら誰もが通る道さ」
席に戻ってお姉様からハンカチを受け取る。ひどい目にあってしまった。が、レモンをかけた唐揚げに罪は無い。でも佐伯お姉様、やっぱり邪教ですよ。
ではもぐもぐ。
うーむ。程よい酸味と肉のアクセント。なるほど、これはいいものだ。ご飯ご飯。
「ゾンビと言えば、彼らも次の満月か新月に忙しかったら呼ばれるかしら?」
「どうだろうね。そもそもあの時ボクたちが呼ばれたのは例外みたいなもんだし」
「俺はその時いなかったが、余程忙しかったみたいだな」
前回並みに妖異共がわんさか出たら、ゾンビ共が呼ばれる可能性はある。
「拠点防御だけ考えると学生レベルじゃないですからねえ」
「ふふふ。見ていて愉快だからその方がいいわね」
精神的な呪詛が効かないメンタル100が四人と、殆ど無制限に活動できる浄力者だ。がっつり籠ったら非鬼の蜘蛛君でも嫌な顔をするだろう。つまりよっぽどでも普鬼程度しか出ない、出ても緊急時はゴリラや教員の単独者が応援に駆け付ける伊能市内の戦いにおいて、病院とかにポンと配置するだけでその場所の事は考えなくていい程だ。それにゴリラは彼らを高く評価しているから、緊急事態にチームゾンビーズを纏めて運用できるなら呼ばれるだろう。
「マヨネーズはちょっと無理だね。さっぱりレモンとは相反するよ」
「なんだと……貴明!」
佐伯お姉様に否定されたからと言って、そんなに期待しているぞと見ないでくれたまえ藤宮君。
では実食。もぐもぐ。ほほお、全くカロリーの事なんて考えていないまさに男の味。だが油と肉によく合う。ご飯ご飯。
「これはこれで中々」
「ふ、流石だな」
分かってるじゃないかと頷くマイフレンド藤宮君。だがまあ、家で食った日にはお袋がピシリと固まるだろう。天然気味だが体重は結構気にしてたからな。
「ポン酢は結構おいしいわね」
「小夜子、貴女なら分かってくれると信じてたわ」
お姉様はポン酢を気に入られたようだ。では俺も。
もぐもぐ。ほほう、あっさりさらっと。そして酸味。肉汁がちょっと流されてしまうのはマイナスだが非常に食べやすくなっている。ご飯ご飯。、
「なんて事なんだ。真理に気が付いてしまった。つまり唐揚げは何でも美味しいって事なんだ」
この真理に気が付くまでどれほど回り道してしまったんだ。結論。でも塩コショウが最強。
「それで塩コショウはどうでしたかね皆さん?」
「普通」
「普通」
「普通」
「ぬあああああああああああ!」
「ふふふふふふふ」
やっぱりみんな異教徒だ!異端者だ!邪教徒だ!
許せええええええん!
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