第3話 まぢ!?

トラックは立川に入り、目的地の西立川はもうすぐだった。

なんとか先方の指定時間ギリギリに着く目処が立ち、天音はほっと胸を撫で下ろした。


少し気持ちに余裕が出た天音は、助手席のチャイルドシートに目を向ける、

そこには天使がいた。


「あーんもう!なつめたんまぢ天使!癒される!」


すやすやと眠る我が子のほっぺたをつんつん、つんつんつんである。

運転中のながらスマホならぬ、ながらムスコ、だめ、絶対。


配達が終わったら、赤ちゃん用品のニシマツテンポで何か買おう、などと考えながら視線を前に戻すと、道の真ん中に男がいた。


「まぢ!?」


****************************


近づいてくるトラックを見ていたら、男は気づいたら飛び出していた。


(飛び出せば楽になれる!なんて素晴らしいアイディアだ!天才じゃないか!)


まるで天啓のように、男の頭には飛び出すことがとても素晴らしい事のように思えたのだ。


(これで楽になれる…なぜもっと早く実行しなかったんだろう?)


どこか他人事のように近づいてくるトラックを見ながら、近づくヘッドライトが男を包み込むのを、神からの祝福で包み混まれるように感じていた。


(ああ…神様!願わくば次の人生はもっと…!)


時が止まった。


(え?)


『神に願うのはおぬしか。』


全ての物が静止した世界。

音も聞こえない、瞼を下ろす事もできない、喋る事もできない、ただ思考だけが進む世界。


そんな中、男の脳内に神が語りかけてきた。

姿は見えないが神を感じた、声が女性のように感じるので女神だろうか?


『転生を願うか?』


(う、生まれ変われるのでしょうか!?)


『然り、然り。』


(お願いします!お願いします!)


『しかしヌシが新たな生を受けるのは、この地球ではない』


(かまいません!こんなクソみたいな世界!こちらから願い下げです!)


クソみたいな世界にしたのは自業自得なのに、ひどい言い様である。


『ヌシが次に生を受けるのは…』


ワクワクして神の次の言葉を待っていると、不意に時が動き出した。


「え?」


男は急な展開にあっけに取られているうちに、トラックに跳ねられていた。


体を衝撃が襲い、地面に倒れたと思った瞬間、タイヤと地面の摩擦で体を削り取られ、身体中の中身を全て地面にぶちまけて、頭に何かが乗るのを感じた時、

男は…死んだ。


****************************


天音は慌ててハンドルを左に切って避けようとしたが、時すでに遅し。

ドン!という衝撃音があったかと思うと、車体が何かを乗り上げる感覚があった。

その瞬間フロントガラスが光に包まれる。


(ヤバっ)


最後に見えたのは電柱だった。


我が子を守ろうとして体を動かすが、シートベルトが邪魔で体が動かない。

懸命に左手で子供が飛び出さないように支えながら、衝撃に備えて目を閉じた。


「…あれ?」


だが、いつまで経っても衝撃はやってこなかった。

恐る恐る目を開き、あたりを見回すとそこは…



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