プロ
授業参観の用紙を貰ったものの、親父の予定がさっぱり分からんな。まあ田舎で畑仕事しながら、お袋とイチャイチャしてるだけだから暇なのは間違いないけど、一応邪神間通信で聞いてみるか。
『もしも』
『どうしたんだいマイサン!』
出るのが早えし声がデケえよ!
『授業参観と三者面談あるんだけど来る? 学園長に世話になってるから、親父からも直接お礼言ってほしくてよ』
『行く行く! いやあ、持つべきものは竹崎君みたいな友人だなあ! 小夜子ちゃんからも聞いてるけど、随分仲がいいみたいだね!』
コンマ秒以下の即答で答えが返って来た。それに俺が偶にしてる連絡以外にも、どうやらお姉様から、俺と学園長のツーカーぶりも聞いているようで、姿は見えないけどうんうんと頷いているような感じがしてくる。
『あ、顔変えれる? ほら、他の名家の人たちがビビりまくらない様に配慮しておかないと』
『変えれる変えれる! そこは確かに配慮しておかないとね!』
やっぱり変えれるんだな。まあ、お姉様のご実家での事を考えると、親父が素顔で来たらとんでもないことになるだろう。しかし何が配慮しておかないとねだ。入学式の時、完全にそんなこと忘れて素顔で来てただろ。
ま、俺も全くそんなこと気にしてなかったけど、この学園に来て更に人間として成長したんだろう。どうです学園長? 親父から学園長にお礼が言ってもらうのが目的なのに、学園長に負担を掛けたら本末転倒ですからね。 これぞまさに非の打ち所がない完璧な配慮って奴でしょ?
『じゃあ詳しい日程が決まったらまた連絡するわ』
『分かったよ! じゃあ竹崎君によろしく言っておいてね! それと連絡は毎日でもい』
通話終了っと。
「あなた、連絡将校が来てるわよ」
「え、連絡将校ですか?」
お姉様が面白がって教室の入り口を見ている。ってもうクラスメイトはいないな。皆からテスト用紙のお礼を言われて、有頂天になったまま親父に連絡したから、全く周りの事に気が付かなかった。しかしはて、連絡将校?
『失礼します……』
なんだかこっそりと言った雰囲気でやって来たのは、見覚えのある熱血軍人指導が効果的なロシアの新兵さんだ。
『その、教官殿、お時間がよろしければ、是非昨日と同じくご指導の方をと思ってやって来ました』
あ、香ばしい匂いが漂って来た! アメリカに対する面子があるから、俺にお願いするのは避けたいけど、これ無理じゃねって一派が彼を寄越してきたんだ!
ついでに他の派は、今日本国から連れてきた浄力者がいるから、とにかく様子を見よう派がいるみたいだ。うーん3人いれば派閥が出来てますねえ。
『分かりました。次のコマは空いてるので行かせて貰います』
『ありがとうございます!』
へっ、だが邪神は頼られるのに弱いのだ。それが呪いについてなら尚更だ。喜んでこの邪神の知識を授けようではないか!
「モテモテね。あなたのカッコいいところ見られるから私も嬉しいわ」
「お、お姉様!」
僕の方はお姉様のお言葉でドキドキです!
◆
『よく来てくれたありがとう。あれから色々と試しているのだが、あの蜘蛛の呪いの種類が多すぎてね。是非君の力を借りたいのだ』
『お任せください! あ、それは精神に作用する呪いです! 今から対処法を伝えます!』
『よろしくお願いします!』
訓練場にやって来ると俺が必要だと思っている一派から歓迎を受けて、邪神主席としてご期待に応えるため、今蜘蛛君がばら撒いた精神に作用する呪いに関してレクチャーを始める。
どうやら話に聞いた浄力者はまだ来てないようだな。なんか準備に手間取ってる感じか?
む、この学生とは思えぬ中々の気配。噂をすればなんとやら、ロシア校が慌てて連れてきた切り札だな? さーてどんな………。
………
………
あ、あ、あ、アホおおおおおおおおおおおお!
ぱっつんぱっつんの制服を無理に着込んだそこの大男! てめえその厳つい面で、今訓練場にいる人たちと同じ学生ですって言うつもりかコラ! そうか、合う制服がなかったから準備に手間取ったんだな!?
どう考えてもソ連がプロ禁止時代のオリンピックに、ウチの選手は公務員だから、プロじゃないからって出場させてた、実際は現役バリバリのプロフェッショナル、ステート・アマそのものじゃねえか!
東西冷戦の頃となんも変わってねえ米露はいっつもこれだ! 学生の訓練で来てるはずなのに、いつの間にかアメリカが倒せなかった蜘蛛君を倒すことしか頭にねえ! 本末転倒だろ!
邪神アイ発動! 何処となく肩身が狭そうな男を邪神アイで観察して、相手の力量を何となく把握する!
じー
推定30歳前後、力量は平均的異能者よりかなり上、やっぱプロじゃねえか!
しかもただのプロじゃねえ! ギリギリ単独者レベルじゃない、つまり世界的に認知度がない程度の使い手だ! 最後の一線は守ったってか? 明らかに踏み越えてんだよ馬鹿!
しかも厳つい顔で威圧感凄いのに、内面の精神状態は羞恥心でいっぱいだ! すげえポーカーフェイスだ、これがプロなんですね!?
(帰りたい。養成校の子たちも誰だって目で見てる……俺だって来たくて来てるんじゃないんだ……だが上から言われたら拒否できないのが社会人なんだよ……だが仕事は仕事だからしないといけなんだ……ああ帰りたい……)
はっ!? あんまりにもすごい羞恥値だから心の声が聞こえてきた! こいつはすげえ! そんだけ羞恥心を感じていながら仕事はちゃんとこなそうとするだなんて、あんたプロ中のプロだよ、まさにプロフェッショナル!
って蜘蛛君どうする!? なんでこんな恥ずかしい事をやらされてるんだって、悲壮感たっぷりな人だけど、年齢詐称した一流だよ!
え? 人間は生涯学ぶ者で年齢は関係ない? だから彼も学生に間違いないから、自分は仮想敵として全力を尽くす? ははあ、蜘蛛君流石だねえ……いや恐れ入りました。確かに学生じゃないって決めつけて偏見だった。どうせならあのプロにも非鬼の呪詛特化型を体験していってもらおう。あ、ついでに解呪室にある1000モノとか1500年モノの模擬呪物もだな。じゃあ蜘蛛君頑張ってね! えいえいおー!
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