終章後編:メイド&シーク

1つの悪へ

99話 立ち入り禁止


 光橋紅は紡に渡されたメモに導かれるまま、学園から歩いて10分ほどの郊外に来ていた。周囲には大型の商業施設が建ち、休日のこともあって繁盛していた。

 

 だが、メモに書かれた住所の場所に近づくにつれ、街は閑散としていく。訪れた商店街はシャッターが目立ち、人の活気を感じられなかった。


「このあたりね」


 商店街の角を右に曲がり、住宅街を通り抜ける。もう少しで目的地だ。


 だが、紅は一度足を止めた。見知った顔の生徒を目にしたからだ。


「どうしてここに……」


 そんな疑問を浮かべていると、頴川学園の制服を着た生徒は紅の視線に気付いたらしく、目が合う。


「光橋先生ではないですか。休日にこんな場所へ、何しにいらしたんですか?」


「実は、ヨゾラって言う——」


 その単語を口にした瞬間、生徒の顔色が変わった。怒っているわけではないが、無表情ともとれる微妙な顔。いつもニコニコしている天使のような笑顔は、見る影も無かったことは確かだ。


「光橋先生、貴方は好奇心の余り、来てはならない場所へ深く立ち入ってしまったようですね」


 生徒がゆったりとした足取りで近づいてくる。


「好奇心は猫を殺すと言いますけれど……光橋先生は猫さんには見えませんね」

 

 何かされるという確信があったのにも関わらず、紅は一歩も動けずにいた。


 やがて、瞼を1一度閉じた瞬間には、彼女の匂いが身体を包み込むまでの距離に迫っていた。


「お話、しましょうか」


 そう言って紅に向けた笑顔は、まるで悪魔だと思った。




<あとがき>


  この投稿が実質100話目になります。(すごーい投稿空白期間できちゃったけど)ここまで読んでいただきありがとうございます。相変わらず投稿頻度が遅いままだと思いますが、終わりまであとちょっとなんで、最後までお付き合いいただけると嬉しいです。

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