王対王
青春の一幕 お昼1
猫君ブードキャンプなのか、猫君ホラーショーなのか分からない映像を見終わった後はお昼休みである。ここで普段ならお姉様と恋人たちの聖地屋上に行くのだが今日は少し違う。
「さあ皆の衆。行こうじゃあないか」
「はい佐伯お姉様!」
佐伯お姉様の宣言に応える俺。と言うのも、今日の昼食は定期的に開催される、チーム花弁の壁の昼食会なのだ!
「ロシア校、食堂にいると思うか?」
「どうだろうね藤宮君。なんか、ローテーションで一瞬で食べて次の組、また一瞬で食べて次の組ってイメージあるけど」
「確かに」
それはつまりマイフレンド藤宮君もいるという事だ。この藤宮君、普段は一人で食べているのだが、どうも食事は誰にも邪魔されず一人で食べる主義のようで、こういった偶にの食事会以外は顔を出してこない。いや、食う相手がいないからというのではなく、邪神的感応術によるとどうもマジで食事を邪魔されるのは嫌みたいだ。
「昨日見かけたときは普通に食べてたわよ」
「だね。レーションを持ち込んでないかとちょっと疑ってたけど」
「まあ、私もちょっとだけそう思ってた」
そんな俺達の予想、それこそ戦時下の軍人の様に、速攻で食事を終わらしまた訓練訓練、ひたすら訓練みたいなものではなく、よく食堂で食事をしている橘お姉様と佐伯お姉様によれば、普通の食事風景だったらしい。
「レーションねえ。確かカロリーがとんでもないんだったかしら」
「しかも寒冷地のロシアのですからね。聞いた話、一食で3000、4000キロカロリーとかなんとか」
お姉様の言葉に、一時期マズいマズいとネタにされていたアメリカ軍のレーションの、解説動画を面白半分で見た時の記憶が蘇る。
ちなみに男性の一日の摂取カロリーの目安は2000ちょいと考えるととんでもないな。まあ、ベテランの異能者も、一食でそれくらい食ってるみたいだけど。
「そんなものより私の手作り料理の方がいいでしょ?」
「勿論です!」
お姉様の手料理とレーションを比べるだなんて、神が許してもこの俺が許さない。いや、レーション食ったことないんだけど。ただ、一度だけ食べてみたいなーと思うのは俺が男の子だからだろう。
「俺はレーションの方を食べてみたいな。出来れば各国のを。前から興味があった」
流石は我が友藤宮君だ。俺と同じことを思っていたらしい。各国のをと強調したのは、アメリカのを食べてしまったときの予防線だろう。
「ボクも興味自体はあるね」
「必要な栄養が取れれば何でもいいわ」
流石は男前佐伯お姉様と合理主義橘お姉様だ。
だが佐伯お姉様は男前すぎてげふんげふんげっふん!
いかんいかんいかん! 俺まで消し炭にされてコールタールになっちゃう! 何をとは言わないけど、あれは我がクラスでは無かった事になってるんだ!
「おっと、ロシア校はいないみたいだね」
「あの新しい学生さん、中々やり手だから他の生徒も集中しすぎてるんでしょ」
「新しい学生さん?」
「ええ学生さん。ふふ」
お姉様が佐伯お姉様にくすくす笑っている。
食堂にはまだロシア校は来ていなかった。蜘蛛君の訓練場の位置を考えると、この食堂が一番近いのに来ていないという事は、お姉様の言う通り、新しい学生さんかっこプロフェッショナルがまさにやり手のプロだから、皆集中しているんだろう。
佐伯お姉様はあの場にいなかったから、その新しい生徒とは? って感じに僕の方を見られてもですね……その、新しい生徒さんです……はい……。
いやしかし、新しい生徒さんがそれほど蜘蛛君に集中しているなら、猫君を体験することはないかもな。それならそれで、と言うかその方がいい。猫君の極悪戦法を体験する前なら、プロさんはどうやって猫君と戦うのかなあと呑気に構えてただろうけど、今となっては……万が一猫君が、これで学生としてやって来た事は誤魔化せた。と思っているな? とか言っちゃうと、プロさん死んじゃう可能性があるからな……。
「さーてこの食堂の今日の定食はっと、肉は唐揚げ、魚は塩サバだね」
「唐揚げ!」
「ふふ、あなたも好きねえ」
佐伯お姉様が読み上げた今日の定食メニューについ大声で反応してしまう。お姉様に微笑まし気に見られてしまった。恥ずかしい……。
だが何を隠そうこの四葉貴明、唐揚げが大好物で、ガキの頃は大真面目にお袋に一週間晩飯は唐揚げでいいと言うような邪神なのだ。
なお親父もそれは同じで、別世界でドマイナー神やってた時の数少ない、それはもう数少ない信者の皆様に、お供え物は唐揚げっぽいものを下さいと頼みこんでいたほどだ。
ちなみにその時はマジで一週間唐揚げになった。僕満足。
世界の皆さん、お供え物には唐揚げでよろしくお願いします。お悩み相談くらいは承りますので。
「じゃあボクは唐揚げにしようかな」
「私も」
「俺もそうするか」
お姉様と俺はもともと肉派なので、これでチーム花弁の壁全員が唐揚げを選んだことになる。こ、これがチームの絆! まさに一心同体!
チーム花弁の壁最高!
「ボクはレモンを」
「私はポン酢を」
「俺はマヨネーズを」
「僕は塩コショウを」
「私は何でもいいわ」
ああああああああああああああああああああ!?
ピシリとお姉様以外全員固まってしまったあああ!
み、皆、異教徒異端者だったんだね!?
チーム花弁の壁崩壊の危機!
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