9月20日
『秋が来て、少し高くなった空に、君はまた手を伸ばす。
たまに訪れる赤トンボが、君の白い指にとまろうとする。
縁側から見える田んぼたちは、黄金色に輝き、その実りを知らせる。
夕方になって鳴き始めた虫たちは、月のない今夜を、秋の長い夜を彩る。
君はそんな空を見上げて、少し嫌そうな、切なそうな顔をする。
季節が変わっても君を見つめ続ける僕に、まだあきは来ないらしい』
いつもの手帳にこう書き付けて、僕は最後の一文に思わず笑ってしまった。
これでは寒い。寒すぎる。
秋になった。空はまた一層青くなって高くなって、雲はまた白くなって。
秋を象徴する赤トンボが、家の中に入ってきた。
近所に広がる田んぼには、今年もたくさんのお米が実ったらしい。
そしてまたいつもどおりに鳴き始める虫たちの鳴き声は、月のない夜空に響き渡った。
月がない夜は、大嫌いだ。
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