ワーストバレンタインデー

みなづきあまね

ワーストバレンタインデー

2月になった。春めいたり、寒波が戻ってきたり。すぐそこに迫る春を感じる季節。今年のバレンタインデーは日曜日。学生にとっては、好きな人に会う口実を捻り出さなくてはいけないのだから、最悪な条件かもしれない。とはいえ、最近は厳密に14日にこだわる人も少ないだろうし、もはや本命より友チョコや自分へのご褒美を買うイベントになりつつあるのかもしれない。


「同僚から貰った義理チョコ」


彼はそう言って、高級チョコの写真を送ってきた。深夜にこれは飯テロじゃん。


彼の恋愛相談の合間にバレンタインデーの話になった。私にせっつかれたのがきっかけで、数日前に思いを伝えたらしい。けれど、相手には別に気になっている人がいるからと撃沈とか。前々からたくさん話を聞いていた限り、一緒に遠出したり、同じ趣味を持っているから長電話したり、なかなか良い兆候があったのにも関わらず。


「チョコレートちょうだい!」


と催促してみたものの、「無理、笑」とはぐらかされたとも。


なんだか男たらしな女だなあ・・・と同性の私は思う。それでも彼はその女に執着している。一方で、もう10代や20代前半じゃないのだから、いつまでも押して押しまくって待つことも無謀ってことも分かっているらしい。


「逆チョコとか考えてないの?」

「あー、まったく。その手があったか。」

「まあ、押してさらに押すのがどういう結果になるかは微妙だけど・・・」

「今からでもやるか!」


私はスマホを3秒間じっとみつめると、枕元に投げた。あほみたいだ。ふられて連絡がとぎれとぎれになってるんだったら、フェードアウトさせたほうが私にとっては得なのに。相手に彼氏がいれば可能性は低いけど、まだその気になっている人とは付き合っていないんだから、「やっぱりあなたが」と二人が付き合ってしまう可能性を高めてしまう謎のアドバイスをしてしまった・・・。


「これだけアドバイスしてるんだから、見返りは?」

「それこそチョコはいかが?」

「えー笑 というか私のご機嫌とりより、まずはそっちでしょ?」


チョコは好きだ。チョコに罪はない。だけどそんなチョコ渡されたら、駅のゴミ箱にでも捨ててしまうかもしれないわ。


それでも私はあなたが好き。最悪なバレンタインだな。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ワーストバレンタインデー みなづきあまね @soranomame

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ