第3話

ある日のことだった。

駅前通りですれ違ったらユーコがイケメンの彼氏を連れてた。腕を組んで中良さげに歩いてた。俺はユーコが男といるし、邪魔しちゃ悪いなと思って彼女と目を合わせるだけに止めようとしてたが、無理矢理肩を掴まれ立ち止まらせられた。そして、マウントを取られることとなる。


「ちょっと、何で無視すんのよ!

挨拶もないわけ!?うちら幼馴染なのに!」


「あ、いや、彼氏?といるみたいだったし

声かけにくくてさ...」


「そうだったんだ!別に気兼ねしなくて良かったのに。あのね、ユーマ。

紹介するね、この人、私の彼氏なの!

最近、付き合い出したんだけどさ、超ハイスペックなのよ...!」


「学年トップなの...!先生からは

東大狙えって言われててさぁ...!」


「運動もできてさ、水泳部のエースなのよ!」


「へ、へぇー」


俺はそのくらいの言葉しか出なかった。



「凄いよねぇ、将来有望だよね...!

官僚になるのか、それとも超一流企業に入るのか、今から楽しみ...!」


ユーコは嬉々として俺に彼氏自慢してきた。


「へ、へぇー」


俺はユーコの彼氏とやらと目を合わせた。


三白眼で鋭い目をした男だった。


でも顔は俺なんかよりずっと男前。それに、

筋骨隆々で運動神経も良さそうだった。


「どうも。初めまして。

俺、藤島リョーヤ」


「あ、ああ。俺はユーマ..

ユーコとは幼馴染で長い付き合いでさ...」


「知ってるよ」


「え」


「君のこと、散々聞かされてる。

非モテで冴えない、障害者の幼馴染がいんの!って。頭も悪いの、って」


「実際に会ってみると、バカっぽい顔してるなぁ。それにお前、運動もしてないとみえて、線が細いな...ま、足が悪いから運動部に入りたくても入らないのか!!可哀想だな、オイ」


嫌な奴だった。


俺は、

「急いでるから。家に帰って勉強したいから」と言って立ち去ろうとした。


だけど。


今度は彼氏の方が俺の左肩を掴んで立ち止まらせたんだ。


「おい、おまえ!凄えって言えよ...!!」


「は?」


「は?じゃねぇよ。俺のこと、凄えって

称賛しろよ、って言ってんだよ」


こいつ、自己承認欲、半端ねぇや、

と思った。


俺は仕方なしに、彼に向かって

心にもない、


「凄え、凄え凄え!!」


と言ってやったんだ。





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