8月12日

『夏祭りの灯りの下で、浴衣姿の君を見つけた。君の姿に見とれていると、ふいに視線があった。

 照れくさそうな君の顔が少し赤かったのは提灯のせいだろうか。りんご飴を手に持って、着慣れぬ浴衣でゆっくりと歩く君はとても可愛かった。

 祭会場から少し離れた小川で足を冷やしながら、祭の灯りを眺めた。そのうちに、空には大輪の花が咲き、僕らの顔を照らした。

「月が見えないじゃない」

君は不満そうな声でそう呟いた』




 久しぶりに来た夏祭り。視線を感じて振り向くとそこに貴方がいて。なぜか頬が火照ったけれど、提灯の灯りで誤魔化せたかしら。

 綿飴が食べたかったけれど、貴方がいたからりんご飴にした。子供っぽいって言われたくなかったから。浴衣なんて着て来たせいで、歩きにくくて仕方なかった。

 歩き疲れて、近くの小川に行って二人で足を水にさらした。そういえばこの祭りは花火が上がったはずだと思いながら空を眺めた。

 そのうちに花火が上がって、せっかく満月だった月が霞んでしまった。

「月が見えないじゃない」

  少し口を尖らせて呟いてしまった。聞こえてないといいけど。

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